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これまでのお話 その2」(2008/05/27 (火) 12:47:00) の最新版変更点

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<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span lang="EN-US" style= "font-size: 10pt; color: black; font-family: Arial"><font style= "background-color: rgb(0,0,0)" face="MS 明朝" color="#FFFFFF"><span style= "font-size: 10pt; color: white; font-family: &quot;MS 明朝&quot;">仮に、ここからが第</span><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: white; font-family: Arial">2</span><span style= "font-size: 10pt; color: white; font-family: &quot;MS 明朝&quot;">クール目とします(宣戦布告までで、第</span><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: white; font-family: Arial">1</span><span style= "font-size: 10pt; color: white; font-family: &quot;MS 明朝&quot;">クールとすることも出来ますが、宣戦布告から続く戦闘も、第</span><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: white; font-family: Arial">1</span><span style= "font-size: 10pt; color: white; font-family: &quot;MS 明朝&quot;">クールに含めます)</span></font></span></p> <p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style= "font-size: 10pt; color: white; font-family: &quot;MS 明朝&quot;">休戦<span style= "font-size: 10pt; color: black; font-family: &quot;MS 明朝&quot;"><font color= "#FFFFFF">期間</font></span>に突入し、「国家間の謀略」「政治・軍事分野での動向の激化」など、人間側の動きがメインに書かれています(一部編集者の手で変換ミスが修正されています)</span></p> <hr> <p><span lang="EN-US" style= "font-size: 10pt; color: black; font-family: Arial"><font color= "#FFFFFF"><font color="#0000FF">864</font>名前:<a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF"><strong>名無し上級大将</strong></font></a><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>[sage] 投稿日: 2007/03/09(金) 05:58:39 ID:???<br> 3時11分 EOLTによるロシア軍への最後の攻撃が終わり、同軍の撤退はほぼ完了する<br> ロシア全軍の撤退は完了し、東部に逃げた兵力はヤクーツクに、西部、および北部に逃れた残存兵力を西シベリア低地に集結させ、包囲網を再構築する<br> 3時21分 米軍封鎖部隊もEOLTからの追撃を受けなくなる、すでに最長140km近く後退していたため、すでに構築していた陣地のほぼすべてを放棄<br> 砲兵陣地すら破棄し、司令部の類も一部はEOLTの活動範囲内に飲まれる、被害が拡大することを防ぐため、ペンシルバニア州の全域に住民避難が行われる<br> トレントンにある米軍封鎖部隊の総司令本部移転が開始される<br> この拠点のわずか7km手間にすでにEOLTが迫っており、すでに敗残兵の集合地にすらなっていないという始末であった、移転先候補はトーバー南部<br> 3時39分 第122自動車化狙撃師団、退却せず前線付近にてEOLTの体組織サンプル確保を開始<br> 同師団は機甲部隊が消滅したヴィレェイスクの外れにある拠点の周囲を探索、哨戒を行う監視科と探査科を若干数補足<br> ロシア軍の一部部隊は、この動きを確認し、その支援行動として退路の確保を行う、参加兵力は半壊した2個師団<br> 55分 死亡、または負傷したEOLTを回収する探査科を確認、これの先を越すため、苦肉の策として部隊を分散、2個中隊一組で行動させる<br> 4時22分 第2分隊が全滅したトーチカ群と戦車部隊に混じって倒れている、数体のEOLTを確認<br> 4時30分 接近し、死亡確認を行う、うち数体は負傷しただけであることが判明し、数名の隊員が犠牲になる<br> 4時35分 うち一体の完全な死亡を確認、損傷が激しいものの、付近の破片等を回収すれば復元も可能として回収作業開始<br> 40分 第1分隊も死亡したEOLTを発見、損傷が少なく、腐敗なども進行しておらず、非常に良好な状態ではあったが<br> 探査科の中型種であったため、地形の問題もあり輸送車両での牽引は不可能と断定、サンプルのみを持ち帰ることとする<br></font></span><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: black; font-family: Arial"><font color= "#FFFFFF"><br> 865 名前:<a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF"><strong>名無し上級大将</strong></font></a><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>[sage] 投稿日: 2007/03/09(金) 05:59:19 ID:???<br> 50分 第2分隊、負傷したEOLTが付近の兵士数名を惨殺、これに応戦する形で制圧射撃を開始、同個体を殺害<br> 52分 第2分隊に接近するEOLTの一団を補足、同分隊はEOLTの体組織の断片収集を中断し、撤収行動に移る<br> 5時 第3分隊、EOLTの奇襲攻撃を受け壊滅、残った部隊は師団本部へと後退<br> 20分 第2分隊の確保したEOLTのサンプルを確保するために、付近で負傷者救援に当たっていたヘリ(ミル Mi-8)4機を派遣<br> 30分 第1分隊、探査科中型種の組織断片を採集中、猛スピードで接近するEOLTの一団を補足<br> 偵察小隊にサンプルを預け、残りの部隊はEOLTの足止めを開始<br> 33分 第2分隊、EOLTと交戦、敵主力は追撃科であり、同部隊はろくな足止めもできずに突破を許してしまい<br> 数分後にはサンプルを所持した偵察小隊が攻撃を受け全滅、体組織断片の確保に失敗し、師団本部に撤収する<br> 50分 第2分隊の確保したEOLTの死体をヘリが収容し、離陸、第2分隊は師団本部へと撤収、このとき、同分隊以外の全部隊が師団本部へと到達<br> 55分 第2分隊がEOLTの奇襲を受ける、ヘリの一機も撃墜されるが、胴体部分を搭載したヘリは攻撃を受けずに無事離陸、ボスペリパへと向かう<br> 6時 第112自動車化狙撃師団は当初の目的を達成、これ以上現在地にとどまるのは危険と判断し、残りの兵力を合流させ、西シベリア低地へと後退を開始するが<br> 待ち伏せを行っていたEOLTの奇襲攻撃を受け、その戦力の大半を失う、師団本部を形成する一部部隊のみが生存<br> 6時40分 退路を確保していた部隊の援護射撃を受けつつ、サンプルを失いながらも、貴重なデータを多数所持した第122自動車化狙撃師団は友軍陣地へと帰還<br> 7時30分 ヘリ部隊も無事帰還、ボスペリパの第11放射線・化学・生物学防護旅団に持ち帰ったサンプルを受け渡す<br></font></span><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: black; font-family: Arial"><font color= "#FFFFFF"><br> 899 名前:<a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF"><strong>名無し上級大将</strong></font></a><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>[sage] 投稿日: 2007/03/18(日) 06:56:07 ID:???<br> 7時43分 ドーバー南部への封鎖部隊総司令部の移転が本格的に始動<br> 米軍封鎖部隊の再編を行うべく、各地に転々とした敗残兵と5割以上の被害を出した部隊同士の統合を行い、最低限の部隊としての能力の回復を図る<br> 7時50分 25万人近い死者を出したロシア地上軍は、すでにその全兵力が失われたといっても過言ではない有様であったが<br> 戦車・戦闘車両の多くは歩兵部隊と違い、迅速な撤退行動を行うことができたため、それほど多くを失ってはおらず<br> その損失は戦車9千両近く(破棄されたものが大半)、装甲戦闘車両が約1万両、なお、戦闘ヘリは悪天候のため余り多くが出撃しておらず、損失は50機前後<br> しかし、どちらにせよCIS地上軍の総力の半数を占めたロシア地上軍は崩壊、残された機甲部隊の多くも運用が困難なレベルであり<br> さらに、稼動する車両数も全体の半数以下であるため、それらを一線級の戦力とするために、ロシアとその周辺の軍・工業施設はフル稼働を始める<br> 8時 米露両国はもちろん、その周辺国(特に欧州方面)諸国は兵器・造兵廠に常識では考えられないような投資と要求を行い<br> ロシアに代表される一部国ではGDP比にして、一時的ではあるが40%近い予算を軍需方面に回し、兵力の増強を急がせる<br> 8時13分 ボスペリパにて、さまざまな危険性を考慮し、今の今まですべて安全確保に費やされていた、EOLTの解剖実験が開始される<br> 8時50分 米軍情報部がロシア軍のEOLTの残滓確保という未確認情報を確認<br> すぐさま同政府に問いただしを行い、EIEに全権を委託するように要求を突きつけるが、軍の独断だったこともあり、ロシア政府は何らかのデマ情報であると判断・説明<br> 9時30分 米軍、偵察小隊をEOLTのテリトリーに接近させ、様子を見る<br> 一部のEOLTは偵察部隊が行動を起こした瞬間、警戒態勢に入り、一定距離まで接近すると、監視科などのEOLTが行動を開始、これ以上は危険であるとし、後退<br> 10時 米軍封鎖部隊、半ば部隊ごとに自力で各所に防御陣地の構築を開始<br> 作業効率はお世辞にも高いとはいえなかったが、最低限のそれを作ることができることは可能であり、無いよりはある方がよいという考えで作業を続ける<br></font></span><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: black; font-family: Arial"><font color= "#FFFFFF"><br> 900 名前:<a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF"><strong>名無し上級大将</strong></font></a><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>[sage] 投稿日: 2007/03/18(日) 06:57:04 ID:???