因果と報いの果てにたたずむ、貌をなくした世界と少女



仮面の少女(かめんのしょうじょ)

  • 登場作品:学怖,学怖S,特,学恋V,生徒総会,ドラマCD,ナポin,鳴七
  • 種族:???
  • 年齢/誕生日:?歳/?月?日生まれ
  • 身長/体重:?cm/?kg
  • 関連人物:坂上修一,日野貞夫,内山浩太,相沢信彦,畑中亨,瀬戸裕子《?》
  • 関連用語:語り部《復讐》旧校舎,トイレ《出没》,無限ループ,パラレル・ワールド,前世

概要

 膨大な分岐を持つ『学怖(S)』において、多くのファンからは最難関とも言われる隠しシナリオが「仮面の少女」である。
 同シナリオは「殺人クラブ」、「荒井人形」と並んで「三大シナリオ」とも呼ばれるほか『学校であった怖い話』の世界観の根幹を担うシナリオでもある。
 そして、主人公やファンたちはそのシナリオ名をそっくりそのまま冠する少女のことを指して「仮面の少女」と呼ぶ。

 その名の通り、顔の全面を覆う真っ白な仮面を着けた亡霊の少女であり、その素顔や本名は本質的には不明となっている。
 初登場の『学怖(S)』からして彼女の生前からの来歴、何十年か前にいじめを苦に自殺に追い込まれたことは語られている。
 その一方、当該シナリオをベストクリアした場合は直後に彼女が生前血肉通った人間であることを疑わせる幻想悪夢的なエピソードが解放され、プレイヤーはどう解釈すべきか大いに悩まされる。そのため、少女の正体の特定は極めて難事である。

 実のところ、仮面の少女に素顔や本名が最初から存在しないのではないかと疑わせる要素は目白押しだったりする。
 その上、悪霊や妖怪など、怪異と位置付けられる存在は虚実を問わなければいくらでも名前を挙げられる「アパシー・シリーズ」の中でも仮面の少女は別格の存在感を放っている。彼女を単なる悪霊と捉えるのは、はなはだ不適格な解釈だろう。

 むしろ彼女に関しては、特定の人格(キャラクター)を持つ作中の登場人物というより、表側(現実側)から「六人の語り部」と主人公を統括する「日野貞夫」と対になる役割を担う、作品世界の案内人または黒幕と捉えた方がしっくりくるかもしれない。

 ちなみにシリーズ中では『四八(仮)』「あなたシナリオ」の包帯や、『追加版』の各所に見られる「紙袋」など、顔を覆い隠すことで個人の特定を極めて難しくするモチーフ/ギミックが多くみられる。
 顔をなくすことで同時にその登場人物が生まれ育んだ「個」をなくして、何者でもない何かに成り果てる、
 もしくは特定の何者かを引き継ぐことができる――と解釈することもでき、なんとも示唆的である。


邂逅(後悔)

 この少女と真の意味で出会うためには「語り部を決められた順番に選び、なおかつ決められた展開で進ませていく」という行程が必要となる。この決められた順番と展開は作中ではほぼノーヒントなので、攻略本等の情報が不可欠となる。

 その展開では話を進めるにつれて語り部が次々と消え、減っていく内容となっている。

 「岩下明美」は自殺した弟の復讐相手として主人公を逆恨みしたあげくどこかへ失踪。
 「風間望」は一人で七不思議を語った後に、突然消失。
 「荒井昭二」は「相沢信彦」の自殺実験の話をしたあと屋上から飛び降りるも同じく消失。
 「新堂誠」はボクシング部の「赤坂陽介」と「畑中亨」の話をした後で突如として蒸発。
 「福沢玲子」は瀬戸さんらしきモノに水泳部のロッカーに引きずり込まれ、
 「細田友晴」は旧校舎のトイレの天井に吸い込まれる。

 そうして様々な怪奇現象に遭いつつも話を進めていった主人公の前に、ついに「仮面の少女」が現れるのだった。
 そして少女はあくまで淡々と、いままで話されてきた怪談と語り部にちなんだ質問をしてくる。その正解数によって結末は変わり、正解数が多いと隠し01が解放される仕組みになっている。

