わ行


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ワールド・ハッピー&ピース・カンパニー

  • 登場作品:VNV,特,流神A,極,鳴七
  • 種族:組織
  • 関連人物:福沢玲子,蜜田真奈美《所属》,野沢知美《犠牲者》
  • 関連用語:宇宙人,サジタリウス,人体実験,大天使ミカエル,ひきこさん,百点塾
 いわゆるニューエイジ的なカルティズムや終末思想を彷彿とさせる、謎の宗教結社。
 何を信奉しているか、結成に至った真意などについて全貌は掴めておらず、「アパシー・シリーズ」における描写をすべて重ね合わせたとしてもプレイヤー目線では断片的な情報しか入手できていないのが実情である。 
 なお相当に長い正式名称のため、ファンの間では「ハピカン」などと略して呼称されることも多かったりする。

 末端構成員は公園での清掃など一般的に善行とされるボランティア活動に従事しながらも、実際には普通の社会とは隔絶した彼ら独自の反社会的な倫理観に基づいて動かされているようだ。その瞳はどこか病的である。
 裏の活動内容として「シャンプー」こと寄生虫「サジタリウス」から抽出した液体を用いて、人心を支配するネットワークの構築や付属して数々の非道な「人体実験」を行うことなどをしている。シリーズではこれらの活動に焦点を当てられることが多い。

 ほか、教義の上では「宇宙人」とのかかわりに注目しているようだが、そのスタンスも謎に包まれている。
 なお名称では「カンパニー(company)」とあるが、営利目的で活動を行っている風に察することはできない。実は「会社」の英訳として捉えるのは不適格なのかもしれない。どちらかといえば「集い」や「仲間」のニュアンスで解釈してもよいだろう。

 『VNV』「あなたは幸せですか?」『特別編』「あなたは幸せですか?(改訂)」に登場。
 初登場作品。
 福沢玲子のクラスメート「蜜田真奈美」はこの団体の構成員のひとり。組織内での具体的な地位こそ不明なものの、シャンプーの製造工程という裏の活動まで知り得る立場にいた。

 蜜田真奈美はボランティアなど表の活動で優等生的な風聞を集める一方、シャンプーを「一年G組」に浸透させることでクラスをこの団体の影響下に染め上げ、彼女の言葉ひとつでクラスを動かす求心力を得た。ただし、彼女の活動は一クラス内で完結するものだった。
 その上で蜜田真奈美はクラスの潮流に出遅れたクラスメートの「野沢知美」さんを闇から闇へと葬り去られる犠牲者へと仕立て、見込んだ福沢玲子をシャンプーの製造工程に案内し、自分たちの同志に引き入れる。

 なお、蜜田さんが言うには目的は「宇宙人からの侵略に備える」というものであるが、福沢の話ではシャンプーの布教と製造しか見受けられない。なにか他の面での活動もしているのだろうか? 
 福沢は何かを崇拝している様子を目撃こそしているが……、後続の作品を見てもその多数の医療スタッフやセキュリティの行き届いた建造物を有するなどその規模や資金力は計り知れない。だからこそ得体の知れなさは深まるのである。

 [元から「ピース」だの「ハッピー」だのが名付けられたものにはろくな物が存在しない。たとえば「ピースメーカー」と言えば聞こえは良いが、実態はリボルバー拳銃で有名な「コルト・シングル・アクション・アーミー」のことであり、多くの人間を殺傷してきた銃のことである。
 ……と思ったら、某変身ヒロインに思いっきり付いてしまった。なんてこった。]

 ご多分に漏れず、ワールド・ハッピー&ピース・カンパニーでも同士となれば快く歓迎するも、「実験材料」と見なされれば容赦なく「人体実験」に回されてしまうのだ。

 『流神A』「ひきこさん」に登場。
 都市伝説「ひきこさん」の手口と酷似した連続幼児殺人事件を起こした犯人候補のひとつ。
 「大天使ミカエル」を崇拝しているようで、かの天使と太陽を合わし示す図案を組織のシンボルマークに採用している。

