刑法


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※各論分野は近年毎年のように改正有り。
※1冊本とは総論と各論が両方載っている本のこと。


《行為無価値》

  • 裁判所職員総合研修所『刑法総論講義案』司法協会(2008/09補正・3訂補訂版)……「書研」(こちらは旧称)とか「総研」と呼ばれる。裁判所書記官の研修用テキストであり、裁判官が執筆している。したがって判例・(伝統的)通説ベースだが、薄い。某予備校の指定教科書でもあり、司法試験受験生の間でも非常に人気がある。理論刑法学を割り切るのであれば第一の選択肢として本書が挙げられよう。
  • 井田良『講義刑法学・総論』有斐閣(2011/07・補訂)……もともと井田説は行為無価値の中でも理論的に高度で独自色が強いものである(基礎理論では目的的行為論、消極的構成要件要素の理論など、解釈論では緊急行為での有責性考慮や緊急避難の類型論など。試験対策上は前者を長々記述するような問題はあまり考えられないが、後者が修得と論述に一手間いるだろう)。しかし、本書ではそうしたアクは前面に出ておらず、良くも悪くも学生向けの概説書に徹している。また論理も非常に明快で、大谷説のように社会倫理規範や社会的相当性というような曖昧で道徳的な語を使うことはない。そして、論点・学説も豊富に取り上げており、その解釈は非常に秀逸である。なお、自説を詳細に展開した現代刑事法への連載を単行本化したものとして『刑法総論の理論構造』成文堂(2005/06)、入門編として「ゼロからスタート☆刑法“超”入門講義」(法教331-、331-342号は刑法総論、343-は刑法各論)。
  • 井田良『刑法各論(新・論点講義シリーズ)』弘文堂(2007/05)……本書の特徴は、ふつうの体系書ではごく簡単にしか言及されない、それぞれの犯罪類型に関する、基礎的な事項についてかなり詳しく説明しているところであろう。(はしがき一部抜粋)ということからもわかるように、図表も豊富で初学者でも読むことができ、中級者になるための橋渡しになるような本である。もっとも、司法試験にも十分対応できる水準は確保されているため、総論・各論とも最近の行為無価値論による解釈で一貫性をもたせたい人には有用であろう。刑法総論講義案、とくに講義刑法学との相性はかなり良い。
  • 高橋則夫『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2010/04,☆2011/06)……本格派の体系書。客観的帰属論をはじめとする最先端の学説や問題意識が随所に織り交ぜられており、それらが著者の深い法哲学の素養とあいまって、行為無価値の最先端を示すものに仕上がっている。行為規範と制裁規範という独自の体系をとるが、おおむね結論は判例・通説に近い。判決文の紹介に多く紙面を割いているほか、具体的事案の処理に際しての思考過程も適宜示されており、受験生にも使いやすい本になっている。いわゆる総論の総論の部分だけでも50頁超にわたるなど、近年では珍しい真剣勝負の理論書である。
  • 大谷實『刑法講義総論』『同・各論』成文堂(2009/04・新版第3版)……改訂(改説)頻繁。受験生に人気。学説の一貫性に疑問の声も。判例索引に誤記多し。かつてほどの人気はないが、行為無価値の中ではまだまだシェアNo.1だろう。いわゆる予備校説は団藤=大塚説に共犯だけ大谷説をとりいれたもの。なお、受験生からは「行為無価値は社会的相当性というマジックワードで片付けがち」と批判されるが、それは大谷説だけであり、大谷説が行為無価値の主流であるという訳ではない。大谷自身も刑法の機能をそのようなものであるべきと意識して、あえてそうした言葉を使っており、こうした発想に合わない学生は用いるべきではない。
  • 伊東研祐『刑法講義・総論』『同・各論』日本評論社(2010/12,2011/03)、『刑法総論』新世社(2008/02)……著者曰く3冊とも未修者向け。著者の講義を聴講しない独習者にも理解できるよう著者の特異な独自説はあえて載せていない(もちろん自説主張がないわけではい。著者の法哲学見地(『講義総論』第1章)から体系がまとめられており、それに沿った主張もある)。また、学説の引用元を表示していない。近時出版された基本書の中では、判例の紹介・引用がやや少なめになっている。この点は賛否がわかれるところだろう。藤木弟子だが団藤=大塚ラインとは一線を画した洗練された行為無価値論をとる。各論も総論と同じく特異な独自説は少なめだが、新たな視点からの記述も多く参考になる。判例に批判的な箇所も多いが実用上支障はない。予備校ベースの行為無価値論とも比較的親和性が高いと思われるので、これから人気となるかもしれない。著者の文体は難解だが読み応えがある。総論が2冊あるが、記述の重複している箇所もあるので出版時期が新しく分厚い日評講義のほうがおすすめ。