 なお、この一連の流れだが企画の進行役である「主人公(坂上修一)」は途中で集会を取りやめ、解散するという選択肢を取れたことは確かである。
 メタ的な事情をいえば途中でやめた場合は必ずバッドエンド扱いになってしまうのだがそういった理由は差し引こう。

 にもかかわらず、この恐ろしい流れを食い止めず、内心では期待か恐れか、どちらでもない感情に従って会を続行し最後まで見届けようといた理由について仮面の少女の側から問いかける質問もきっちり用意されている。
 ここは語り部の性格についての印象を求められるタイプの質問同様、正解、不正解の区別はないのであなたの心の赴くままに。

復讐

 さて彼女の正体であるが、細田六話で語られた居残り補習をさせられた生徒、その「七人目」である。
 細田六話では旧校舎の怪異に「六人」が犠牲になる話であったが、実際には存在した「七人目」であった彼女を他の六人が憂さ晴らしにといじめを実行。それ以降いじめはエスカレートし、ついには少女は自殺、旧校舎にその魂を囚われてしまう。

 ……月日は流れ、いじめを行った六人は成長して大人となり、彼らの子供達が運命の導きによって学園へと集まる。
 そして「仮面の少女」と化した彼女が七不思議の集会を利用して復讐を果たしたわけである。

 これには「自分が死んだことによって悲しんだ両親と、同じ苦しみを味わわせてやりたい」という強い怨念が動機である。しかし復讐を果たしても彼女の魂は救われず、さらなる生贄を求め続ける悪霊に変じてしまうエンドもある。
 ここでの主人公の役割はあくまで「観察者」であろう。


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仮面(ペルソナ)

 何を答えようと、結局彼女は大半の結末では仮面を外し素顔を見せてくれる。
 ただし、それまでの質問に幾つ正解するかによって彼女の素顔(解釈)は変化する。
 枝分かれする数は『学怖』では九種、『学怖S』では と、非常に多岐にわたる。

 もっとも最後の質問に「七人」と答えた場合は彼女の怒りを買って殺されてしまうのだが。
 「五人」と答えた場合は


 あまりに正解数が少ない場合はそもそも仮面を着けたままで素顔を見せてくれない。
 霊界にも人間界にも行けない狭間に住む霊の代表として、仮面を着けた亡霊の同胞たちと一緒に主人公を取り囲む。
 きっと生きて返してはくれない。

 次に正解数が少ない場合は人に恐怖を与えることを快楽として自覚したと語り、主人公に愛おしむような言葉をかける。
 その素顔は朝日に紛れたが、最後は微笑みながら消えていった。

 その次。朝日の中に消えていったのは同じだが、直後に彼女は青い蝶の群れになって飛んでいく。
 皆飛び去った後でも主人公の周りには一匹の蝶が名残惜しそうに飛んでいたそうである。

 一問以外全問正答した場合は仮面を取り去った後の美しい顔があらわとなるのだが、直後その顔は溶けた蠟のように崩れ去る。
 あとに残されていたのは彼女の心をそのまま映し出したような何もない闇、もしくは怪物のような顔だった。 

 これら五つの結末は仮面の少女=幽霊と言う解釈に立つもので、彼女の過去をそのまま受け入れたものになるだろう。
 青い蝶は幻想的であるが、そもそも「」とは多くの地域で魂が化身したものとして語り継がれている。
 まるで夢のような時間が遥か昔に過ぎ去ったと言う主人公の感想を受け入れて、「胡蝶の夢」「一炊の夢」と言う成語を思い出すのは気のせいだろうか。

 そして、全問正解した時に明らかとされる素顔は満天の星空が広がる宇宙空間である。 
 生前の素顔でも、魂の化身である蝶でも、復讐を終えて虚無に成り果てた心でも、復讐を為してなお救いを求めて世に呪いをまき散らす心でもなかった。
 そこにあったのは、宇宙、すなわち世界と言い換えることもできる。


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夢幻(無限)