<br> 11時10分 米政府もEOLTの残滓確保を行うことを検討<br> ロシア軍のうわさを聞きたため、同政府は必要以上の焦りを見せ始め、国連の合意を待たずして計画を練り始める<br> 12時 ロシア政府も、軍の一部部隊がEOLTの残滓を回収したと未確認情報を確認、これの確認を行う一方<br> できることならば、自国のみの利益としたいという一部の思惑が交差し始める…<br> 翌日2時23分 テレビ回線などを通じて、国連による、今までの出来事に関する公式発表を行うべく、協議を開始<br> うすうす世界の人々は今起こっていることについて気づき始めており、デマ・流言の類を避ける必要があったのが主な要因<br> 4時44分 ロシア連邦軍参謀本部を経由し、国防省に送られてきた数枚の書類と、それ護送して来た将校が「EOLTの解剖を行った」と語り<br> 内容が虚報でないことを確認した国防省は、それを政府に公表、旋風をまきこす<br> <br> 以下、その経過<br> <br> <a href="menu:901"><font color="#0000FF">901</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/18(日) 06:58:28 ID:???<br> ――EOLT解剖についての記録――<br> <br> …EOLT解剖の執行者であり、責任者である私、キリル・トルプコ大尉が対象についてレポートします<br> なお、これはまったく未知の生物を解剖した際のレポートであるため、著しくその信憑性に欠け<br> 必要以上の考察や細かな記録等も要約したものであるということを、あらかじめ注意しておいてください<br> <br> 「解剖体の詳細」<br> <br> 解剖体の種別は「探査科」、確認番号4の小型種であり<br> 体重:298,92kg 前兆;1338mm 全幅:1631mm(腕を広げた場合:2245mm) 全高:3019mm<br> あの中央シベリア高原に放置されていたにもかかわらず、呼吸などの生態活動は停止しているが、体組織の大半がいまだ“生きており”<br> さまざまな生体実験への応用が可能だろうと思われる<br> 死亡(?)原因は不明だが、おそらくは頭部損傷からのショック死だと思われる<br> <br> 損傷箇所は、先に述べた大口径徹甲弾の直撃によると思われる、頭部の左半分の欠如<br> 榴弾の炸裂によるものと思われる、左腹部から下半身にかけての皮膚全体への爆風による痣(?)に似た傷とその破片によると思われる切り傷が十数か所<br> その際に千切れたものと思われる触手が3本、うち1本は根元からで残りは根元から15cmほど離れたところから千切れている<br> そして、99箇所に銃弾(おそらくは12,7mm弾)が当たったのだと思われる、環状の痕が確認されたが<br> そのほか、目立った損傷は確認できない<br> <br> 出血の度合いは不明だが、呼吸器系とは関係ない部位に、張りがなくなっているのが確認された<br> 生前の姿は不明だが、他の同種の画像と比べると、確かに血色(?)なども悪く、それなりの出血があったのだろう<br> <br> 腐敗等はまったく見られず、いたって健康体に見えなくもない<br> また、体が若干動いていることなどから、やはり思考を司る脳が死滅しただけで、ほかの体を動かす脳の部分は生きており<br> そのため、心臓など内臓の一部の活動、新陳代謝はいまだ行われているのだと思われる<br> <br> <a href="menu:902"><font color="#0000FF">902</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/18(日) 07:00:13 ID:???<br> ① EOLTの構成成分<br> <br> 解剖の結果、彼らの体組織の主な構成成分は“珪素(炭化・有機珪素塩?)”であることが確認される<br> これにより、否定されてきた珪素生物の存在を肯定することとなった<br> <br> しかし、反応速度・バリエーションなど、生物を構成するにはまず向いているとは思えない珪素が主成分でありながら<br> 炭素生物と劣らぬ反応速度を常温で維持することができる要因はまったく不明であり<br> 我々の知らない、化学反応・変化によるものなのか、後に記述する未知の元素によるものなのかは不明だが<br> 私の見る限り、このような原始・分子レベルでの複雑さを持つ生物が自然発生することは考えにくい<br> EIEや国連の公式発表のように、これはまず間違いなく、何者かの意思によって作り出された生物と見ていいだろう<br> <br> その他成分は、酸素・窒素・炭素など、炭素生物としての特性を持っている点はこれのためだろう<br> それと、発見当初より囁かれていた、まったく未知の金属と合金が含まれていることが判明<br> 体組織からこれらを抽出する試みを行ったが、はたせず<br> <br> そのほかにも、いくつか未知の元素を見て取ることができるが、それが何の役割を持つものなのかは不明<br> おそらく、珪素生物が生物として機能するためには必要不可欠なものなのだろう<br> <br> ② 遺伝構造<br> 遺伝構造については、不可解な点が多く、解析どころか、どのような遺伝方法なのかすら不明<br> ここよりも大規模な施設で、さらに長い時間をかける必要があるだろう<br> <br> <a href="menu:903"><font color="#0000FF">903</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/18(日) 07:01:50 ID:???<br> ③ 体組織の構造<br> <br> 「皮膚および皮下組織」<br> <br> 体組織の構造について、まずは皮膚と皮下組織から見ていくこととする<br> 皮膚の表面は、湿り気を帯びている一部の部位を除けば、乾燥し光沢のある爬虫類の皮のような突起がある<br> そして、感覚毛が映えており、その長さは10cm程度、毛とは言っても生きているため、人間のそれとは違い、どちらかといえば触手に近い<br> 硬いが、強く押してみると弾力があり、ハンマーなどでたたいてみてもダメージを受けた様子はない<br> さらには、解剖用メスを突き立てても傷ひとつ付かず、のこぎりや斧の類を用いても、切れるどころか、裂ける事すらなかった<br> <br> 強度実験として、解剖体に銃弾を撃ち込んで見るテストを行った<br> 使用する銃はAK-74uで、5人の兵士による一斉射撃を、弾装内の弾薬を使い切るまで行ってみたが<br> 皮膚と皮下組織はその衝撃を吸収し、運動エネルギーが完全に消滅した、銃弾が力なく床に散らばる結果となった<br> <br> この後、野戦工兵から拝借させてもらった工作用の機器のいくつかを使い、胸部皮膚を切断することにし<br> 数百kgから数tの圧力を皮膚の柔らかい部分にかけてみた、内部組織が損傷するかと危惧したが<br> 切開が成功し、皮下組織の断面とその下の組織が姿を現したとき、損傷は見られなかった<br> <br> そして、予想通り内臓の一部が活動を続けていることが一目でわかった<br> 心臓と思しき器官が活動しているためか血管は脈打ち、筋肉はつつくと反応し、収縮することすらした、驚くべき生命力である<br> <br> 皮下組織の構造は不明な点が多く、地球上のそれと似ているようで根本的な何かが違う、といったものを感じた<br> 筋肉組織の密度は非常に高いが、一方で間に体液を流し込んで、やわらかく、密度を低くすることができる構造のようである<br> これは、密度が高すぎるため、受け流せるような些細な衝撃でダメージを受けるのを防ぐ目的だと思われる<br> 筋力の高さは言うまでもなく、人間の五体を引き裂くことはおろか、戦車の砲身を捻じ曲げることまでしてしまう腕と<br> 自分の身長の何倍もの高さまで、体を宙に浮かせることができる足腰のばねのような筋肉は、人間のそれと比較にできないほどである<br> <br> なお、この高い筋力をあれだけの筋肉の量で引き出すメカニズムは不明<br> <br> <a href="menu:904"><font color="#0000FF">904</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/18(日) 07:02:41 ID:???<br> 「骨組織」<br> <br> そのまま切開を続け、じかに内蔵を確認しようともしたが、反射的に筋肉が収縮することもあり、肋骨に到達するのがやっとだった<br> 骨組織について調べることにしたが、強度が高く、やはり鋭利な工具の先端から加えられる数tの圧力にすら悠々と耐え、わずかに傷が付く程度だった<br> 骨は、ようやくの思いで削り取った試料を分析した結果、未知の金属と珪素から構成される合金であることが分かり<br> モース硬度13の炭化珪素とほぼ同じ硬さであり、弾力などはそれと比べ物にものだった<br> その強度は地球上の生物ではありえないものであり、予想されていた装甲車の装甲板並み以上である<br> <br> この後、腹部の切開による内臓の解剖も試みたが、必要以上に貴重なサンプルを傷つけるのは得策とは言えないため、断念<br> <br> 「触手」<br> <br> 触手の構造の調査を始めたが、これも異常な強度を持っており、もはや皮膚の比ではなく、工作機器を使っても多少つぶれて痕が残る程度<br> さらに、先端部分はモース硬度15以上のHk9600という、驚異的な硬度を持つ金属で、質量もかなりのものだった<br> これだけの強度があれば装甲車や戦車の装甲を貫通することも容易であるだろう事が簡単に計算できる<br> 死後硬直によって縮まった触手には、筋肉組織が触手それ自体や根元の部分に高い密度で凝縮されており<br> それの急激な伸縮によって、相当なスピードで触手を鞭のように振り回すことや、突き立てることができるはずで、瞬間速度は時速1000km以上になると推定される<br> <br> …大まかには以上のような内容であり<br> このレポートが今後の対EOLTの各分野における及ぼした影響は非常に大きなものになるだろうと予想される<br> <br> <a href="menu:925"><font color="#0000FF">925</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/23(金) 14:37:53 ID:???<br> 5時 米軍部隊がEOLT残滓回収のための部隊編成を開始<br> 予備役である第1軍所属の第158歩兵旅団を召集し、その任に当てることを検討するが、これは国連の目を欺くためのダミーであり<br> 同師団の召集を議会で検討する間、大統領の命令で第1海兵師団所属の第11海兵連隊を緊急招集、作戦の立案を開始<br> 6時 正午にて、国連が全世界に向けて公式発表を行うことを決定、このことをひとまず発表<br> いち早く、公表される以上の情報を手に入れ、独占しようという思惑を持つマスメディアは、国連本部や米露両政府の政治中枢に多数の記者等を派遣<br> そのような理由から、これから正午までの間、一部交通機関はパンク状態となる<br> 7時13分 ロシア軍、EOLT捕獲と意思疎通のための特殊機関立ち上げを本格的に始動<br> 計画名「ボストーク」、予算・資金の融通を開始、なお、国連その他機関に悟られることはもちろん<br> EOLTに感づかれることを防ぐ目的で同計画は、わずかな人間にしか知らされずに進行、マンハッタン島事件の混乱もあり、情報の漏洩はありえないだろうとされる<br> 7時24分 米海兵隊、秘密裏にカリフォルニア州からニュージャージー州へと移動を開始<br> すでに州の多くの住民は避難を完了しており、同部隊は半ば公然と陣地設営を開始、ただし、EOLTに悟られるような行動は極力避けるように作戦を進行<br> 8時 プロジェクト「8920」実行部隊編成の第1段階が終了、国防総省直轄の部隊としてノースカロライナ州フォートフラッグに本部を設置<br> 米政府と軍が様々な手段を講じたため、完全な幽霊部隊となっており、部隊名等は一切定められなかった<br> 8時22分 米海兵隊、残滓回収のための動きを進めるが<br> 前線の観測班の報告によれば、数体の千里眼科がその行動を“眺めて“いる姿が確認されており、大統領も作戦の実行を躊躇しだす<br> しかし、単にEOLT全体としての行動ではなく、一部千里眼科が興味を示して眺めているだけとの見方が強く、作戦の中止はされず<br> 9時11分 残滓回収作戦を「シェパード」と呼称、ただこの呼び名は国防総省と軍上層部の一部の人間のみが使ったものであり、広くは用いられず<br> <br> 9時33分 「シェパード」実行部隊の元に3機のヘリと数人のフランス人を含んだ見慣れない服装の軍人が送られてくる<br> <br> ――ジャケットとベレー帽には「8920」という刺繍が施されているが・・・――<br> <br> <a href="menu:934"><font color="#0000FF">934</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/24(土) 14:54:33 ID:???