〔その他〕

  • 団藤重光『刑法綱要総論』『同・各論』創文社(1990/06・第3版,1990/06・第3版)……刑法実務で通説といえば、おおむね団藤説または大塚説を指す。重鎮の代表作。定型、形式を重視するシンプルですっきりした体系。法律論としての美しさには定評があるものの、共謀共同正犯を肯定したことで若干の綻びもみられる。半世紀前の初版の時点で体系そのものは完成しており、それがそのまま現在の刑法解釈学の基礎をなしているが、いかんせん古い。因果関係、不作為犯、実行行為性、共犯論など多くの分野において、近時さまざまに実質論を展開する判例・多数説との距離が開いており、団藤説は発展的に解消されつつある。改訂の可能性は低い。三島由紀夫ファンなら必読。
  • 大塚仁『刑法概説・総論』『同・各論』有斐閣(2008/10・第4版,2005/12・第3版増補版)……刑法実務で通説といえば、おおむね団藤説または大塚説を指す。人格的行為論をはじめとして団藤説の多くを継承しているため、やや古い。とくに総論は最新の議論に対応し切れていない。共謀共同正犯否定説。論理の一貫性には定評がある。1冊本『刑法入門』(2003/09・第4版)は検察事務官の研修用テキストで口語体の良書。
  • 福田平『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(☆2011/10・第5版,2002/05・第3版増補)……著者は団藤門下にして、戦後昭和期の代表的な目的的行為論者であり、井田も私淑している。厳格責任説、共謀共同正犯否定説など。論理の一貫性においては師である団藤を上回るとも。曖昧さや倫理性を排し、基礎理論に根ざした福田説は現在でも説得力を持つ。団藤・大塚らの伝統的学説を立体的に理解するにも有用である。なお、各論は非常に簡潔な構成となっている。
  • 川端博『刑法総論講義』『刑法各論講義』成文堂(2006/02・第2版,2007/03)……二元的厳格責任説(正当化事情の錯誤において違法性阻却の余地を認める立場)。中・上級者向けの論点本『集中講義刑法総論・各論』成文堂(1997/06・第2版,1999/07)、1冊本『刑法』放送大学(2005/02)、『刑法総論(新・論点講義シリーズ)』弘文堂(2008/09)。その他著作多数。『刑法総論講義』は最新判例がほとんど掲載されておらず、最新の論点にもあまり触れられていないが、基礎的な理論や論点については詳細かつ丁寧な説明がなされている。
  • 藤木英雄『刑法講義・総論』『同・各論』弘文堂(1975/11,1976/12、OD版2003/10)……団藤門下の夭折の天才。可罰的違法性論、新々過失論、誤想防衛の違法性阻却、実質的正犯概念など、現在の学説にも示唆を与える啓発的内容が特徴だが、その理論体系に師匠ほどの緻密さはないと言われている。入門書として、板倉宏との共著『刑法案内1・2』勁草書房(2011/01)が最近復刊されたが、既に克服された学説がそのまま掲載されているだけなので現時点で読むには物足りない。時機に後れた復刊と評さざるを得ない。
  • 斎藤信治『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(2008/05・第6版,2009/03・第3版)……学説紹介が詳細。巻末にユニークな設例つき。総論では「社会心理的衝撃性」という特殊な用語を用いて考える。
  • 板倉宏『刑法総論』『刑法各論』勁草書房(2007/04・補訂版,2004/06)……判例を重視した学説。1冊本『刑法』有斐閣プリマ(2008/02・第5版)もある。
  • 小林充『刑法』立花書房(2007/04・第3版)……元刑事裁判官による1冊本。自説僅少。判例の考え方を簡潔に説明。
  • 中森喜彦『刑法各論』有斐閣(2011/05・第3版)……各論のみだが内容には定評がある。長らく2版から改訂されていなかったが昨年ようやく改訂。横書きになり、よりコンパクトになったが内容は最新の状況をフォローしているとは言いがたい。
  • 佐久間修『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2009/08,2006/09)……大塚弟子。いわゆる団藤=大塚ラインの系統。改訂により文章の読みにくさはかなり改善されたが、結果無価値からの批判に対する目新しい再反論はあまりみられない。
  • 大谷實『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2006/04・第3版,2007/04・第3版)……通称「薄いほう」。上記の本よりも大谷説を理解するのに向いているとの声あり。
  • 木村龜二著・阿部純二増補『刑法総論』有斐閣(1978/04・増補版)……名著。目的的行為論の古典。古いが阿部純二『刑法総論』日本評論社(1997/11)でフォローすれば使えなくはない。