 これら多くの結末を終了させて続く隠し01を進めると、彼女の復讐が必ずしも真実と思えなくなっていることに気付くだろう。
 まず、現実の世界に帰還したはずの主人公は「七不思議の集会」および集められた六人の語り部たちが存在しないことを知る。

 いきなり、これまで辿ってきたはずの話すべての前提を崩されて困惑の一途を辿る主人公だったが……。
 そこからやって来る結末は後味のよいものはひとつたりとも存在しない。
 一応、ハッピーエンドと解釈できるのは「七不思議の集会」とは「仮面を受け継ぐ者」として主人公が選ばれるための試練であり、語り部達も元より生者でなく旧校舎に囚われた魂だったという展開だがそれが成立するもしないも、人それぞれだろう。

 『学怖S』では怨霊と化した六人の語り部たちによって「三途の川」の先に誘われた主人公は、誘いに乗ってしまったがためにある種の地獄を味わうバッドエンドが追加されている。。
 もしくはそれを食い止めようとした仮面の少女の助力によって無事生還を果たすという、解釈を挟む余地のないハッピーエンドが派生する。が、これは『学怖』単独の作品のテーマにはそぐわない例外中の例外である(『学怖S』の作風には似合うが)。

 用意された結末のほとんどは、プレイヤー各人によって解釈に幅が生まれるものになっており、不気味ながらに不思議な余韻をもたらすものになっているのだ。説明書で原作者が寄せた「あるのは恐怖だけ」というコメントに忠実であると言い換えられる。

 たとえば物言わぬ仮面の幻影や語り部達の語りかけに錯乱して精神の均衡を失ってしまう
 もしくは現実から夢や死者の世界に誘われる。
 さらには“仮面”という誰でもない顔がふたたび手元にやってくることで、誰でもない存在に成り果てるか囚われてしまう。

 もっといえば、主人公とはもともと存在せず、すべては暗黒の宇宙が生み出した空想であり、無限に墜落する地獄へ戻される。
 などと……難関シナリオの達成感を少々損なわせる、と言いたくなる絶望感たっぷりの結末に陥ることがしばしばである。

 が、『学怖』をまとめる上でこのシナリオほど相応しいものもないだろう。
 一見、意味不明かつバッドエンドにしか思えない数々のEDは一貫して「主人公(プレイヤーの分身)」として作中世界を歩む存在の根幹を揺るがすと言う一点で共通している。

 主人公(≒プレイヤー)が当たり前に思っていた世界自体が曖昧で夢のようなものだという視点を提供する。
 “仮面"と言ういかにも象徴的な道具は語り部たちもまた主人公の持つ一側面でしかなく、自他の境界は認識次第で簡単に揺らいでしまうことを教えてくれる。ある種の認識論に従えば、肉体の有無や生死の境なんてさしたる問題ではないように。

 最後に、作品世界そのものが「無限ループ永劫回帰)」によって成り立つことの示唆もこのシナリオ中には含んでいる。
 詳細は当該項目を参照のこと。

学怖

 細田六話、隠しシナリオ、隠し01(男)に登場。
 初登場作品。
 仮面のデザインはつり目を思わせる細い目線が入っただけの顔のほぼ全体を覆い隠すタイプ。
 黒い背景なので髪型すら分からず、でかでかと浮かぶ仮面とかろうじてセーラー服を着ているのがわかる程度である。

 素顔を務めた演者の方は発売元の会社「バンプレスト」で当時受付嬢として勤めていた女性とのことで、画質と暗闇から浮かび上がって怖く見えるという演出の割を食った感はあるが色眼鏡を外してみれば美しい顔をしていることがわかる。

 声は「テープを早回ししたような不愉快なノイズ」と「逆に遅回しにしたような野太くドスのきいた声」の二種類の表現がされており、口調も冷淡で人格を感じさせるものとは言えない。 