 そんな彼らの犠牲者たちだが……首を絞めて殺害したのちの遺体は眼球がえぐり取られ、徹底的に顔面を潰すなど激しく損壊されており、その手口は極めて猟奇的である。
 ちなみにこれら被害者は例のごとく「サジタリウス」の献体で、逃亡しようとした見せしめとして手のひらに生贄のマークとして教団のシンボルを描いたのちに原宿近辺に遺体を遺棄したという。

 しかし上手く事を運ぶことが出来れば「賀茂泉かごめ」警部補の手によって捜査のメスを入れ、ついには国内での活動を壊滅にまで持っていくことができる。

 『極』「百点塾」「狂気山脈」「イノチ」に登場。

 「百点塾」。
 展開によっては百点塾こと「世界の幸せと平和を願う学習塾」がこの宗教団体と密接なつながりを持つことが判明する。
 やはり「サジタリウス」の研究を行っているようだが、今回はその幼体が主として話の題材になる。「南極?」に新堂さんたち八名の塾生を連れていくための大型ヘリを調達したり、人数分の登山用具を用意したりと、その資金力は推して知るべしである。

 「狂気山脈」。
 「小野里順也」が遊んだ『蒼天の白き神の座』のエンドロールにて、このゲームは「ワールド・ハッピー・山協会」が製作したものだということが分かる。(の字は潰れていてはっきりと読み取ることはできない)
 上述の「百点塾」でのハピカンと狂気山脈との繋がりを思えば、狂気山脈を題材にしたゲームを作っていてもおかしくないのかもしれない。[そうかなぁ?]

 「イノチ」。
 サマーキャンプに参加していた福沢さんと同行していた蜜田真奈美が例のごとく所属している節がある。
 同じく同行していた野沢さんがインストラクター「シラミ」の粘着をかわすために深く考えずにその名を騙ってしまうが……。

 『鳴七』「あなたは幸せですか?」ほかに登場。

 「あなたは幸せですか?」。
 基本的に『特別編』版とシナリオに相違はない。
 ただ、他のシナリオでも出演する「一年G組」の顔と名前が明確に出ており、彼ら彼女らがシャンプーに支配されている様が描写されている。ほかでの様相を知るプレイヤーの心を抉る演出と言えるだろう。

 不可解な終わり方をした場合に七話目シナリオ「狂気の夜」から特殊シナリオが派生するという構造も同じである。
 ただし「サジタリウス襲来」は採用されておらず、あくまで特殊エンドという形式である。

 「狂気の夜」。
 蜜田さんに裏切りの言葉を浴びせられ、意趣返しとばかりにサジタリウスを蜜田さんにぶちまけ辛うじてハピカンの施設から脱出した福沢さんだったが……。
 施設はもぬけの殻、無惨な姿に成り果てたはずの蜜田さんは健在、と不可解な形での幕切れとなる。
 と、この展開を辿った場合に、直前の話に引き継ぐかのように「七人目」として蜜田さんが集会の席に現れることもある。

 (ネタバレにつき格納)

+ ...
 そうして、もうひとりの当事者であったはずの蜜田さんの証言によると、福沢さんは「一年G組」という集団を巻き込んで蜜田さんという個人をいじめ、虐待していた。双方の語りは全く食い違い、被害者と加害者の構図がぐるりと反転している。
 この場合の「ワールド・ハッピー&ピース・カンパニー」が本当に実在していたのかはあやふやであり、ひょっとすれば福沢さんが集団によるいじめを正当化するための方便として作り出した妄言、虚像であったと考えられなくもない。




ワールド・レンタル・コーポレーション

  • 登場作品:AMC1,レンタル,送り犬,鳴七
  • 種族:組織
  • 関連人物:仙田秋成,篠田俊郎,田所京平《所属》
  • 関連用語:レンタル家族
 主にインターネットを通じて、何でも貸し出すレンタルサービスを請け負う企業。
 現在「アパシー・シリーズ」においてその詳細は明らかになっていないが、ただ一点千葉に社屋ビルが置かれていることは確定と思われる。

 『AMC1』『送り犬』「会いたい人」ルートに登場。
 「仙田秋成」が勤めている会社として話の話題にのぼる。
 こちらの世界においては現在急成長中で、CMも打っているようである。

 「柱の傷」。
 作中には出ず設定資料集のみに記載された情報だが、志垣家のパパはこの企業に勤めている。

 『レンタル家族』「家族写真」に登場。
 こちらの世界においては「レンタル家族」というサービスの最大手として躍進し、世界有数の企業にまで成長している。
 ただし、同サービスは社会通念として広く普及してしまったため、作中では制度としてのそれに触れられる方が主であり、この企業体自体にスポットが当てられる機会はほとんどなかったりする。
 この企業体に所属している「篠田俊郎」さんの視点から会社の現状が語られる程度だろうか。


わかりる?