《結果無価値》

  • ☆山口厚『刑法』有斐閣(2011/09・第2版)……平野門下。1冊本。通称「青本」。法科大学院未修者、法学部初学者を念頭に、判例および全ての学説の前提となっている通説の解説を主眼とした教科書である。刑法の第一人者によるこのような教科書ということで、初版の頃から本書をメインとして利用する法科大学院生は多い。第2版のはしがきでは、山口教授自身が刑事系主任調査委員とし関わった「法科大学院コアカリキュラム」案件を参照しながら本書を読むように推奨しており、以後もロー生向けという傾向に変わりはないだろう。特に結果無価値を採るロー生の事実上の国定教科書に近い存在ともいえる。自説は控えめで、本書ではどれが山口説かは明かされないが、結果無価値で一貫しており、また広く浅い掘り下げのために山口説を理解していないと正確な文意は理解できないという声もある。入門書として『刑法入門』岩波新書(2008/06)
  • 西田典之『刑法総論』『刑法各論』弘文堂(2010/03・第2版,2012/03・第6版)……平野門下。総論の体系は平野説に比較的忠実。各論は分かりやすさとバランスの良さに定評がある。とりわけ各論は、判例解説や論文の中で代表的見解として引用される回数が非常に多く、プロから厚く信頼されているという証拠であるから、学生にとっても間違いのない一冊である。ただし、総論で西田を使わない場合、食い合わせに注意すべきこと(とくに身分犯の共犯等)は当然である。なお、総論第2版では、刑罰論に関する記述が新たに追加された。結論の妥当性や実務で使える議論であることを強く志向しているため、使い勝手がよく、受験生にとって最もメジャーな体系書であろう。
  • 山口厚『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(2007/04・第2版,2010/03・第2版)……現在の東大を代表する結果無価値論。総論は、薄いなかに正犯性等の従来の教科書レベルでカバーされなかった議論を載せた。それ故従来の議論を知らずに1冊目として勉強するのは困難。また第2版で改説部分多数。各論は、厚くなってしまっているが総論より読みやすく判例を元にした分析も丁寧で、山口説を採らなくても辞書的に利用する価値あり。
  • 佐伯仁志「論点講座・刑法総論の考え方・楽しみ方(1)~(19)」佐伯連載(法学教室連載・283号~306号)……平野門下。総論の殆どの論点を解説。故意過失を責任要素として構成要件に含む3分説をとり、西田・山口よりなじみやすい体系。因果関係論、不作為犯論、正当防衛論、被害者の同意論は著者の論文のダイジェスト版ともいうべき内容となっている。とくに不作為犯論と正当防衛論は試験対策に有用。※法教355号(2010年4月号)から各論の連載中。
  • 前田雅英『刑法総論講義』『刑法各論講義』東京大学出版会(☆2011/03・第5版,2012/01・第5版)……平野門下。実質的犯罪論という独自の立場から書かれている。他の学説と比較して考えると混乱するおそれ大のため、前田説のつまみ食いは危険。旧試験委員時代は受験生の間で覇権を築いていたが、近時急速にシェアを落としている。