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 隠しシナリオ「仮面をつけた制服の少女」。


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 隠し01(男)「続・仮面をつけた制服の少女


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学怖S

 全体像が引き気味となり、仮面は横に目線が少し太く入って黒目が見え、輪郭のハイライトによってセミロングの髪型とセーラー服がはっきりとわかるようになっている。

 シナリオの本筋にさしたる変更はないが、大量の分岐が追加されており、そちらでは人間性と小悪魔性が増している。
 仮面の少女が「無限ループ(永劫回帰)」からなるこの世界を主宰する超自然的存在というより、名前は明かされないまでも素顔を持ち、狭間の世界でさまよう哀れな少女という側面が強調されており、場合によっては主人公を助けるか、陥れてくる。


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アパシー・シリーズ

 ファンサービスとしてカメオ出演することもあるが、『学校であった怖い話』の世界観に直結する役割を担うためか、登場に伴ってすべてが彼女に向けて集約していく唯一無二のポジションにいることが多い。


特別編

 細田七話「パラレルトイレツアー」に登場。
 トイレで怪異を探してみようという細田さんの提案に乗っかり、旧校舎三階の女子トイレを二回訪れた場合の出来事である。
 彼女と出会うエンドに向かうためには(プレイヤーが)このシナリオで辿り着けるすべてのエンドを通った上で「パラレル・ワールド」にまつわる『魅惑のトイレ』の話を坂上くんが聞いていなければ派生しない――という厳しい条件になっている。

 具体的には、そのトイレに行ったことで坂上くんは昔の学園にタイムスリップしてしまい、いじめられてトイレに閉じこめられた少女を助けるという展開である。
 ちなみにこちらでは仮面は着けていない。旧作ファンなら「もしや?」と思わせる内容であるが、坂上くんが次に目覚めた時既に元の世界(時代)に戻っていたので、結局彼女のことはほとんどわからず終いとなった。

学恋V



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生徒総会

 第一回鳴神学園生徒総会に登場。
 同イベントは『学怖』25周年を前して行われたクラウドファンディングの成功に伴い、成功のリターンとして発表した企画のひとつ。ファンとの交歓や企画の進行状況を発表するためという理由を兼ねて2019年8月12日に開催されたリアルイベントである。

 うち、仮面の少女は「七不思議の集会」を題にとって行われた朗読舞台劇「第一部」に出演した。
 それも六人の語り部が語り終えたのちに嵐を思わせる禍々しい演出が巻き起こり全員が退出したのちに「七人目」として出現するというものだった。演じたのはベテラン怪談師の「星野しづく」氏。

 仮面を着けて「倉田恵美」の背後に現れ、いざスクープと勇んだ彼女が退出するや静かに仮面を取ると、幽鬼のような声と雰囲気を持って訥々と、現状を思わせる怪談を語りはじめる。

 なお、この劇の台本で原作者飯島多紀哉氏が執筆した部分は岩下明美が語る『正義のゴネシエーター』および、導入とラストの舞台劇パートのみだった。
 それらを除いた六人の語り部の話す内容は各人に「自由」にお任せされていたのだが、星野しづく氏の語る怪談は必然とこの場にマッチした、取り残された女子生徒の話であったという。

 ちなみに、劇中で「仮面の少女」についての集会を企画したのは新聞部に所属する日野先輩、同じく新聞部部室にいた倉田恵美は彼の話を聞きながらハキハキと受けごたえすると聴衆に向けてこの劇の進行役を仰せつかったことを高らかに宣言し、喜んで跳ねまわるかのように集会に赴くのだった。

 ただ、そのプロローグの流れを受けて、トイレの花子さんこと「仮面の少女」について出席者は話をしてくれると思いきや、前述した通りにまるで関係のない怪談話ばかり。
 いぶかしみながらも、いざ最後に仮面の少女が現れたことに喜ぶ倉田恵美だったが、舞台に戻ってきた時に、彼女は衝撃の真実を思い出すのだった……。

 (ネタバレにつき格納)

+ ...
 なおこの劇だが、冒頭だけでも不自然な点が散見される。

 ・会話をしているはずのふたりが視線を合わせていない。
 ・よくよく聞けばふたりの会話が噛み合っていない。
 ・日野貞夫と坂上修一を思わせるキャストの役名が未公表。

 の、三点である。
 つまり、日野は倉田に向けて話をしていない。日野は「日野貞夫」ではなく、その息子の「日野直哉」、彼が話していたのは「坂上修一」とは何の関係もない新聞部員「桜木隆敏」だったのである。