<br> 10時 海兵隊によるEOLT残滓回収作戦が開始される<br> ボルティモアに一旦集結した実行部隊は、4個中隊を編制しヘリに分乗させ、目的地であるトレントン郊外へと向かう<br> 残りは機動車両や大型トラック等で回収部隊の後退を支援するべくフィラデルフィア郊外に待機<br> 10時39分 回収部隊が目的地のトレントン郊外に到着<br> 同地は戦車大隊が航空支援の下、EOLT探査科の群れと交戦した地域であり、EOLTの死体がある可能性が高いとされ<br> そういった理由から、回収地点に定められたのだが、上空からは一切確認できず<br> 10時47分 ヘリで飛行すれば、EOLTを刺激することになることは承知のうえでヘリボーンを行い、周辺の探索を開始<br> 50分 A中隊が監視科と遭遇、1名が殺害されるもそれ以上の攻撃は受けず<br> 11時23分 B・C中隊もEOLTと遭遇、基本的に監視科と騒ぎを聞きつけて寄り集まってきた探査科であり<br> 監視科がわずかに確認されただけで、追跡・追撃科などの自衛用個体は出現していないことから<br> EOLT側に回収部隊を攻撃しようという意思はないことが見て取れる<br> 11時41分 これまで全力で死体の探索を続けるが、血痕(?)が残されているだけで、死体は確認できず<br> 11時55分 わずかに肉片がビルの壁に付着した死体が置かれていた跡を発見<br> この際、血痕からの血液(?)サンプルと付着している肉片だけでも改修すべきとし、回収を開始<br> その直後、監視科数体が周りを取り囲み、センサーのついた触手を這いずり回らせる行動をとり始めるが、やはり妨害はせず<br> 12時 …国連による公式発表開始、瞬間視聴率全世界平均89,9%<br> その内容はEOLTがいまだこちらの電波放送を傍受していることから、内容・量ともに貧弱なものであり<br> 好戦的な内容や、EOLT側が警戒するような内容の発言をすべてカットされていたなど<br> 経過報告の延長線上のものでしかなかったが<br> 隠蔽され続けてきた非常に貴重な情報が数多く公表されたため<br> 多くの人々が待ちわびていたものであることには変わりなかった<br> 12時7分22秒 国連による公式発表が終了、平均視聴率79,6%<br> 最後に、マスコミによるデマ・流言の類があることが予測されるので、警戒するようにとの呼びかけが行われ、記者会見へ移行<br> <br> <a href="menu:935"><font color="#0000FF">935</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/24(土) 14:55:27 ID:???<br> <br> ・・・国連からの公式発表が始まるころ、「シェパード」実行部隊は血痕と、こびりついた肉片からサンプルを確保<br> それを持ち帰るべく、ヘリ部隊に回収を要請するが、応答せず<br> 残滓回収部隊に同行していた見慣れない服装の軍人と、白衣姿の人間数人のみが送られてくる<br> そして不穏な動きを見せ始めるが・・・<br> <br> <a href="menu:947"><font color="#0000FF">947</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:08:29 ID:???<br> ・・・EOLTと戦う上で最も気をつけること?<br> 気をつけることも何も、言える事といえばひとつしかないな<br> <br> EOLTと真っ向から戦うことなど、無謀なこと以外の何でもないということだよ<br> まして接近戦を挑めば、EOLTに勇敢にも挑戦した人間の五対は離れ離れになって宙を舞うだろう<br> <br> そう、25m以内の距離でEOLTと生身で対峙する事は、ほんの数秒後の“死”を意味する<br> 5秒以上、抗えることができれば幸運といっても良い<br> <br> ではどうするか、<br> 思いつくものといえば、遠距離から火力と物量で接近する前に押し潰してしまうか<br> 待ち伏せなどを使った奇襲攻撃で敵を十字砲火の中心におびき寄せ、圧倒的な火線で回避を許さないこと<br> おそらく、このどれかだろう<br> <br> <a href="menu:948"><font color="#0000FF">948</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:09:52 ID:???<br> <br> だが、そのどれもまず不可能だ<br> 遠距離から火力と物量で圧倒するも何も、圧倒できる物量と火力を確保することはまず無理だ<br> 時速100km以上で疾走し、2、30mm程度の砲では皮膚を破ることもできない防御力を持つ怪物が数百体でまとまって行動するんだ<br> 重砲弾や戦車砲弾で、機関銃のそれと同じほど濃密な弾幕を張れれば別だが<br> <br> 次に奇襲や不意討ちから包囲殲滅を行う戦法、これもだめだ<br> そもそも、奇襲をかけるということ自体が不可能に近い、わかるか?<br> よく知られているところでは、千里眼科はすべてを見通せる目で、ハンバーガーのカロリーから兵士の血中ヘモグロビン濃度まで何でもお見通し<br> そして、その神のような目の射程は数十km、もっと大雑把な情報ならば数百km彼方からでも把握できる<br> そしてそれは何らかの方法で前線にいるすべてのEOLTの知覚とリンクしているらしいことがわかっている<br> これだけで、もう戦術レベルで先手を取る見込みはないと思うだろう?<br> <br> そして、もっと規模の小さなレベルでの不意討ちなども無理だ<br> 千里眼科も、さすがにすべてを把握しているわけではないようであることは、分かっている<br> 現に映像を分析する過程で、事故に遭うEOLTがいることも事実だ<br> しかし、戦闘において、EOLTが“ドジ”を踏むところは報告されていない<br> 特に探査科においては、その優れた感覚器官で、地雷や壁の後ろに隠れた兵士、そういったものを見逃すことはまずない<br> 仮に、見逃してうっかり罠にかかり、人間の兵士に銃口を向けられたとしよう<br> それがどうしたかということだ、物陰に潜ませていられる兵力などせいぜい分隊程度、EOLTの前にはほぼ無力だ<br> 罠に掛けられ焦ったEOLTは全力で反撃を行うだろう、場合によっては2秒で全滅だ<br> <br> <a href="menu:949"><font color="#0000FF">949</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:10:40 ID:???<br> <br> EOLTを撃破できる事といえば<br> 偶然に近い形で運よく、対戦車火器や戦車砲弾がEOLTに命中するか<br> 近くで炸裂した砲爆弾の破片と爆風で致命傷を負ったり、急所に当たって即死したりする場合ぐらい<br> 奇跡的に歩兵部隊の重火器で撃破できることもあるだろうが、まずあり得ない<br> <br> まあ、死なない程度に頑張ってくれ、勝とうとか相手を殺そうとか、考えないほうがいい<br> <br> 無理だろうから<br> <br> ―――正午の国連公式発表後にて<br> BBCの問に答えるEIE本部職員<br> 時刻、誰が誰に聞いたものかは不明―――<br> <br> <a href="menu:950"><font color="#0000FF">950</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color= "#800080"><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:11:15 ID:???<br> <br></font></span>12時9分 「シェパード」実行部隊をプロジェクト「8920」実働部隊を支援するための捨て駒として使うことを決定<br> 海兵隊に直接、大統領からの通達があり「今しがたそちらに向かわせた隊の指揮官に全権を委託」するように命令<br> 偵察機の撮影した映像を分析した結果、トレントン郊外に数体、電脳科を確認<br> それらと接触する必要が出てきたために、急遽このような処置がとられることとなった<br> 採取したサンプルを受領し、ヘリの1機は帰等<br> 15分 各中隊を再配置し、目標が活動しているとの報告があった地下鉄駅周辺へと前進を開始<br> 22分 監視科および、興味を示した探査科の群れが同部隊を包囲<br> 交戦が開始されればものの数分で全滅することは目に見えており、発砲を厳禁<br> なお、EOLTが銃器で武装した人類側の兵士がこれだけに規模でテリトリーに侵入しているにもかかわらず、攻撃を仕掛けようとしないのは数少ない例であるが<br> 先の戦闘が発生する前では可能なことであったため、やはり、相当人類に対する警戒が薄れているものだと思われる<br> 24分 航空支援・兼・口封じのために、バージニア州ノーフォークに寄航中である空母「ハリー・S・トールマン」の艦載機を爆装させ、トレントンに向かわせる<br> だが、マンハッタン島事件の影響で、同艦との連絡はヘリに伝令を送ることによって行われる<br> <br> <a href="menu:951"><font color="#0000FF">951</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:11:57 ID:???<br> 39分 ロシア軍がボスペリパにて解剖を行ったEOLTの死体をモスクワへ一旦移送する決定を発表するが<br> 同地でより詳細な解剖等の作業を行った後、重要な情報は隠蔽し、残りの情報と体組織のサンプルをEIE本部へ移送するという意図があってのこと<br> 59分 地下鉄駅周辺に到着、海兵隊の各中隊は周辺の警戒として分散配置<br> 一個小隊を実働部隊に同行させ、地下鉄駅へと前進、途中すぐにでも同部隊を回収できるようにヘリ2機が上空待機<br> 1時13分 地下鉄駅正面入り口に到達、内部へ侵入、途中複数の追撃科と思われる固体を確認<br> 1時30分 半数を地上に残し地下鉄構内に侵入、構内は壁や天井が崩れ、横穴や竪穴が複数開けられており、内部には複数のEOLTが入り込んでいるのが確認される<br> 1時51分 構造体から伸びてきたと思われる横坑を確認、進入に成功<br> 2時 内部で動き回る探査科のほかに、青白い光に照らされている(一見、それ自体が発光しているように見えるが)電脳科を確認、接近<br> 以下の記録は同部隊がまとめた報告書の中身であるため、実際とは多少食い違う部分があることが予想される<br> <br> <a href="menu:953"><font color="#0000FF">953</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:14:20 ID:???<br> 27分 駅構内から脱出、同時に被験者1名が心臓発作で死亡し、もう1名も異常行動の末に、拳銃で自殺<br> 30分 駅から出て、近くの建物の屋上へと移動しようとするが、その途中にさらにもう1名の被験者も発狂<br> 携帯していた自動小銃で海兵隊員1名を射殺、その直後に近寄ってきていたEOLTを攻撃しようとしたところを、付近の隊員が射殺<br> 32分 さらにもう1名が発狂、携帯していたコンバットナイフを抜き取って自らの胸に突き立てる<br> 近くにいた研究員が阻止しようとしたが、目があった瞬間、数秒間見つめ続けるような状態が続き、研究員が失神<br> 直後に発狂している被験者は、手榴弾のピンを抜き取り数m離れた所で自爆<br> 海兵隊員2名と研究員1名が死亡、爆音を聞いた他の海兵隊員やEOLTが警戒態勢に入り、緊迫した空気が流れ始める<br> 35分 発狂した被験者と目を合わせ失神した研究員の意識が回復、同時に頭を壁に打ち付け始める<br> これを止めようとした実働部隊員を拳銃で射殺、それを見ていたEOLT監視科を銃撃しようとしたが、予測され同固体に惨殺される<br> それを目撃した海兵隊員はEOLTの攻撃と誤認し、銃撃を開始<br> 制止もむなしく、A中隊がEOLTとの交戦に突入、B・C・D各中隊もEOLTに包囲され始める<br> <br> <a href="menu:954"><font color="#0000FF">954</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:15:02 ID:???