  • 登場作品:晦
  • 種族:セリフ(迷言)
  • 関連人物:前田葉子《迷言》
 和子五話「風間さんの生き霊」に登場。
 「風間さん」の「生霊」に取り憑かれ、イカれた伝言ゲームの末にとうとうヤケクソになった葉子ちゃんが言い放った迷言のひとつである。全文は以下の通り;
 だからぁ、風間ってヒトわぁ、ダンスコイサーでハンバーグキースーなわけ。わかりる?(意訳:風間さん的に和子おばさんとのダンスは最高です。ところで、今日の晩御飯はハンバーグがいいな。やったねパパ、明日はホームランだ。わかりましたか?)

 テキトーな選択肢を選んでみたらホントに何を言っているのかわからなくなってしまった。この話の葉子ちゃんは年頃の娘さんにあるまじき珍ゼリフ続出で、ある意味見物である。「ぶぱきゅるはおわーーーっ!!」、「にゅるにゅる」、「間違いィ?」。

 [「間違いィ?」と言い、ブロントさんが使いそうな言語だと思うのはわたしだけでいい。ほう、経験が生きたな。]


勿忘草の会(わすれなぐさのかい)

  • 登場作品:流神A
  • 種族:組織
  • 関連人物:曽我秀雄,柳川裕輔
  • 関連用語:紅女
 『流神A』「紅女」に登場。
 天才人形師「曽我秀雄」の主催する団体。千葉県松戸市に所在地を置いているようだ。
 構成員は妻に先立たれた独り身の男性であり、似た境遇同士で集まることでメンタルケアを行う……というのが表向きの結成の理由である。その一方で彼らは脱会を待ち望んでおり、それはほかの会員からも祝福の下に送り出される事柄であるらしい。

 会の由来でもある勿忘草は作中でも触れられている通り、中世ドイツの悲恋にまつわる物語に由来する。
 英名の「forget-me-not(僕を忘れないで)」にある通り、亡き妻を生涯思い続けるという会のモットーは、後ろ向きではあるものの、言葉通りに解釈すればひたむきで美しいものであると思われたものの……。

 (ネタバレにつき格納)

+ ...
 その実態は曽我秀雄の行うよみがえりの儀式によって妻と再会することを望んでいる男たちの集いである。
 彼らは、別人の姿を得て生き返った妻と過ごせるのも長くて三か月、やがて「紅女」という怪物に変化した妻に殺されてしまう、ということを承知の上で会員になっており、彼らが亡き伴侶に託した想いと狂気のほどがうかがい知れる。

 言ってしまえば、妻を無理に現世に呼び戻したうえで形を変えた「心中」を行うと言い換えることもできる。

 亡き妻の容れ物となる女性の確保と、儀式に用いる特殊な液体の素材の希少性もあって「妻と再会する=脱会」は相当な順番待ち状態になっているようだが、現会員は「柳川裕輔」を含め四名と比較的少数である。
 ただし、潜在的な被害者兼加害者である元会員については最低一名が確認されており、全貌は不明となっている。

 警察の捜査が入ったことで会員三名は逮捕され、組織としては壊滅状態になったと思われるが、主犯格である曽我秀雄については取り逃がしており、彼の人の心の弱さに付け込むようなやり口が再発する可能性は今後も否定できないだろう。


 花言葉は「真実の愛思い出私を忘れないで」等。


わらし様(-さま)

  • 登場作品:晦
  • 種族:???
  • 関連人物:前田良夫《噂》,立川《犠牲者》
  • 関連用語:心霊写真,カニバリズム,座敷童子
 良夫一話「実在した「わらし様」」に登場。
 良夫の友達「立川」の家に棲み付き、複数人存在するのだとかいう怪異。
 見かけは白装束をまとった長い髪の女性というもので、どこか日本古来の「幽霊」を思わせる。