〔その他〕

  • 平野龍一『刑法総論I・II』有斐閣(1975/06,1984/01、OD版2004/08)……法益侵害説中興の祖。平野体系はいわゆる結果無価値論の中でもスマートで理解しやすく、西田や山口にとっつきにくさを感じる人には現在でもお勧めできる。『刑法概説』東京大学出版会(1977/03)は簡にして要を得た、今もなお参照に値する1冊本。かなり高度な議論を前提とした記述になっているので、ある程度勉強してから読み返すとなお有意義。
  • 齋野彦弥『基本講義刑法総論』新世社(2007/11)……東大出身者だが大学院がケンブリッジなので団藤・平野門下ではない。学部時代の刑法教授は内藤。実行行為概念を否定する、という点では山口の説に近く結果無価値と親和性が高い。本人は「行為無価値と結果無価値の対立」として問題を扱うことを党派刑法学であるとして拒否する。解釈論の結論を導くにあたって、最初に刷り込まれた立場から個別解釈論を決定するのは自分で考えることを放棄するもの、だとする。このような立場ではあるが、決して独自説の主張を強調するわけではなく、初学者の理解を目指すため判例・通説を厚く扱っている。
  • 堀内捷三『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(2004/04・第2版,2003/11)……平野門下。総論・各論あり。評価待ち。
  • 林幹人『刑法総論』『刑法各論』東京大学出版会(2008/09・第2版,2007/10・第2版)……平野門下。著者は財産犯の研究から出発し、財産犯の第一人者といえる。ということで各論の教科書は使い勝手がよいようにも思えるのだが、非常に簡潔な記述となっているため、その意味内容を正確に把握するためには著者の論文を読む必要がある。そのため、そこまで勉強している人にとっては便宜ではあるものの、教科書だけ読んで林説を理解しようというのは無理がある。総論は評価待ち。
  • 内藤謙『刑法講義 総論 上・中・下1・下2』有斐閣(1983/03~2002/10)……団藤弟子だが徹底した結果無価値論者。山口説が過激すぎるという人におすすめ。1冊本として『刑法原論』岩波書店(1997/10)
  • 町野朔『刑法総論講義案1』信山社(1995/10・第2版)……平野門下。未完。入門書『プレップ刑法』弘文堂(2004/04・第3版)
  • 木村光江『刑法』東京大学出版会(2010/03・第3版)……前田門下。1冊本。前田好き向け。増刷ごとに一部改訂されている。
  • 山中敬一『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2008/03・第2版,2009/03・第2版)……結果無価値+危険無価値によって違法性を判断(結果無価値論に近いが、一元的結果無価値論ではない)。客観的帰属論を全面的に展開。共犯はいわゆる関西共犯論。大作。ロースクール向け教科書として『ロースクール講義・刑法総論』成文堂(2005/04)、『刑法概説I・II』成文堂(2008/10)。
  • 中山研一『口述刑法総論』『同・各論』成文堂(2007/07・新訂補訂2版,2006/04・補訂2版)……関西結果無価値。『刑法総論』成文堂(1982/10)は名著。
  • 浅田和茂『刑法総論』成文堂(2007/03・補正版)……関西結果無価値。学説は少数説が多いが、内容は原理原則を重視する理論派で、背景知識もしっかり書かれている。本格的体系書。
  • 松宮孝明『刑法総論講義』『刑法各論講義』成文堂(2009/03・第4版,2008/03・第2版)……読みやすいが、理論的にかなり突っ込んでいるため、内容は難解。ドイツのヤコブスの説に基づいた見解が多い。著者の研究成果が現れており、そもそもドイツではどのように理解されていたかなどを記述するが、そこは言わずもがな試験に必要ではない。基本書でドイツの刑法学の状況を確認したいならこの本をおいて他の選択はない。松宮説を理解するには、『レヴィジオン刑法I-III』成文堂(1997/11-2009/06)の松宮執筆(発言)部分を用いるのが吉。ただし新司のレベルをはるかに超えていることに注意。
  • 大越義久『刑法総論』『刑法各論』有斐閣S(2007/03・第4版,2007/03・第3版)……結果無価値を端的に解説。薄すぎるとの評。Sシリーズ。
  • 曽根威彦『刑法総論』『刑法各論』弘文堂(2008/04・第4版,2008/09・第4版)……独自説をあっさりとした記述で流すことがあるので注意。演習書として『刑法の重要問題 総論、各論』成文堂(2005/03,2006/03・いずれも第2版)、松原芳博との共著『重要課題刑法総論、同各論』成文堂(2008/03)。
  • 大塚裕史『刑法総論の思考方法』『刑法各論の思考方法』(2008/11・新版補訂版,2010/12・第3版)……著者は学者だが予備校での指導経験あり。大谷・前田がメジャーな受験生説だった時代(平成10年台前半頃)に、それらに親和的な内容の副読本として読まれていた。現在では大谷・前田の受験生シェアは低下しているものの、刑法が苦手な場合になお有用。