<br> 36分 実働部隊はヘリの待つ屋上へ到達<br> 同行していた海兵隊員を足止めに向かわせ、ヘリに乗り込むが、最後の被験者が異常行動を示す<br> 離陸途中、拳銃で研究員1名を殺害し、ヘリパイロットへ銃口を向けるが、即座に突き落とされ遺体は2機目のヘリのローターに粉砕される<br> 2機のヘリは離陸、被験者全員と多くの研究員を失ったが、わずかだが、貴重なデータを持ち帰ることには成功<br> 同時にEOLTによる一斉攻撃が始まり、海兵隊の各中隊は分断され混戦状態に突入<br> しかし、度重なる救援要請にもかかわらず、支援部隊はおろか、救援のヘリすら来ず<br> 40分 A中隊、駅前にて消滅、残りの各中隊も兵力の大半を失い始める<br> ヘリの帰等を支援する目的で、爆装した4機のF-15が地下鉄駅周辺に到着、気化爆弾を投下し、生き残った海兵隊員もろとも駅と残滓回収地点を爆撃<br> 支援よりは、サンプル回収とEOLTとのコンタクトの痕跡と海兵隊員への口封じが主な目的<br> 3時13分 ヘリはF-15に護衛されつつ、付近の公園に着陸し、積荷と乗員全員をあらかじめ待機させておいたトラックに乗り換えさせ<br> フォートフラッグへと向かう、支援部隊等の「シェパード」参加兵力も後退を開始<br> <br> <a href="menu:229"><font color="#0000FF">229</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/24(火) 18:05:24 ID:???<br> 4時 EOLT残滓回収作戦「シェパード」、および「プロジェクト8920」実働部隊の行動を隠蔽すべく、さまざまな工作活動が開始され<br> シェパード参加部隊には厳重な口封じと、一部関係者を“事故死”させることで済ませ、死亡した海兵隊は、輸送機の墜落で処理されたが<br> ロシア軍情報部は憶測の域を出ないものであるが、すでにこの動きを察知していたため、あまり意味のある工作とはいえなないだろう<br> 6時13分 ロシア軍、EOLTの死体を予定より早くモスクワへ移送させることを決定<br> 一連の戦闘によって、その戦力を著しく損耗し、地上軍にいたっては、部隊の7~8割を失ったロシア軍が、死体を確保し続けることが難しいと踏んだ政府の指示である<br> どちらにせよ、死体の移送が完了し、モスクワのEIE推進支部において、より詳細な解剖が行われれば、遺伝情報等の謎も解明されるものと思われる<br> 6時30分 議会の一部の人間に、「シェパード」実行の事実が漏洩する、政府は彼らを免職させる、ないし脅迫と多額の現金で口止めを行う事を決定、CIA、行動開始<br> 7時 EOLTの死体をヘリに積載し、モスクワへと向かう、護衛は最低限のもので、独立作戦支援任務師団「オドン」2個チーム30名のみ<br> 7時44分 アメリカ国防省、プロジェクト「8920」の実働部隊は編成したものの、本部設置は間に合っておらず、フランスで本部設置を急ぐ<br> IUEITA本部は、前作戦においての記録を米軍より受領、極秘裏に調査を開始する<br> 8時 米ロ両国の決議によりEOLTの個体数調査、および亜種の種数特定を開始、ロシア陸軍のヘリと米空軍の無人偵察機が行動開始準備<br> <br> <a href="menu:230"><font color="#0000FF">230</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/24(火) 18:06:05 ID:???<br> 9時 国連、多国籍軍編成を開始、すでにロシアは東欧諸国をはじめとした旧共産圏と、中国政府からの軍事支援と兵力の融通が行われており、急ぐ必要は無いが<br> アメリカ合衆国は、わずかな国連軍の支援を受けた以外、ほぼ単独でEOLTとの戦闘を続けており<br> すでに兵力的に見れば、すでに全滅に等しい被害をこうむったことを見かねての、ようやくの行動である<br> 北大西洋条約機構に加盟する政府に対し、参加を呼びかけたところ、イギリスに代表される13カ国が兵力派遣に同意、具体案検討開始<br> 10時 米国、世論調査を開始、EOLTへの国民感情を調査・集計する<br> 11時20分 ロシア連邦政府、欧州中距離核戦力削減交渉を一方的に破棄することを決定、各国へ通達すると同時に<br> 国連へ「核兵器をのぞく、戦略兵器所有の自由化と、軍事力削減条約の大半を破棄する」ことを要求する<br> 後者に対しては、議論と審議が必要とされたが、前者については、米国を除けば、声を大きく反対するものはなく<br> 逆に一部国家は全面的な支持を表明、戦略兵器の増強に自国も加わることを検討し始める<br> 11時30分 NATOでも、軍備補強計画の前進を急がせることを検討、このことには米国も支持を表明する<br> 42分 中東一部国家が、ロシアへの軍事支援を検討中との情報をCIAが手に入れる<br> 米国は、「一兵でも多くの兵力をそろえることが、目前の脅威に対抗するために必要」であると考える一方、増長するロシアへの懸念も隠せずにいた<br> <br> ――両大国の溝が深まることにより、人類側の団結は乱れ、さまざまな思惑が交差し始める、その一方<br> EOLTは人類社会や人そのものの脆さ、愚かさ、そういったものに強い興味と関心を持ち始め、行動する――<br> <br> <a href="menu:302"><font color="#0000FF">302</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名</font><font color= "#0000FF">無し上級大将</font><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/28(土) 16:28:37 ID:???<br> 24日 ・・・比較的、平凡な日々が戻ってきたように、多くの人間が感じていた<br> だが、それは所詮、次の戦いの前置きでしかなかったのだ…しかし、それに気づくことが出来た人間は、そう多くなかっただろう<br> 0時7分 NATO、軍備補強計画の前進を行うことで、各国が合意、ただし、これは本格的な協議を国内で行っておらず、国家の首脳部だけの独断の決定という色合いが強く<br> 若干の批判はあったものの、非常時であり、更には情報の多くがEOLTに筒抜けである今、決定を躊躇する時間は無いというのが現状であった<br> 0時30分 CIS軍、兵力増強を開始、同時にロシア陸軍再編計画を立案、検討開始<br> 1時 国連において、ひとつの提案がなされる、それは、誰もが思いつくであろう、単純で純粋な考えからくるものだった<br> 「人類の保有する軍事力を統合し、未曾有の脅威に対抗するための共同戦線を張る」というものである<br> しかし、あまりに規模が大きなものであるため、検討は一応行われるが、「大規模多国籍軍の編制」で片付けられてしまう<br> 2時 「大規模多国籍軍(Large-scale multinational force)」の編制を開始、NATO軍、欧州方面における大規模な駐屯地の設営を開始<br> 3時 「大規模多国籍軍」をアメリカ・ロシアの両国へ派遣する際に、アメリカへはイギリス経由、ロシアへは直接、部隊を向かわせることで、部隊の編成・配備を開始<br> ロシアへの軍事支援を行っている東欧諸国からなるCIS軍には、国連から「東欧諸国連合軍(East-European-countries Allied Forces)」略称「EECAF」の呼称が与えられる<br> 同軍は、中東諸国へ参戦を呼びかけつつ、大規模機甲部隊に続き、航空部隊を大量にロシア軍基地へ向かわせ始める<br> EECAFとロシア軍の装備は互換性が非常に高く、また、ソ連時代の名残もあり、連携についてはまったく問題が無く、部隊の統合はスムーズに行われている<br> <br> <a href="menu:303"><font color="#0000FF">303</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/28(土) 16:29:08 ID:???<br> 7時20分 国連内で現れ始めた、「人類軍の統一」を訴える動きをひとつにまとめるため<br> 「対EOLT世界規模軍事力統合計画(plan to carry out military strength integration of the global scale for EOLT)」略称CMSIGSEの立案を検討<br> ただし、あくまで“立案”検討の領域であり、実行は非常に困難とされ、当面はNATO軍とEECA軍のみで手が回らない状況が続くことが予想される<br> 8時30分 アンケートの集計が完了、ほぼ全世界の国営放送にて、この結果が発表される<br> アメリカ国民の大部分が好戦的な意見を示す一方、いまだ和平を望むものも少数派とは言えず、世論は混沌としている<br> 9時15分 ネット上での規制をさらに強化、EOLTに関する情報や思想を制限、数万に上るウェブ・サイトが削除される<br> 11時 「高ESP能力保持者によるEOLTの意図理解計画(The intention understanding plan of EOLT by the human being with high ESP capability)」略称IUEHBHECについて<br> 秘匿名称を与えられ、極秘裏に進行してきた本計画だが、予算や規模における問題が徐々に浮上し始める<br> これにより、プロジェクト「8920」は非人道的な実験などに活動を限定し、IUEHBHEC計画を本格的に始動する事を検討<br> ただし、これがEOLTに知れれば、何らかの対策を採ってくる可能性が高く、公にするには難しすぎるとの意見が強い<br> しかし、その一方で、多くの被験者を軍内部から選出、実験部隊の編成を行っているプロジェクト8920は、本部設置と同時に次の作戦の準備を整え始める・・・</p> <dl> <dt><a href="menu:430"><font color="#0000FF">430</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/05/06(日) 17:28:39 ID:???<br> 午後7時 国連にて、国連本部新設計画が立案される<br> ニューヨーク市がEOLTの巣窟となり、同時に国連本部も壊滅、多くの職員を失い、マンハッタン事件以来、ホットラインのみによって会合が行われてきたが<br> それももはや限界と言うのが現状であり、国連本部を新設することが急務となってきた<br> これにより国家間の連携が進めば、国連の承認をないがしろに進行している、大規模多国籍軍編制計画などを統合した<br> かつてない規模の国連軍を編制、人類の統一戦線を構築できることを期待した行動であり、それさえなければ、このことは見逃されていたと言うのが加盟国の見方<br> 10時20分 国連本部新設計画が満場一致で採択され、本格検討が開始される、候補先には韓国が浮上したが、すぐに潰されてしまい、議論は難航<br> 25日 この日より米軍内部で「EOLTに勝つことが出来ないのではないか」と言う恐怖と不安に駆られ、上官への反抗、脱走などの行為が多発<br> 午前9時40分 プロジェクト「8920」本部の設置が終了、実働部隊増強と被験者確保を急ぐ<br> 12時 国連にプロジェクト「8920」本部がひとつの案を提出、「被験者確保のための専門機関」設置というものである<br> 午後2時 上記の案をアメリカ国防総省が出し、大統領の承認を得たものであるとして国連に提出することで検討<br> 3時30分 ロシア、「ボストーク」計画を本格始動、本格とはいっても極秘裏に進行している計画であり、表立った動きはほとんど無し<br> ただし、マンハッタン島事件以来、情報漏洩の危険性は極度に低下しているため、予算や人材等の融通においてはある程度大胆な動きを見せる<br> その代表例としては、EIE所属の日本人数名をスカウト、同計画への参加を求めたことが挙げられる<br> <br> 詳細時刻不明・・・プロジェクト「8920」からの発案について、ホワイトハウスで本格検討<br> 閣議出席者は合衆国大統領以下、政治関係者と軍関係者数名、EIE職員3名とIUEITA職員2名、なお後者2つの組織の人間はプロジェクト「8920」関係者</dt> <dt><a href="menu:449"><font color="#0000FF"><br> 449</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/07(月) 04:04:13 ID:???