 で、このわらし様は去年に夏休みのグループ研究の題材にしようと立川が言い出したことから良夫の知るところとなる。
 良夫たちは立川の提案に乗り、なにか写真が撮れて楽に終わればいいな程度の考えで立川家に張り込むことにした。

 首尾よく立川が上記の女性が写った写真を撮れたことから、踏ん切りの付いた良夫たち五人は立川家に泊まり込んで、複数人出没するというわらし様の写真を撮り、あわよくば有名人だなんて考えを抱くのだが……。
 夜半に目覚めた良夫は家人、この場合は立川の血肉を貪るわらし様の姿を目撃してしまう。翌日になってみると痕跡はかき消えていた。わらし様は立川の生気を奪っているとも考えられるが、いずれにしても彼の命は長くないと良夫は推察している。

 また、眠りこけたものの命を奪ってくる何者かや追いかけてくる「骸骨」が現れるという展開も存在する。
 ただし、それらの怪現象が先に挙げた「わらし様」と同一、もしくは関係があるのかどうかは全くの不明である。

 そんなわけでメインルートと思しき幽霊じみた「わらし様」の正体、それはズバリ「異人殺し」の伝承そのものである。
 ここでいう異人とは外国人のことに限らず、特定のコミュニティーの外に属する外来の人、存在、もしくは弾かれた存在のことを指す民俗学的用語である。彼ら彼女らは神性を持つともされ、時に歓待される、またある時には疎外、排除される。

 たとえばムラ社会にある程度の地力があり、旅人慣れしているというならその恩恵は情報などと言った穏健なものに留まる。が、運悪くコミュニティが貧しいか閉鎖的であるなら村人が取る手段は凶悪なものとなるだろう。
 この場合は殺して奪われるものが金品ではなく血肉であったというだけとなる。前田本家の属する地域は古くから名の知れた温泉地だったらしく冬になると湯治に旅人が訪れ、時に力尽きたものが冬を越す蛋白源として村人たちの餌食になっていたという。

 いうならば、わらし様という祀り上げは自分たちの罪の意識を軽減するための言い換え語、方便だったといえる。 
 恐れるあまりに、畏れを生み出す。かと言って、事情からそのままの名で祀ることは出来ない。
 よって、言い換えは行われる。しかし、“わらし様"が一体どこから発生した名称かは時代が変わった今、謎に包まれている。

 一応、筆者の私見を述べておくとするならば「座敷わらし」や異人の一種「六部」が家の“内"で死んだモノの霊とするなら、連想するには十分だろう。両者は入ったまま出てこない、それも共通点である。
 ただし、ここまでの事実は小学生の良夫が郷土史からある程度調べることができた範囲で出てきたものである。
 本格的に調査すればとてつもないものが出てきそうでコワい。

 ちなみに、このルートから外れたところで、明確に童子(わらし)のイメージに重なる存在が出現することもある。
 そちらは鬼ごっこやかごめかごめと言った古来の遊びを好み、小学校低学年くらいの半ズボンの子供の姿をしている。
 ただし、そちらは本人(?)の口から自分は「わらし様」などというものとは違う旨が語ることもあったりする。
 見た目に沿うならどこからどう考えてもこっちがわらし様なのに、とんだ引っかけもいいところである。

 口ぶりからすると、単なる悪霊と一緒にするなとでも言いたげな高次の存在であるようにも見受けられる。
 一方で作中で見せた行動としては無邪気な子どもらしい残酷さでたやすく遊び相手の命を奪ってくるなど、どこからどう考えても邪悪としか言いようのない得体の知れない存在である。畢竟、それが何者であるかはまさしく闇の中といえる。

 ここまで書いてきて嫌になってきたが、前述の通り平行世界と限らずこれらの怪異が共存している可能性はなくはない。
 果たして、立川家には何がどれだけ棲み憑いているのやら。  


ワルサーP38

  • 登場作品:AMC1,アパ殺
  • 種族:アイテム(凶器)
  • 関連人物:風間望《所有》
 [この手の中に~抱かれたものは~全て~消えゆく~定め~なのさ~♪]
 某有名な怪盗三世が使用していることで有名な銃。ドイツ原産でナチス・ドイツ陸軍の正式拳銃。
 しかし評価は大戦末期の粗悪品の流通もあってイマイチの模様。