《共著》

  • 伊藤渉・小林憲太郎・鎮目征樹・成瀬幸典・安田拓人、齊藤彰子・島田聡一郎『アクチュアル刑法総論』『同・各論』弘文堂(2005/04,2007/04)……主に山口・西田弟子と中森弟子との若手有望学者による共著。刑法学理論の最先端を著述している。総論は行為無価値にたつ成瀬・安田により、最近の行為無価値論的に仕上がっているものの、他の結果無価値の筆者との関係でチグハグ感が残る。基本概念・基本判例より新しい判例・学説の展開に重点が置かれている。リーガルクエストとかぶる部分はコピペになっている。齊藤と島田は各論のみ執筆。使い勝手の良いところだけつまみ食いで使うのがベスト(安田の責任論など)。内容はかなり深いところにまで突っ込んでおり現代の刑法学の到達点と言っても過言ではない。リークエよりやや薄めで脚注が付いているのでレポートなどにも活用しやすい。
  • 今井猛嘉・小林憲太郎・島田聡一郎・橋爪隆『リーガルクエスト刑法総論、同各論』有斐閣(2009/01,2007/04)……西田・山口門下による共著。したがって、立場のばらつきは少ない。最新の議論までコンパクトにまとまっている。ただし,今井執筆部分は微妙。総論で小林ががんばりすぎているところも。共犯論や罪数論(島田)は秀逸で分かりやすい。各論は西田・山口をコンパクトに整理した感じになっているので、こちらも案外使い勝手がいい。
  • 町野=中森『刑法1・2』有斐閣アルマ(2003/04・第2版)……内容的に中途半端で共著の悪い面がでてしまっている。
  • 高橋則夫他『法科大学院テキスト刑法総論』『同・刑法各論』日本評論社(2007/10・第2版,2008/04)……行為無価値論者によるテキスト。総論はちぐはぐ感が否めないが、各論はよくまとまっており、論点ごとの判例・学説カタログとして使い勝手が良い。
  • 大谷實編『法学講義刑法1総論』悠々社(2007/04)……行為無価値論者によるテキスト。従来の教科書から一歩前へ進めた議論を紹介しており、ちょうどリークエに対応する1冊。各論は未刊。
  • 松宮孝明編『ハイブリッド刑法 総論、各論』法律文化社(2009/01)……関西刑法読書会のメンバーによるテキスト。といっても関西結果無価値論の主張は控えめで、最新の論点にも言及している。
  • 佐久間修・橋本正博・上嶌一高『刑法基本講義-総論・各論』有斐閣(2009/04)……1冊本。「いわゆる」通説・判例ベースの体系だが、佐久間・橋本(行為無価値論者)執筆部分と上嶌(結果無価値論者)執筆部分とにズレがある。
  • 葛原力三・塩見淳・橋田久・安田拓人『テキストブック刑法総論』有斐閣(2009/07)……関西系学者による比較的初学者向けのテキスト。京大刑法総論とも言うべき執筆陣(葛原のみ山中門下、葛原以外は中森門下)。葛原(結果無価値)が因果関係・主観的構成要件・共犯、塩見(行為無価値)が客観的構成要件・未遂犯・罪数と立場が現れる部分を異なる論者が執筆しているためやや一貫性に欠けるが、共著故の欠点である。学説検討がかなり詳しく最先端の議論にまでフォローしているが、学説相互の批判に欠ける。この点はリーガルクエストやアクチュアルに軍配が上がる。
  • 生田勝義・上田寛・名和鐵郎・内田博文『刑法各論講義』有斐閣(2010年5月)……学部向けの教科書。総論はない。

〔コンメンタール〕

  • 西田典之・山口厚・佐伯仁志『注釈刑法 第1-3巻』有斐閣(2010年12月-)……旧版に比べ、大幅にスリム化された。理由として、(1)読者対象に法科大学院生や学部学生をも考慮に入れたこと、(2)原則として戦後の重要な判例・裁判例のみとりあげる方針としたこと、(3)判例・裁判例の引用を極力控えたこと(はしがき)、があげられている。東大系結果無価値論の立場からの記述が多く、旧版に比べて量的にも内容的にも網羅性が損なわれている。
  • 前田雅英・松本時夫・池田修・渡邉一弘・大谷直人・河村博編『条解 刑法』弘文堂(2007/12・第2版)……実務家向けのコンパクトな注釈書。執筆者はほぼ全て実務家で占められている。文字が大きく余白も多いため他の条解シリーズに比べ情報量がやや少ない。
  • 阿部純二編『基本法コンメンタール 刑法』日本評論社(2007/05・第3版)……情報量は意外に多い。こちらは研究者中心の執筆となっているため、理論的な面については条解より詳しい。安い。
  • 伊東研祐・松宮孝明編『学習コンメンタール 刑法』日本評論社(2007/04)……存在意義が良くわからない本。基本法コンメンタールより400円安いが、内容は薄い上に独自説も多くかなり劣る。