<br> <br> 「―こちらヴェクター、“積荷“を運んできた、どうぞ―」<br> 「―こちら管制塔、着陸の許可はまだ出来ない、もうしばらく上空で待機しろ―」<br> 「―了解―」<br> 乗員席で交わされる会話の音量は高く、積荷こと乗客たちの耳でも容易に聞き取ることが出来た<br> 乗員の会話を反芻した一人が愉快そうに声を上げる<br> 「積荷呼ばわりか、嫌われてるんですかね、私たち」<br> 「嫌われていない方がおかしいんじゃなくって?…私たちの都合でわざわざここまでのことをしてもらっているんだもの」<br> 皮肉を言い、どこか毒のある笑い声をこだまさせる女の白衣の胸には、IUEITA職員であることを現すプレート、襟元にはP8920の刺繍<br> 「別に私の案ではなくて、其方の方の発案じゃないですか」<br> 反対側の座席で足を組み、めがねの位置を直しているスーツ姿の男にも同じ刺繍が施され、EIE職員であることを表すプレートが付いていた<br> 「あら、あなただって、この案には賛成なんでしょう?」<br> 「こちらだって得をしますからね、被験者集めの特殊機関、EIEの方でもいずれ需要が出てくるはずですから」<br> 「だったらいいじゃない、EIEとIUEITAの同意があって出された案となれば、プロジェクト8920の発案とするより、向こうも首を縦に振りやすいわ」<br> ここまで喋ってみて、何かに気が付いたように白衣の女は表情をこわばらせる<br> 「しかし、安っぽい判断基準よねぇ…」<br> 自分の目を見て話していないことから、この嫌味が、独り言の類であることは分かっていたが、スーツ姿の男は低くうなずいた<br> 「…まったくです」<br> 会話が途切れると同時に、ローターが空気を切り裂く音が、何の障害もなしに聴覚神経を刺激しだしたので<br> 両者ともに、胸のポケットの中からイヤホンを引っ張り出して、それを耳に詰め込み、センの代わりにして虚空を眺め始めた…</dt> <dt><a href="menu:600"><font color="#0000FF"><br> 600</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/13(日) 03:32:52 ID:??? <br> ――ホワイトハウスの中、大統領の執務室では、急な来客に備えるために数少ないEOLTに関する資料に、必死で目を通す政治家たちが居た<br> 内容が理解できるものも出来ないものも、少なすぎる情報から出来る限りのことを読み取ろうとしていたようだった<br> 「…ああ、最後の15ページに載ってる写真、これって焼き増しできないか?ちょうどよさそう…」<br> 「そんなことはいい、この資料は何を意味していて、この報告書は何を伝えたいんだね、補佐官!」<br> 「私に言われても…国務省の報道官が国連公式発表の際に書いた原稿、あれより詳しい内容が」<br> 「詳しい資料が載っているせいで、余計に混乱するということもあるでしょう」<br> 「副大統領、君は口を開く前に、ここに来る連中への質問内容をまとめていてくれ」<br> 「はあ…」<br> 大統領の執務室から、隣の部屋へ移動してPCの電源を入れた頃に、大統領は資料を投げ出し、コーヒーの代わりを要求しつつ、愚痴をこぼし始める<br> 「まったく…我々素人にこういった予備知識を求める時点でおかしいと思うが?」<br> 「しかたありません、そうでないとここにくる人間の話を理解できませんから…」<br> 「そもそも補佐官、一体彼らは何の目的手ここまでやってくるのだ、彼らの出してきた案の採択だけならば、こちらの方で…」<br> 「いろいろと計画の進行状況についてでも話してくれるのでしょう…ほら、そのためにこの資料を取り寄せたのですし」<br> 補佐官は意味有りげに資料を胸の高さまで持ち上げながら、軽くそれを揺らしている<br> そのことが木に触ったらしく、大統領の顔が多少ゆがむが、代わりのコーヒーが運ばれてくると興味は其方に移ってしまったようだった<br></dt> <dt><a href="menu:601"><font color="#0000FF"><br> 601</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/13(日) 03:34:34 ID:???<br> <br> 「まったく、大学の講義でもあるまいし…奴らときたら、今までほぼ独断で活動を進めていながら、今になってこちらの都合も考えずに…」<br> 「マンハッタン島事件の時以来、ろくに打ち合わせも出来ないような状況ですし、しかたありませんよ」<br> 「まったく…」<br> コーヒーをすする彼の左手には、資料が握られていなかった<br> それは思考の放棄に他ならないことではあったが、思考を続けても彼を含む、ここの人間たちには何も理解できなかっただろう<br> そういったことを考えながら、大統領補佐官は、ついさっき話題に上がっていた“客人”たちの所在を確認しようと、携帯をいじり始める<br> 大統領はコーヒーの香りをかぐために、カップを顔に近づけ、鼻の周りで動かしている<br> ほんのひと時ではあったが、執務室に訪れていた沈黙はひとつの叫び声で破られた<br> 「大統領!いま、その客人の乗ったチヌークが上を飛んでいるそうです!」<br> 音高くドアを叩きつけるように開いた副大統領に驚いた彼の唯一の上司は、コーヒーを資料の上にこぼしてしまった責任を彼に擦り付け、喋り出した<br> 「よし、早く着陸許可を出せ…庭が汚れようがかまわん、野次馬をどけるためにここの警備を使え」<br> 「了解しました、大統領」<br> 補佐官が執務室の外に居る人間を連れて前庭に走っていき、それを見た副大統領も腰を上げ、歩き始める<br> 「ようやくか…」<br> 客人に対する備えのほかに、大統領補佐官と副大統領が迎えに出て行ったこともあり、大統領は自分の手でコーヒーをぬぐった…</dt> <dt><a href="menu:602"><font color="#0000FF"><br> 602</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/13(日) 03:37:59 ID:??? <br> <br> …ヘリの中、白衣姿の女と、メガネを掛けたスーツ姿の男は、イヤホンを使って何かに聞き入りつつ、のぞき窓から見える、眼科の光景に注視する<br> 急にあわただしく人々が動き回り始め、ホワイトハウス前の人だかりが押しのけられていく、それがヘリ着陸の準備であることは、一目で理解できた<br> それを見たスーツ姿の男はメガネの位置を直しつつ、微笑を浮かべる<br> 「いやぁ、ようやく降りる準備が出来たみたいですね…衛星通信が使えなからですかね?」<br> 「…」<br> 「…ところで、何を聞いているんですか、それ」<br> 「国防総省の盗聴…結構面白い会話が聞けるのよ」<br> 「それは向こうの専売特許だと思うんですが…あ、ちなみにどんな会話ですか?」<br> 「私たちの一人歩きが怖くて仕方ないらしいわ…ロシアのこともあるし、そうとう気がたってるみたいよ」<br> 「ありゃ、この次はモスクワの方に用事があったんですけど、ちょっと不味いですね」<br> 「あなたが心配してるようなことにならないために、今まで散々根回しをしてきたのよ、どうせ何も出来ないわ」<br> 白衣姿の女は、含み笑いを浮かべつつ、ポケットにイヤホンをしまう<br> その愉快そうな表情からみてとるに、おそらくはそれ以外の何らかの情報を手に入れたことは疑いようが無かった<br> だが、スーツ姿の男はそのことを追及しようとはせずに、再び窓の外を眺め始める<br> 「…遅いですね、もう降りても良いんじゃないですか?」<br> 「パイロットに催促しなさいよ」<br> 「パイロットの発音、知らないんですよねぇ…私」<br> 「英語で言えば自分に向けたものだと思うのが普通じゃなくって?」<br> 「それもそうですね…でも面倒なのでやめます」<br> 「英語は話せる?」<br> 愉快そうな笑みを浮かべつつ、小ばかにしたような口調で話しかける<br> その最中、ポケットの中に入れられた手は、何かを撫で回すようにして動いていた<br> 「失礼ですね、話せますとも」<br> 「ならいいけど、大統領の前で単語間違えないでね」<br> 「なお失礼ですね、これでも昔は外務省に居たんですよ?…第一、今は立派な国際公務員です」</dt> <dt><a href="menu:603"><font color="#0000FF"><br> 603</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/13(日) 03:38:59 ID:??? <br> <br> しゃべれない方がおかしい――<br> そう否定する彼の目線は、白衣姿の女が、そのポケットの中で弄くっている物体に向けられていた<br> M1911――護身用だろうが、腰のホルスターに官給品のベレッタが差し込まれているところを見ると、おそらくは私物だろう<br> 「それ、どこで買ったんですか?」<br> 「さあねぇ…元はと言えば私のものじゃないし」<br> 「まあ、どうでもいいんですがね、そんなことは…あ、地面につきましたね」<br> チヌークの足が地面に付くと同時に、パイロットが怒声をあげる<br> 「おい!のんびり座ってねぇでさっさと降りろ!大統領を待たせてるんだぞ!!」<br> 「さっさとって言われましてもねぇ…初めて言われましたよ、降りろなんて」<br> ネクタイを直しつつ反論するスーツ姿の男に、白衣の女も同調する<br> 「そもそも、大統領を待たせているのではなく、またされていたのは私たちよ?」<br> 「それ以前に、われわれが大統領を待たせて、どんな問題があるでしょうかね…状況的には、われわれの方が立場は上ですし」<br> 「これだから上下関係がすべてだと思ってる軍人って好きになれないはぁ…」<br> 何か言いたげヘリのパイロットを横目に、二人の話は進んでいく<br> 「まったくです…こんな馬鹿はほうっておいきましょう」<br> 「ええ、じゃあ行きましょうか、佐藤クン」<br> 佐藤と呼ばれたスーツ姿の男は、一人で先にヘリの外へ出て行く白衣姿の女の後姿から視線をずらし、同行している職員に指示を出す<br> 「はいはい…ああ、相原君、プロジェクターの操作とかは全部任せますので、こっちのしゃべるタイミングに合わせて下さいね」<br> 秘書スーツに身を包み、ノートパソコンを抱いている女性は、ゆっくりと腰を上げつつ声を出す<br> 「…分かりました」<br> 無表情に、脈動感に欠ける台詞をはく彼女の胸にも、EIE職員であることをあらわすプレート、襟にはP8920の刺繍が施されていた…<u><font color= "#0000FF">55</font></u>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:29:49 ID:???<br> ヘリの外では、数人のシークレット・サービスが周りを取り囲み、副大統領とホワイトハウスの職員が、乗客の前に立っていた<br> 風に巻き上げられた埃から目を守るために、手で半分覆われたその顔には、どこか意外そうな表情が浮かべられていた、そして当然の呟きがもれる<br> 「全員日本人?…EIEもIUEITAも日本人技術者が多いとは聞いていたが、彼らで全員なのか?」