 『AMC1』「人間狩り」ルートに登場。
 風間さんはコレを「倉田恵美」を狩る道具として持ち出してきたが、チョイスとしてはイマイチ。何しろ元々銃刀法違反で所持しているだけで厳罰、なおかつ銃の腕前自体も重要であるし、殺傷力は十分でも入手も困難な一品。
 [入手するにしても中国産のトカレフや日本警察でも使用しているニューナンブ拳銃の方が容易で実用性(?)も高いであろうに。]風間さん自身の無知と見栄えのみを重視する点がよく現わされている。

 とはいえ、(風間目線での)選択を誤らなければ冷淡にターゲットほかを射殺できているし、ほかに得物を有している福沢玲子が戦利品として風間の死体から持ち出していることから凶器として有力なものであることは変わりないだろう。

 『アパ殺』に登場。
 引き続き「殺人クラブ」所属の風間望がメインウェポンとして持ち出すもよう。


 (執筆者募集中)  



ンバンバ族(-ぞく)

  • 登場作品:晦
  • 種族:組織
  • 関連人物:山崎哲夫《噂》
  • 関連用語:干首,とりあえず踊ってみる
 哲夫六話「ンバンバ族の戦慄」に登場。
 ふっ……、油断したな。しりとりをしたとしても、そう簡単には終わらないのだよ。

 ンバンバ族とは今時珍しすぎる首狩族である。
 たぶん某南国少年とは関係ない。
 秘境のジャングルで文明を拒んだ原始的な生活をひっそりと送っているらしい。

 遠めには首長竜にも見える彼らの神殿が建っており、哲夫おじさんが調査に向かった当初は絶滅した恐竜と思われていた。
 おじさん曰く「ンバ」とは彼らの言葉で首を意味し、この言葉を叫ぶことは決闘開始の合図にもなっているらしい。
 ただし学術調査が入ったわけではなく、証拠は唯一の遭遇者である哲夫おじさんの申告のみと、信憑性は著しく低い。彼らが日本語は勿論、英語を喋っていたわけはないし。

 戦闘に勝っては、敵の首を狩って「干し首」にするという独特の風習を持っていたらしい。
 首にかけられた干し首はそれが多ければ多いほど勇敢で、かつ地位の高さを示すステータスとなっているという。それを実証するように、おじさんは危うく首を飛ばされかけた。

 ――正直与太話としか思えない上に、これをトリの六話目に持ってくる哲夫おじさんのセンスまで疑わしく思えてくる。
 哲夫さん(当時:十九歳)にとっては大旅行で、客観的に見ても大冒険のはずなのに、どうもシラケたムードしか漂ってこない。これこそ哲夫空間というものか。

 しかもスンバラリア名物の「踊ってみる」選択肢がなぜかこの話にあったりする。
 しかも、冗談交じりで選んでみると、おじさん真面目に踊る。
 ただでさえ個々の単語が怪しいのに、輪をかけたおじさんの奇行のせいで話の信憑性を著しく下げていることは間違いないだろう。一応は破れかぶれでなく論理的な行動らしく、展開によっては追っ手から逃れたこともあるのだが。 

 [一説に、この地球上には未発見の部族が百以上存在しているとも言われている。
 未開の先住民の存在もけして珍しくなく、考えられないことではない。ただ、この話では「首」と言うゲテモノ要素が先行したのが敗因かもしれない。ホラーとしても不思議な話としても失格な感はどうにも否めないだろう。

 しかし、真面目に学術的な調査しか許されない現代とは異なり、このシナリオを受け入れることが出来る雰囲気が『晦』全体には流れていたのかもしれない。さしずめ「川口浩探検隊」のような悪く言えばやらせチックなドキュメンタリーの血脈といえる。

 『晦』の年代が作中で語られる機会はないが、もし『庚申講の夜に』の年代である1980年と同一であると仮定すれば、まだこのような悪ふざけが許容された時代と言える。
 ま、それとは別に哲夫おじさんの話は適当に受け流すとしましょう。]



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最終更新:2024年03月20日 14:47