特殊編という名前が示す通り、connectionの歴史の中で生まれた
変わり種なクルマたちを御紹介します。

細かな需要に対応したものから、誰が得するのこれ?というゲテモノまで・・・

大型超ショート(KL-R3000G改 2000)


connection社内において、お客様の要望は基本的に「絶対」です。
そんな方針なものだから、これまでもお客様のいろんな「絶対」な仕様に付き合ってきました。
そして顧客も、言えば無理を聞いてくれるメーカーだと思い込むようになる。
そう思い込んでいる顧客は、大抵決まり切った「お得意様」なのです。
「お得意先」の言うことだからやりたくなくても断り切れない。
だから、メーカーの図面屋の仕事はなかなか減らないのです。



でも、それが楽しかったりする。


ユーザーの車両担当(以下お客)「ユー、ちょっといい話があるから来てくれよヽ(´∀`ヽ)」

メーカーの営業担当(以下営業)「いっ、嫌な予感がする(゚д゚;)」

朝一番にお客からの電話。
面倒な電話は、大抵こんな口調でかかってきます。
大事なお客さんからの要請ですから、行かないわけにはまいりません。


営業「まいどですー(´∀`*)」

お客「おー、待ってた待ってた。今回はこれ。ズバリ『短いクルマを作ってくれ』だ」

営業「なんですか、なんか毎回恒例の…みたいな。今回はなんです?(;゚Д゚)」

お客「なんだその言い方、お前のとこならやってくれると信じて頼んでんのに(゚Д゚ )」

営業「まぁまぁ…。でも、今回は珍しく簡単なご要望じゃないですか。

   短い車両でしたら中型でご用意できますよ。カタログはこちらに…( ´∀`)」

お客「それがだなぁ。大型の幅じゃないと困るんだよ(;´Д`)

   そんな簡単なことだったら、わざわざ呼ばないよ。」

営業「ですよね。でも、なんでそんなのが必要になったんですか?」

お客「まぁ聞いてくれ。理由は2つ。乗り心地と流動性だ」

お客「この車両が必要なのは、我が親会社の電鉄上調布駅から、近隣屈指の高級住宅地とを結ぶ路線だ」

営業「田田調布ですね。あの、『セコく、してますか』で有名な」

お客「そうだ。その路線なんだが、住宅地近辺がえらい道が狭くてね。一方通行だから幅は問題ないんだけど、

   狭い交差点が多くて曲がりきれない訳。そんでもって、住宅街を抜けると駅までは幹線のバス路線を

   走らなきゃならねー。あそこは乗降が多いから、大型ならではの高い流動性が必要な訳」

営業「それなら、大型ショート(幅2.5M、全長9.5M)っていう手もありますね(´ー`*)」

お客「それじゃ生ぬるい。長さは可能な限り詰めてくれないと、あのカーブは曲がれん。おまえにゃわからんだろうが…」

お客「それと、この住宅地に住んでる人ももうお年寄りばっかだ。ノンステップで頼むよ(´∀`)9」

営業「は、はぁ。こんなクルマ今まで作ったことないですよ(;´Д`)」

営業「でも、わざわざこの為だけに車両を発注できる御社もすごいですね…」

お客「おれだってこんなめんどいことやりたかないさ。

   でも、あの住宅地はうちのグループ会社。今回の駅までのアクセスを、全体のモデルケースにしたいらしいのよ。

   だから、うまくすればグループの他の住宅地でも同じクルマを使えるかもしれない。

   そうすればイメージアップにもなるし。

   あとは、今仕方なく中型で運行してる路線にも使って、サービスアップをしたい腹みたいなのよ。

   面倒だけど、おれも上には逆らえねー(;´Д`)」



そんなわけで、こんな車両ができあがりました。

ホイールベース間のモジュールを一つ撤去して、1.5M全長を短縮。
さらにフロントオーバーハングを0.3M短縮した、全長8.7Mの「大型超ショート」です。
車体が短くなった分軽くなったため、タイヤサイズを中型用サイズに交換して、車内へのタイヤハウスの出っ張りを縮小しています。
燃料タンク給油口の設置場所には大変苦労した結果、左前輪上からホイールベース間の燃料タンクに流し込むという荒業になりました。

また、タイヤサイズの縮小によって左前輪上の座席の着席性が大幅に上がったことは大きな収穫となり、
2003年のボディーのモデルチェンジの際、車体の軽量化と前輪のタイヤサイズ縮小がほとんどの車種で
行われることとなりました。

案の定ほとんど売れることなく姿を消したこの車種ですが、この経験から得たものは大きく、
やって無駄なことはないと思い知らされたのでした。


最終更新:2010年09月05日 15:14