<br> 「そのはずです…少し以外ですが、仕事で問題を起こすこともないと思いますので、心配することもないかと――」<br> ヘリから降りてきた5人の日本人のうち、2人が白衣姿で残りはすべてスーツ姿、前者がIUEITA、後者がEIEの職員であった<br> そして、メガネで日の光を反射させているスーツ姿の男、佐藤は、出迎えの人間の話を見て、かすかに笑みを浮かべる<br> 「いやぁ、やっぱり嫌われてますねぇ…仕事がうまく出来なければ、ジャップとでも罵って来そうだ」<br> 「つまらない選民主義に染まった馬鹿は扱いにくいものよ…機能的に言えば、皮膚が黄色い方が、アルビノよりすぐれているのだけど…ねェ?」<br> ポケットに入れたてを片方だけ引きずり出し、風で乱れた髪をいじりながら返答する<br> 「そうですね…特に後者には全面的に同意します」<br> 「後者?…前者の方はどうなの?」<br> 「前者の方ですか…逆に固定概念や偏見の類しか持ち合わせていない人の場合、手のひらの上で転がしやすいですから、扱いにくいことはないですよ?」<br> 「私はそっちの方の仕事はあまりしないから」<br></dt> <dt><a href="menu:56"><font color="#0000FF"><br> 56</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:30:39 ID:??? <br> 「…お話を邪魔して悪いのですが、後ろが詰まっていますので、出来るだけ早く降りてください」<br> 一言だけ侘びををいい、再び歩き始める二人の目に入り込んできたのは、まず目の前に立つ副大統領以下数名だったが<br> その視線はすぐに、ホワイトハウスの窓から覗く、金髪の女のほうに移っていた<br> それが明らかに二人方をむいて手を振ってきていることに気が付いた白衣の女は、佐藤の方を向き直る――ちょうど手を振り替えしたところだった<br> 「…あら、あの娘は?」<br> 「俗に言う、にぱーっと笑うと言うやつです」<br> 「そうじゃなくて、どういう立場の人間で、あなたとどういう関係か」<br> 「大統領補佐官の娘です。…まあ、つまらない関係ですが、日本で色々とありましてね」<br> 顔に笑みを浮かべながら、皮肉っぽい口調で佐藤への問いかけを行う白衣の女の口調に対して、佐藤の返事のそれは至って冷淡なものだった<br> そのことに興味をそそられた彼女は挑発的な口調で、更に切り込みを掛ける<br> 「あの娘、ずいぶんとうれしそうに手を振ってるけど?」<br> 「お土産でも欲しがってるんじゃないですか?」<br> 今一度、深く追求しようかと思ったようだが、その思惑は外部からの攻撃で阻止された<br> 「失礼だが、君たちがEIE、およびIUEITA職員だな?…例のプロジェクトの関係者の?」<br> 副大統領の口調は感動に欠けるものだったが、妙な威圧感があった</dt> <dt><a href="menu:57"><font color="#0000FF"><br> 57</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:31:24 ID:??? <br> しかし、ここへ来た客人たちは、そんなものにプレッシャーを感じるタイプの人間ではなかった<br> 「そうよ、早いところ大統領の執務室へ案内して頂戴」<br> 「こちらも忙しいので、出来るだけ急いでくださいよ、何事も…」<br> 「ではこちらへMr,サトー…ああ、失礼だが、君は?――」<br> 外部とのやり取りで表へ顔を出すことが多かった佐藤は、一部の限られた人間にだけではあったが、多少顔が知れていた<br> しかし、その隣に居る女性は、彼も始めてみる顔だった、資料に載っていたのも見たことが無い<br> 「IUEITA推進本部所属一等技術員・兼・IUEHBHEC特派技術顧問の櫻井よ、よろしく」<br> 握手を求めてくることを期待していたのだろうか<br> 白衣のポケットに手を入れたまま、微笑みかけてくる彼女に、若干の不快感を示しつつも、目的地への先導を始める<br> 職員数名が、この二人にホワイトハウスの現状を説明しようとするが、それを部下と秘書に話すように指示をし、無駄話を再開する<br> 「なんだかのどが渇きましたねぇ…ああ、コーヒーかなんか飲みたい気分です」<br> 「ウォトカならここにあるわよ?」<br> 「ブランデーの方がいいですね…おまけに、それは余計にのどが渇きます」<br> 「じゃあ好きにして頂戴」<br> 差し出したウォトカを内ポケットに戻し、きびすを直して道を進んでいく<br> それに対して佐藤は、何かを探すように辺りを見回した後、近くを歩いている職員に対して質問する<br> 「ええと…すみません、自販機はどこにありますか?」<br> 「…」<br> 明らかにその質問に気づき、意味も理解したはずだが、彼の返答は無い<br> 「無いんですか?」<br> 「…」<br> それは、この沈黙が、否定を意味するものであると言う、極少の可能性を考慮した発言であったが、やはり返答は無い<br> その沈黙の意味について確信した佐藤は、別段気を落とした様子でもなく、にこやかに独り言をもらす<br> 「…嫌われてるなぁ」</dt> <dt><a href="menu:58"><font color="#0000FF"><br> <br> 58</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:33:43 ID:??? <br> <br> ・・・大統領執務室の内部はすっかりと片付けられ、プロジェクターなども、すでに配置されていた<br> そこに入ってきた人間は、もう少し散らかった部屋を想像していたのか、少し意外そうな顔をしていたものの<br> 大統領執務室に侵入することに対しては、なんら感慨は抱いていないといった様子に見えた<br> 特に佐藤のはいた台詞は極めつけとも言えたらしく、大統領以下、数名の人間は明らかに表情をゆがめた<br> 「すみません、缶コーヒーを買いたいんですけど、自販機ってどこですかね?」<br> 「黙れ、貴様の約分を果たすまではここから返さんぞ」<br> 怒声と思えないことも無いような力のこもった声で威嚇するのだが、やはり効果はない<br> 「約分といっても、別にここにきたのはこちらの意見を聞いてもらうためだけで、色々と説明してあげるのはサービスですから…」<br> 「佐藤クン、あまり正直なことは言わずに、接待だとでも思ってやりなさいよ」<br> 「まあ、そのつもりですがね…あ、そんなことより、送っておいた資料に書いておきましたよね、どれだけに規模の組織で、どれだけの――」<br> 「組織の規模については問題ない、後は貴様らで好きにしろ…ただ予算が問題だ、なにせ最低でも100億ドルとくる」<br> 「ああ、それですがね…そこに書いてあるのはあくまで組織立ち上げのための資金なんで、それとは別に活動資金を300億ドルほど…」<br> 「もう一度言え」<br> 「そこにかいてあるのは――」<br> 揚げ足を取るような回答に対する怒りを抑えつつ、大統領は再び質問しなおす<br> 「何ドルといった」</dt> <dt><a href="menu:59"><font color="#0000FF"><br> 59</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:34:56 ID:??? <br> 若干胸をそらせつつ、視線を上に向けて佐藤は答える<br> 「300億ドルほどお願いします…あ、キャッシュで頼みますよ」<br> 「…」<br> あまりに反応が遅いので、付け足しを行う<br> 「アメリカ人と違って、私は日本人ですからね…これでも出来るだけ少ない額にするよう、苦労して工面したんですよ?」<br> 「嫌味か?」<br> 「はぁ?」<br> 「それは私…いや、我々に対する嫌味か?」<br> 一瞬戸惑った佐藤だったが、再度問いかけを受けたことにより、またいつもの態度に戻った<br> 「それも若干」<br> 普通は大統領相手にはけないような台詞を、笑顔で言ってのけたことに、一部の人間は驚きを隠せないといった様子だった<br> 「貴様一体その資金を――っ!!」<br> 「人類のためです…ただでさえ、その軍事力の大半を失おうとしている合衆国が、いまさら軍備増強などに努めても遅い」<br> 静止を払いのけ、佐藤は大統領相手に説教を続ける<br> 「では、軍事力に関しては国連へ支援を仰ぐしかない、あなたたちは、その見返りとして、蓄えてきた莫大な資金と技術力を惜しむことなく放出すべきであるはず」<br> 胸をそらせ、かすかに見下すような表情をしていることに、幾人かが気づいたが、会話をさえぎる暇は無かった<br> 「まあ、全世界に資金・技術提供するのには無理がある…そこで我々ですよ、あなたたちが我々に資金提供をし、それによって得た成果を人類公共のものとする」<br> 笑みを浮かべながら、再び発言を続ける<br> 「当然、その資金を無駄にしないために、こちらも努力します…で、その努力の妨害をして欲しくないので、多少の独断行動は――」</dt> <dt><a href="menu:60"><font color="#0000FF"><br> 60</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:36:04 ID:??? <br> 予算審議の面で、この執務室に呼ばれていた財務長官は、当然のように激発し、口を挟む<br> 「独断行動だと?…それは今、貴様らがやっている事だろう!」<br> 「かまわん、許可する」<br> 「大統領!」<br> 「構わんと言っている!こうなる事が分かって、先の提案を受け入れたのだろうが!!」<br> 大統領の静止が、正しいことを言っているはずの彼にとっては、よほど不当なものに思えたのだろう、再び反論を試みる<br> 「しかし、アメリカ合衆国は――」<br> 声を荒げての反論だったが、大統領のそれは更に大きかった<br> 「いまさら遅い!これまで彼らが独立した行動が出来るようにしてきたのは、我々と国連だ!!」<br> 「…っ!!」<br> しばらく沈黙が続いた、佐藤は笑顔で、櫻井はつまらなそうに、その二人の秘書と部下は冷ややかにこのやり取りを見守っていた<br> 「お話が終わったようだけど、本題に移っていいかしら?」<br> 茶番を見るのに飽きたといった様子だったので、財務長官は更に不機嫌そうな顔をした<br> 「そうですね…相原君、お願いします」<br> 「…はい」<br> 照明が消えると同時にプロジェクターが起動し、部屋を照らす<br> 「じゃあ、始めましょうかね…何について、どこから話し始めましょうか?――」<br> 笑顔で言う佐藤のメガネは、プロジェクターの光を反射して光っていた</dt> <dt><a href="menu:61"><font color="#0000FF"><br> <br> 61</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:38:23 ID:??? <br> <br> 一瞬静まり返った室内だったが、佐藤の方から切り出した<br> 「漠然としたものでかまいませんよ?…資料を回しておいたので、具体的な質問が来ると思っていたんですが――」<br> 微笑みかけてくる佐藤に、少し戸惑いながら大統領が口を開く<br> 「…一番気になっているところだ、EOLTとは一体…何者なんだ?」<br> 「なるほど…確かに漠然としたものだ…」<br> プロジェクターから、火星にて確認された構造体が映し出される<br> 「EOLTはその名のとおり、地球外起源の生物です…しかし、その生態は、とても自然発生したものには思えません」<br> 「ここで言う自然発生というのは、野生の生物ではありえないと言う意味で、何らかの科学文明を持っている存在と言うことも意味しますが、その反面――」<br> 画像が月で確認された構造体と、そこから出現する物体に変わる<br> 「こうした構造の生物が、科学文明を持ち、人類のようにそれを扱いやすくするために進化した生物だとは、とても思えないと言う矛盾も示しています」<br> 次に現れたのは、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された写真であった<br> 「そのことから我々は、この生命体が“何らかの科学文明が意図的に誕生させたもの”であると言う仮説を立てました」<br> 再び画像は構造体のそれに変わった、今度は地球のものである<br> 「そして、ここでNASAが構造体を確認した初期より持っていた仮説“構造体が資源の最終・精製用のプラントである”というものが浮かび上がってきました」<br> 「つまり、EOLTとそれを運んできた構造体は、人類以外の科学文明が、資源最終の目的で送り込んできたユニットであることが想像されたわけです」<br> 何人かの人間が口を挟もうとするが、それより先に佐藤は話し出す<br> 「しかし、その資源採集の目的が依然として不明のままです、純粋に資源を採集し、持ち帰ることが目的なら簡単ですが…」</dt> <dt><a href="menu:62"><font color="#0000FF"><br> 62</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:39:12 ID:???