 そして、この劇において「仮面の少女」は別にいる。

 ファンにとっての数々の先入観を見事に突いた仕掛けに観衆が驚かせられるのと同時である。
 日野直哉は、後輩との会話の中で悪びれもなく数十年前の父が仮面の少女こと「倉田恵美」をいじめ殺したことを語り、彼女の霊が学園をさまよっている噂を知った上でせせら笑った。

 これを聞いてすべてを思い出した倉田恵美の霊は激昂、呪詛の言葉「死ね」を連呼するとともに不可視の力を発揮、かつてのファンが知った通りの流れで父の業を息子に支払わせたのだった。

 それから彼女は幽鬼のような声で傷ついた過去を語り、仮面を被り、誰かに向かって告げた。
 過去の罪という名の因縁はあなたではない誰かに巡ってくるかもしれないという、かつてそのままの警告とともに、舞台は終幕を迎えることになる。

 [先に述べた通り「仮面の少女」というキャラクターに姓名は設定されていなかった、つまり少女であるのなら仮面を着けて顔を隠すことで誰でも仮面の少女になれるということを意味する。 
 復讐者に顔はいらない、だってどこにでもいるから。
 それとも、すべてを否定された挙句に世を去った人間は顔をなくすのかもしれない。

 倉田恵美が集会と思っていた集いや、その最後に現れた「仮面の少女」については疑問が残るが、一応仮説のひとつを述べておく。ただし、いくらでも解釈はできるので参考程度に。
 孤独に誰も気づかれずにさまようしかなかったつらい過去、つらい言葉に反論できずに死に追いやられた自分の弱さを切り離した人格の一部、それが星野しづく氏だったとは考えられないだろうか。

 これなら、ハキハキと明るく振舞う「倉田恵美」と怒りと諦念に支配された「仮面の少女」のギャップも説明が付く。
 それから集会も本来なりたかった自分が活躍するための心象風景、ということになり舞台のラストで演者たちが仮面を着けて登場した演出も「仮面の少女」の分身ということで説明が付くのだ。]


ドラマCD

 『ドラマCD』Disc.6 福沢玲子「十三階段」に登場。
 福沢さんが「十三階段」の検証で初めて「旧校舎」に侵入した際に感じた怖さを語る中で、旧校舎には十三階段以外にも怖い噂があふれていることを教えてくれる。
 仮面の少女も三階のトイレに棲む怪異として噂になっているようだ。

ナポin

 最終話「呪われたゲーム」に登場。
 選択肢「じぶん」を選んだ際に進む分岐において姿を現す。
 このシナリオは虚実や平行世界が入り乱れ全貌を掴むのが難しい構造となっており、直前の文脈からすれば再結集した「語り部」に日野貞夫を加えて再度開かれた「七不思議の集会」で語られる噂話の登場人物という形になっている。

 いわく新聞部の部室は「四次元空間」への入り口になっており、多次元への接点が時折生まれる。そんな部室に、ある夜忍び込み怪談をしようとした四人の男たちが出会ったのが世界の管理者を名乗る仮面の少女だった……というのが話の導入である。

 が、直後にはなんらかの形での場面転換を表すノイズ演出とともに、その話を語る「ナポリの男たち」へ視点移動が行われる(特にこの手番での視点人物「村崎藍(ランタン)」が強調されている)。
 そのため、日野貞夫たちからすれば平行世界の住人である「ナポリの男たち」の体験談が紆余曲折を経て虚実もあやふやな怪談(都市伝説)として伝わることになったと考えられるが、これも一応の解釈に過ぎないと念押しをさせていただく。 

 で、今回の仮面の少女だが、それぞれ似通った経緯で似て非なる四つの世界から一名ずつ飛ばされて集まったことで四人そろってしまった実況者グループ「ナポリの男たち」に対して賛辞を述べる。口ぶりで言えば、どうも彼女も彼らのファンらしい。
 相変わらず無機質な仮面で顔を隠しているが、律儀にナポリの面々に付き合ってくれている辺り面倒見がいいのかもしれない。
 口調もいつになく丁寧で、ナポリの男たちに対しても諭すように語っているため悪意はほとんどないように見受けられる。