〔判例集〕

  • 芝原=西田=山口『刑法判例百選I・II』有斐閣(2008/02,2008/03・第6版)……解説付き判例集の筆頭。百選に掲載されているということが、当該判例の重要度を示すメルクマールになるので、まずは百選から頭に入れていくのが無難と言えば無難。ただし、解説は玉石混淆(判例の解説でなく、論点解説をしているようなものも散見される)。
  • 西田=山口=佐伯『判例刑法総論』『同・各論』有斐閣(2009/03・第5版)……こちらは解説なし、判例のみ。下級審裁判例まで網羅しており、総論・各論を合わせると収録数は1000件を超える。西田刑法を使用するならとりわけ便利。西田刑法を利用しない場合でも、解説は一切不要だと考える学生はこちらを選択するべきだろう。山口青本第2版でも本書の該当番号が引用されるようになった。刑事事実認定重要判決50選と併せれば、ほぼ基本書として使える。
  • 前田雅英『最新重要判例250 刑法』弘文堂(2009/03・第7版)……274判例を収録。二色刷り。コンパクトに多くの判例を解説している。但し、自説に沿う形で判例を取り上げ、解釈する傾向があるので、前田先生の基本書を使用している人以外が使用するのはやや危険。
  • 大谷実編『判例講義刑法1総論、2各論』悠々社(2003/12)……大谷門下による判例集。
  • 山口厚『新判例から見た刑法』有斐閣(2008/10・第2版)……最近の判例を題材にした解説。山口説に立たなくても、鋭い問題意識や分析は、判例の重要性や出題可能性と相俟って一読の価値がある。
  • 山口厚『基本判例に学ぶ刑法総論』『同各論』成文堂(2010/06,2011/10)……判例を素材に重要論点を平易に解説。書下ろし。各論は評価待ち。
  • 成瀬幸典・安田拓人編『判例プラクティス刑法I』、成瀬 幸典・安田 拓人・島田聡一郎編『同Ⅱ』信山社(2010/01,2011秋予定)……Ⅰは総論。Ⅱは各論。Ⅰの収録判例は444件。1ページに事案・争点・判旨・解説と盛り込み過ぎの感が。若手から中堅の学者が、特定の分野の複数の判例の解説を執筆している。
  • 井田良・城下裕二編『刑法総論判例インデックス』商事法務(2011/09)……

〔その他読み物〕

  • 山口厚=佐伯仁志=井田良『理論刑法学の最前線1・2』岩波書店(2001/09・2006/05)……現在の刑法学をリードする三人の論文集。決まったテーマごとに一人が論文を執筆し、残りの二人がその論文を批評するという形式。佐伯執筆部分は連載と合わせると面白い。