</dt> <dt>画像が何かの論文の切り抜きに変わった<br> 「フォン・ノイマン型の資源採集用ユニットで、自分を複製するために資源採集機能が付いている場合、資源採集以外の目的があることになります」<br> 「これが人類など、自己以外の生命体ないし科学文明を発見したいという、彼らの生みの親の願望ならいいのですが、彼らは攻撃をしてきています」<br> 「ただ単に興味を持っただけで、いることが分かれば後はどうでもいいのか、攻撃されたから反撃しているだけなのかは分かりません」<br> 画像が映像に取って代わられた<br> …それはニューヨーク市の戦闘で、ちょうど中型の探査科が勢いよく米兵の群れに突っ込み、装甲車両を殴り飛ばし、遅れてきた触手で歩兵を細切れにしたところだった<br> 「ですが、このたとえが正確かは分かりませんが、明らかに戦闘については素人であることは間違いなさそうです」<br> 「用兵の仕方も、マンハッタン事件以後にとってつけた様に使われ始めたもので、それ以前はまるっきりでたらめでした」<br> 映像がヘリから撮影されたものに変わり、大統領以下、客人以外の全員がその映像を注視する<br> しかし、どこが用兵の仕方がでたらめなのか、それを見る人間には判断付かないようである<br> 「もっとも、圧倒的な戦闘能力の差と、こちら側の混乱等があり、EOLTは一方的に勝利しましたが…」<br> 次に映し出されたのは、二種類のEOLT…追跡・追撃科を遠距離から撮影したものを、画像処理したものらしい<br> 「最初の戦闘の後、やはり、とってつけたような自衛用個体が出現し始めたこともあり、おそらく、人類との戦争以外の目的で着たことは間違いないはずです」<br> また静止画像から動画へと変わり、観客の目を引く…どうやら、シベリア戦線のものらしい雪原での戦闘が写される<br> 「ただ、最大の問題は、“今もそうであるか“ということで…つまり、人類との戦争に勝つことが目的へと変わり、これから本格侵攻が始まるとも限らない」<br> プロジェクターから映し出される画像が、「7号資料」と書かれた画像に摩り替わり、回答が終了したことを告げる<br> 「まあ、そんなところです。地球生物とその文明の生殺与奪の権利を持っていることも間違いなさそうですね…えー、次の質問は?」</dt> <dt><a href="menu:63"><font color="#0000FF"><br> 63</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:40:57 ID:??? <br> 次の質問者は副大統領だった…重みのある声を上げ、佐藤に問いただす<br> 「やつらの生態についてはどの程度判明している?…たとえば、どの程度の休息が必要なのかといったことや、生殖の過程などだが…」<br> 「ああ、それでなんですけどね…休息――つまり睡眠を行っていることは確認されていないし、生殖活動を行う機能が備わっていないことも分かってます」<br> 画像はロシアで解剖されたEOLTの写真に変わる…画像には、「10号資料」の文字が書かれていた<br> 「そして、何らかの方法で、体外から食物を取り込む機能も確認されていません」<br> 「食物を摂取しないというのか!?…しかし、それで一体、どうやって活動を続けて――!」<br> 「食物を摂取しないというのは、自力でそれを行うことができない、という意味です…たぶん、構造体内で供給されるのでしょう」<br> 「その姿は確認されているのか?」<br> 「いいえ、まったく確認されていません、ですから完全な仮説です」<br> 画像がエネルギー補給のサイクルを表す図に変わる――ラテン語で書かれているため、一部の人間は読むことができなかったが<br> 「同じように、新陳代謝も行っていない…これはまだ健勝段階の情報ですが、いずれその成果をロシア政府が公表するでしょう」<br> 観客の数人が目を細める、ロシア政府が好評どころか、いまだ検証中の情報をどうやって知りえたのか…<br> 「あー…何かまず事を言いましたか――?」<br> かすかに佐藤が笑みを浮かべる…明らかに普段のそれとは異質なものだった、どこか不気味な――</dt> <dt><a href="menu:64"><font color="#0000FF"><br> <br> 64</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:41:42 ID:??? <br></dt> <dt><br> 「――そうか、いや、なんでもない…次の質問だが、やつらは資源採集用のユニットだといったな?―もしそうだとすれば、資源採集に向けての動きがあるはずだが?」<br> 「ええ、知ってのとおり、根を地中に張り巡らせ、主縦坑にあたる根の先端部分を、地球の核に向けて放ちました」<br> 一部観測データのグラフを添付したその想像図が映し出される<br> 「そこで問題なのが、“根“を地球の核にむけてはなった以外、目立った資源採集に向けての行動を示していたいと言うことです」<br> 構造体から延びる横坑の伸び方を、時間を早回しにして再生する<br> 「たしかに、坑道を張り巡らしてはいますが、採掘作業を行っているらしい情報は一切入っていない…理由は幾つか考えました」<br> 「一つ目は、目的となる資源があるところまで、その勢力圏、ないし根が伸びていないということ…これでEOLTが勢力圏を少しずつ伸ばしてきている理由が説明できます」<br> 「二つ目は、人類という脅威が目前にある今、資源の採集どころではないと判断しているためです…これが正しければ、自衛用個体の件も説明できます」<br> 「三つ目は、そもそも資源採集という目的そのものがないのか…」<br> 一息つく佐藤を見た後、行く認可の観客は顔を机に落とし、考え込む</dt> <dt><a href="menu:65"><font color="#0000FF"><br> 65</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:42:48 ID:??? <br> しかし、それ以上に思いつめた表情を見せている人物が、発言者である佐藤本人であることに気付く人間はそう多くはなかった<br> <br> ――あるいはこの仮説のうち、そのどれも違うのかもしれない…私たちが思いもよらない何か…そう、人間には考えもつかない何かが――<br> ――とにかく、物事を判断するには、あまりに時間も情報も少なすぎる…いずれ嫌でも気付く時が来るはずだ…そのときまで――<br> <br> 彼はそう思いつつ、口元に手を当てて考え込んでいた…<br> 桜井は彼を見て、意味ありげにかすかな笑みを浮かべ、ポケットの中のガバメントを弄り回し始める・・・<br> <u><font color="#0000FF"><br> 239</font></u>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/23(水) 04:45:16 ID:???</dt> <dt>――そのときまでに、出来るだけの事を済ませておくべきだろう…やれるときにやっておかなければ――<br> <br> 考え込む佐藤をよそに、政治家たちは噂話でもするかのように、仲間内で議論を始める<br> 大統領たちの会話にすら気を取られずに考え込む…櫻井はこの光景を見て、どこか奇妙な感覚を覚えずにはいられなかった<br> <br> ――間に合わなくなるかもしれない…これを長引かせるべきではないだろう――<br> <br> 国家の枠組みを超えて、権限と権力を獲得してしまい、国連の混乱に乗じてEIEとIUEITAに組織的な自由を与え<br> プロジェクト8920にいたっては、ほぼ独断で行動し、その成果を報告する義務すら怠っている<br> それはこの――つい数日前まで、国家公務員である意外、なんの政治的な権力も持っていなかった男によるものだ<br> もしかしたら、彼が今後の人類の命運を分けるような行動をとるかもしれない…櫻井はそう考えていた<br> 肝心の彼――佐藤は、いまだ結論を出せずに居る…<br> <br> ――もしかしたら、勝つことは出来ずとも、人類が当面の目的を達成できるかもしれない…問題なのは、3つのうちどれになるか――<br> <br> ・・・佐藤は腕をポケットに戻し、それを見た相原がプロジェクターを再び起動する<br> <br> 「それじゃあ、次は何を話せば?」<br></dt> <dt><a href="menu:764"><font color="#0000FF"><br> 764</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:41:30 ID:??? <br> ・・・会議(?)の終結は意外にも早かった<br> 大統領以下数名の出席者が国防省に呼び出されたためで、連絡が入ってからほんの数分でほぼ全員が引き払ってしまった…<br> 会話から察するに、どうやら海兵隊予備役の全面召集において、何らかの問題が発生したらしい<br> 置いてきぼりを食らわされた来客の面々は、大統領執務室内に留まる目的を失ったため、荷物をまとめると、早々にその部屋を後にしていった<br> ただ、その来客の面々にまったく動揺が無いのは職業病か、ただ単純に性格の問題なのか、それとも…<br> 「いやいや、ここまでの扱いを受けるとは思いませんでした」<br> 佐藤は、やはりうれしそうに微笑を浮かべながら喋る…その微笑が何を意味するのかはわからないが、同じく悪意の類はまったく感じられない<br> 「…わかりきっていたことでは?」<br> 隣でノートパソコンを持ち、無表情のままたたずんでいる秘書スーツを着た女性が、何か不自然なものでも見るかのような表情で声を出す<br> 見下しているような態度といえなくも無いが、悪意のこもったものではなく、何か別なものを感じさせた<br> しかし、上司に対しての口の聞き方として問題があることは事実なので、向かい合う位置にいた半白の頭をした男が静止に入る<br> 「…相原君」<br> 「そもそも、歓迎される立場にはいませんし」<br> 「相原君!」<br> 多少声を荒げ始めたその半白の頭の男に対して、佐藤が見かねたように反応する<br> 「あぁ、いいです、いいです…別にかまいません」<br> 「は、はぁ…」 <br>  <br> <br> <a href="menu:765"><font color="#0000FF">765</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:44:05 ID:???</dt> <dt>佐藤の反応にしっくり来ないものを感じながらも、姿勢を正して引き下がる<br> その反応の仕方と動きからは、元は軍に在籍していたであろうことをほかの一部の目撃者たちは感じ取った――おそらくは日本国自衛隊(JSDF)<br> 脇の下には、ほんの僅かだが膨らみがあり、何かが垂れ下がっているように見えた…拳銃の類だろう<br> 「ところで、この部屋は盗聴されてますかね?」<br> 「問題ありません」<br> ポケットに手を入れたまま前かがみになって部屋を見回す佐藤への返答は冷淡なものだったが、本人にそれを気にしている様子は無かった<br> 「では国際電話で海上幕僚長に連絡を取って下さい」<br> 「吉川さんですか…用件は?」