 すなわちナポリの男たち四人はそれぞれ共通する経緯を辿って、仮面の少女の眼前にいるという。
 少女に誘われ、彼女たちの手によって用意された異界につながる器物や場所にほか三人を誘導した。要は女にダマされて仲間を売ったという流れであり、ナポリの面々は元の世界から引き離されたことで我に返ったというわけである。

 が、当の仮面の少女は現実や真実というものは夢や虚構や妄想の中で入れ子構造になっていて判別がつかないものとみなしており、ナポリの面々が涙ながらに帰りたいと言っている元の世界というものに特に価値を見いだしていないようである。
 男たちが辿り着いた現状の世界がどういったものであるのかは定かではない(実況はできる)が、仮面の少女自身は別に好きにすればいいと放任するスタンスだった。けれど、それでもと叫ぶランタンに応えるように、ふたたびノイズ演出が走り……?

 村崎藍たちは新聞部部室で目覚めるのだった。四人が対面した「仮面の少女」が夢幻や虚構の存在だったのか、それともどこかに実在して四人を納得させるためにほかの世界に送り出してくれたのかは定かではない。
 なぜならば、村崎藍が下した最後の選択とその先の結末は視聴者にも知ることがかなわないためである。

鳴七

 「トイレの花子さん」、「仮面の少女」に登場。
 今回の仮面のデザインは鼻立ちはあるが口が描かれず無機質で白いもの。ただ、目元に赤く涙が置かれている。
 これは数ある「道化師(クラウン)」の仮面やメイクの中でも哀しみを秘めたもののみが着けられる「ピエロ」を想起させるものであり、仮面の少女が心の奥底に隠した哀しみを象徴したものと解釈することができる。

 「キャラクター図鑑」や『生徒名簿』の彼女の記述を参照すれば、正体不明ながらに宇宙の真理とも語られる崇高な存在であるようだ。対面した人間の心をそっくり映し出す鏡のような存在ともされており、善悪を超越して存在している風にも見受けられる。

 なお、今回「仮面の少女」と対峙する前哨となるシナリオ「トイレの花子さん」は隠しシナリオ扱いになっており、従来の『学怖(S)』細田六話に配置された時のように普通にプレイしていても彼女と出会うことができなくなった。
 反面、仮面の少女と真の意味で出会うことができる同名シナリオに至るまでに、語り部六名を全員消す必要はなくなるなど、大きく発生条件が緩和されている。
 前提条件は岩下明美を五人目に選んで「悪霊のいたずら」の特定エンドを通過した上で細田友晴を六人目に選ぶこと。

 なお、今回の仮面の少女は生前の素顔を見ることができるのみならず、ベストエンドではその本名と出自がシリーズでもはじめて明瞭とされた。ちなみにその正体は主人公「坂上修一」が極めて密接に関わっており、切り離すことはできないものである。
 これには『学校であった怖い話』の世界観を虚無や絶望、無限ループといった形で示唆し、根本的なところでは救いを与えてくれない「隠し01」が未収録であるという事情が関わっているのかもしれない。

 その代わりに用意された特別シナリオ「秘密」においては「坂上修一」という個人に『鳴神学園七不思議』の世界観のすべてが集約・表出していくことを示された。
 そのことにより世界そのものと言える仮面の少女と坂上修一が等号で結ばれても違和感が生まれず、結果として今回の「仮面の少女」は顔を持たない何者かで終わることもなかった。
 何者であるかを定義する形で救済を与えることができたという仮説も立てられるが、解釈はプレイヤー各々にお任せしたい。

 [あくまでこの仮面の少女は「坂上修一」にとっての「仮面の少女」であり、それ以外の人間と対面した時にはそれに応じた仮面の少女が現れると言ったらそれまでなのだから。]

 「トイレの花子さん
 基本的に『学怖』版とシナリオに相違はない。


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 「仮面の少女



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最終更新:2024年03月11日 07:59