演習書


  • 井田良=田口守一=植村立郎=河村博『事例研究刑事法1』(2010/09)……刑法の最重要論点について、現役の裁判官・検察官らを中心とした豪華執筆陣が明快かつ縦横無尽に解説。設問の数は総論8問・各論8問と少なめだが、各設問の末尾の関連問題まで潰せばかなり広範囲の論点をカバーすることができる。主要な判例・学説の対立のみならず、先例的価値の大きな判例についてはそれが掲げる具体的な考慮要素にも常に言及しており、法律論は勿論、あてはめを鍛えるのにも最適である(実務家があてはめに関して詳細な解説を行っている点において、他の演習書と一線を画する。)。
  • 井田良=佐伯仁志=橋爪隆=安田拓人『刑法事例演習教材』(2009/12)……見ての通りの第一線執筆陣による新司を意識した長文事例問題集。独習することができる程度の解説がある(こちらの解説はマニアックではない)うえに、巻末には事項索引と判例索引までついている。設例は合計で40個。そのひとつひとつに遊び心がこめられており、学生を飽きさせない。なお、あてはめの問題は基本的にスルーしているので、別途補完する必要がある。また、解説のボリュームは小さく、その理論水準もかなり抑えられている(相応に高度な論点が問題に含まれているのにほとんど言及がなかったり多少匂わせるにとどまったりする)ので、要注意である。
  • 佐久間修=高橋則夫=松澤伸=安田拓人『Law Practice 刑法』(2009/03)……総論・各論の全範囲から基本的な問題を60問ほど。問題はいずれも事例問題ではあるが、事案の分析・処理が求められるようなものではなく、実質的に1行問題に近いものも散見される。はしがきにある通り、学部~ロースクール1年生向け。司法試験対策用の演習書ではない。
  • ☆島田聡一郎=小林憲太郎『事例から刑法を考える』有斐閣(2011/04・第2版)……法教連載を書籍化した事例問題集。問題文は長めだが、司法試験ほどではない。全22問。第2版からは、初版において受験生からの評判が悪かった記述が削除されたほか、レイアウトも調整されかなり読みやすくなっている。答案作成を意識した実戦的なアドバイスも豊富に盛り込まれており、司法試験対策の演習書としての完成度は非常に高い。ただし難易度はやや高めか。
  • 川端博『事例式演習教室 刑法』(2009/09・第2版)……22年ぶりに改訂された短文の問題集。「事例式」とは銘打っているものの、旧司500人時代の本が元になっているため、事例は短い。論点整理には有益。
  • 船山泰範『司法試験論文本試験過去問 刑法』辰巳法律研究所(2004/05・新版補訂版)……旧司法試験の過去問集。船山教授の解説講義を書籍化。問題解説、受験生答案検討、教授監修答案からなる。平成1-15年度の問題30問、昭和の問題13問の全43問。絶版だったがオンデマンドで復刊された。少数説が多い。
  • 山口厚『問題探究 刑法総論・各論』有斐閣(1998/03,1999/12)……山口説による演習本。その後改説している箇所があるので注意。
  • 佐久間修『新演習講義刑法』法学書院(2009/08)……旧試対策問題集だった旧著の改訂版。評価待ち。
  • 中森=塩見淳『ケースブック刑法』有斐閣(2011/04)……京大系。設問は判例分析よりも理論面や学説を問うものが多い。2版では総論・各論まとめて一分冊になった。はしがきには「読者にとっての利便性もましたのではないか」とされているが、重いので逆効果。
  • 大塚仁・佐藤文哉編『新実例刑法(総論)』青林書院(2001/02)……刑法の論点本。すべて実務家(ほとんどは現職の刑事裁判官)が執筆している。イメージ的には、論点ごとの重要判例の調査官解説をほどよく要約したようなもの。したがって、必ずしも斬新な議論が紹介されている訳ではないが、団藤・大塚らの伝統的行為無価値論とは親和性が高いので、これらの本を使用する者であれば、参考書として座右に置くのも良いだろう。
  • ☆池田修・金山薫編『新実例刑法(各論)』青林書院(2011/06)……法科大学院を意識して、総論よりも事例はやや長め。こちらもすべて実務家(ほとんどが現職の刑事裁判官)が執筆している。百選改訂の折には新たに選出されることが予想される、直近の重要な最高裁判例をモデルにした事例が並んでおり、できるかぎり目を通しておきたい。
  • 藤木英雄『刑法演習講座』立花書房(1984)…藤木説を理解するためには必読の演習書。
  • ☆林幹人『判例刑法』東京大学出版会(2011/09)......著者が『判例時報』などに掲載した判例研究を項目別にまとめ直し、各項目に複数の設問を付したもの。設問は「~(判例)は、どういう事実につきどういう判断を示したか」といった事案分析型のものが中心で、著者による判例研究は設問に取り組む際の参考にして欲しいとのこと。いわゆる「ケースブック」と異なり、そのままの判決文等が掲載されていないので、判例研究や設問で指示されている(一項目につき複数の判例が指示される)判例については、別途判例集なり裁判所HPからのダウンロードなりで入手した上で取り組む必要がある。
  • 大塚裕史『ロースクール演習刑法』(2010/09)……司法試験を意識した長文事例問題集。もっとも、本番ほどの長さではない。論点相互が絡み合うような捻りのきいた問題は少なく、論点をただ単に足し合わせただけのような、もっぱらボリュームで勝負してくる問題の方がむしろ多い。問題文の表現にあいまいな部分も散見され、解説を読んで思わぬ論点落とし(?)に驚かされることも。合計で30問あるが、出題は過失犯や正当防衛にかなり偏っており、全範囲を網羅することができないのも弱点。