<br> 「直接話しますから繋がったら変わってください」<br> <br> <br> <a href="menu:766"><font color="#0000FF">766</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:45:34 ID:??? <br> <br> 国際電話――マンハッタン事件以来、通信衛星がほぼ制御不能に陥り、国際電話の類は一時的に使用不能に陥ったが、回線が破壊されたわけでもなく<br> 海底ケーブルに頼るほか無くなっていたものの、通話不能ということにはなっていないため、現在でも利用は継続されている<br> もっとも、料金等に変わりは無く、安否確認のために合衆国とロシアへの通信が一時的に増えた以外、通話量に変化は無いが<br> 「どちら様ですか…」<br> 電話の向こうの声を中継する相原の声は、相変わらず冷静というよりも、感情の起伏云々をつかさどる脳の部位に<br> 何らかの障害を持っているのではないかと思わせるほど、無感動な…少なくとも、ただ単に職業病ともいえないものであることは感じさせた<br> 「えーと…佐藤です」<br> 「わかりました」<br> 電話にその言葉を伝えた直後に会話が途切れ、相原が沈黙しているところから、相手の急激な反応の変化が見て取れた<br> 数瞬の後、電話の向こうから応答があり、本人が出るようにとの指示を受け、佐藤が眼鏡の位置を直しつつ、交代する<br> 「どうも…」<br> 佐藤は相変わらず笑顔でいるものの、電話に向かって第一声を発した瞬間、表情が微妙な変化を見せたことには、誰も気がつかなかっただろう<br> 「―佐藤君…久しぶりだな―」<br> 「ええ、5年ぶりですねぇ…随分と昇進なさったようで、あの時の彼方はまだ三佐だった」<br> 「―いや、結局は君の立場のほうが上だ、凡人の限界というかな…それで、用件は何だ?―」<br> 「DDH…ヘリコプター搭載護衛艦を一隻、貸して貰いたいんですが」</dt> <dt><a href="menu:767"><font color="#0000FF"><br> <br> 767</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:46:25 ID:???</dt> <dt>「―DDH?ただでさえ希少価値の高い船だ、そう簡単には動かせんぞ―」<br> 声を大きくする海上幕僚長に対し、佐藤はいたって冷淡に対応する<br> 「総理には話をつけてありますし、今までにも日本人技術・研究者の派遣はありました。EOLTの調査・監視のための自衛隊派遣もそれほど反発を受けないでしょう」<br> 「―国民感情の点は問題ない、報道規制を行っているのだしな…ただ、米国政府は?」<br> 佐藤は何かを思い浮かべるような表情をした後、また笑顔になり電話に向かう<br> 「それなら問題ありませんね、そちらは護衛艦を動かしてくれるだけで十分です。後は人を殺そうが何をしようが、私の仕事ですから」<br> 軽い笑い声を上げながらの発言とは思えなかったが、電話の向こうの反応も、その点については言及しようとしなかった<br> 「…壊さんでくれよ」<br> 「ああ、その点は大丈夫です。今度は壊さないように使いますから」<br> 笑顔でそういったせりふをはいているところを、第三者が見れば、子供が玩具の貸し借りでもしているかのように思っただろう<br> 事実、佐藤からしてみれば、その程度のものなのかもしれないが――それにしてはあまりに高級なものだ<br> 「お前のことだ、相手は人間だろう?」<br> 「人聞きが悪いですねぇ、人類のため…EOLTに勝つために、人間と戦うんです」<br> EOLTに勝つ――この“勝つ”という言葉にはいったいどのような意味があったのか、それを聞くものにはほとんど理解できなかった<br> EIEもIUEITAもプロジェクト8920も、すべて一貫性があるように見えてないものだ<br> いったい、誰が何のためにどのような行動を起こしているのか、把握が困難なほどに状況は混沌としている<br> 佐藤の行動についても例外ではなく、一見すると前途の組織のために動いているようだが<br> すでに一人歩きをし始めている同組織の主導権を手に入れつつある佐藤が、ほぼ自由意志で動いていることから考えれば、何らかの思惑があると見ても間違いないだろう</dt> <dt><a href="menu:768"><font color="#0000FF"><br> <br> 768</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:47:33 ID:???</dt> <dt>「―…まあいい、検討してみる。用意が出来次第、こちらから連絡しよう―」<br> もっとも、その思惑が表面化し佐藤が完全に独自の行動を開始するには、相当な時間の経過と状況の変化が不可欠だろうと思われた<br> 「よろしくお願いしますよ」<br> 現に、今のところ彼は、EIE本部所属の職員であり、プロジェクト8920に関わっているという他は、特別な人間という訳ではなく<br> 政府の意思や政治の動向、そういったものに左右される哀れな技術・研究者、そのうちの一人でしかない<br> 「―ああ―」<br> 立場的には合衆国大統領より上であっても、政治家たちがその気になれば彼程度の存在は簡単につぶせてしまうはずだろう<br> 少なくともそう思って間違いないはずだ、まだ始まってから数日…問題なのは、この戦いが長引いてしまったとき、どうなってしまうのか<br> 彼は明らかにその時の為の布石をまいている…戦いが長引き、何か行動を起こさなければならなくなったときの為の布石を…<br> 「それじゃまた」<br> 携帯を閉じる音を聞いたときに、その通話を隣で眺めていた櫻井は、自分が人差し指の第二間接にあたる部分の手袋をかみ締めているのに気づいて、あわてて姿勢を正す<br> ――考えすぎなのかもしれないが、自分もいずれ同じことをするはずだ…でも何のために、なぜ私が…?<br> そう考えていくとある疑問に落ち着く、彼はなぜ、何のために、何をしようとしている?…なぜ彼でないといけない?<br> まだ人類救済のための特殊機関だとかの類は立ち上がっていない、あったとしても、計画の段階であるはずだ、彼が関わっているはずもない<br> 仮に知っていたとしても、なぜ布石を撒く必要がある?彼がそんなことをする必要は無いはずなのに…――<br> 釈然としない思いを抱えつつも、櫻井は思考を中断する、無駄な時間と解釈したためだろうか、それとも彼女なりの結論を見出したからだろうか…<br> それを不審そうな顔で眺める相原はいったん佐藤を振り返るが、何も考えていないように、執務室の壁にかけてあるカレンダーに見入っている<br> どこまでが正しい評価で、どこからが過大評価なのか検討もつかない男だが、彼女にはむしろ過小評価している可能性すら感じさせた<br> どちらにせよ、この戦いが本格化するまで、その本性を垣間見ることも無理そうではあったが</dt> <dt><a href="menu:769"><font color="#0000FF"><br> <br> 769</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:49:20 ID:???</dt> <dt>「…これからどうしますか?」<br> 「そうですねぇ…まあ、しばらく時間をつぶしてから国防総省にいきますか…他にやることも無いですし、モスクワへ飛ぶには時間も無い」<br> 「そうね…どうせお呼びがかかるでしょうし」<br> 相原の問いに対する佐藤の返答は、特に考えていなかったと言わんばかりの曖昧なものだったが、櫻井の同意もあるので<br> 他にこれからの行動を左右する人物もいなくなり、相原はヘリの手配を始める<br> 「きっと今頃血が上って腫れ上がった頭を抱えているはずです…懸賞が出るわけでもないのに難解なパズルを解く思いのはずですから」<br> ヘリの爆音に振り向きつつ、ネクタイの位置を直す佐藤から笑顔が消える<br> 「あ、よく考えたら当分の間は日本に帰れませんねぇ…」<br> 「ゴールデンタイムを当分見逃すことになりますね」<br> 珍しく、佐藤の独り言に対して同意をしてきた相原だが、表情に変化は無い<br> 「そうですねぇ…ネットに転がっているアニメは画質が悪くて、とてもとても」<br> 「誰もアニメとは言っていませんが…」<br> 普通なら笑い声のひとつでも上がりそうなものだが、やはり表情一つ変えない…<br> 慣れている人間でなければ、逆に険悪な雰囲気になってしまうところだが、やはりそれを気にする人間はこのメンバーにいないらしい<br> 今までのやり取りを眺めていたホワイトハウスの職員は、「なぜこんな連中が…」という疑問に駆られながらも、声に出せずにいた<br> <br> <a href="menu:771"><font color="#0000FF">771</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:52:43 ID:??? <br> 27日 ・・・この日、世界経済は大恐慌時を上回る不況に陥ったことが判明、マンハッタン事件後の貿易の破綻等が主な原因とされる<br> 午前1時 米軍、大統領以下政治関係者との会合を進め、海兵隊予備役総数40,000名の全面召集し、第4海兵遠征軍編制を開始することを決定<br> 来るべきEOLTの南下、ないし北上進攻の阻止、およびニューヨーク市の封鎖を目的とした任務に当たらせるためではあるが<br> 一部、ロシア軍の構造体突入作戦に対抗し、構造体への侵攻、つまりニューヨーク市を構成する島々への着上陸を目的とした配備との見方もある<br> 5時50分 ロシアにおけるEOLT個体数調査の集計が完了、若干の個体数増加以外、総数に変化はほとんど無いものの<br> 各科が占める割合が10~15%と大きく変化し、大型種の減少に伴い、小・中型種が増加していることが判明<br> また、複数の亜種が出現していることも確認された、その種数は計7種<br> うちの2種は触手が生えている位置が、小型種でありながら中型と同じなどの変化が合ったが、その他は大きな構造の変化は無く、色や突起物腕の長さなどに変化程度<br> <br> なお、突然空中で爆発するという、不可解な事故によって陸軍のヘリ2機が失われているものの、調査等は行えず、詳細は不明…</dt> <dt><a href="menu:252"><font color="#0000FF"><br> 252</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/07/15(日) 18:10:19 ID:???</dt> <dt>・・・なんとも言えない、重たい雰囲気に包まれる国防総省の一室では、合衆国の政治・軍部の首脳が一堂に会していた<br> 中央の席には大統領と副大統領、国防長官が座しているが、いずれも…特に大統領は不満そのものといった表情をしている<br> それも仕方が無いことだろう、ここ数日は容認しがたい事実の連続――彼からしてみれば――だったのだ<br> この決定に同意してはいるものの、アメリカ合衆国の頂点に君臨してきた彼に、現在の扱いは到底耐えられるものではない<br> いくら国連の後ろ盾が在ろうと、いかに先進国の合意の下に下された決断であろうと、それはアメリカ合衆国大統領にとって問題無いと言うだけだ<br> 国益…果ては人類の存亡という使命感を背負う政治家としてではなく、彼個人にとってすれば、あまりに理不尽なものだ<br> もっとも、彼も大統領まで上り詰めたほどの人物であり、この程度のことで不機嫌をばら撒くような人物ではない<br> 会議の行き詰まりと、それに伴って佐藤以下数名の手助けが必要であるということ<br> そして、連絡を取ろうとした矢先、この状況を予想していた佐藤本人から「今そちらに向かっている」という、挑発的内容の連絡が入り、それを増長してしまったためだ<br> もう、これ以上の刺激を受ければ、冷静な判断能力が失われるどころか、その権限を暴発させかねない――先の海兵隊の件もある<br> 彼を取り巻く首脳部の人間たちは、ここへ来る人間が、その“刺激”を与えないことを祈るばかりだった…<br> <br></dt> </dl> <p><a id="a253" name="a253"></a></p> <dl> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:253"><font color= "#0000FF">253</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/07/15(日) 18:10:55 ID:???<br></font><br> 「……ええ…何か、言いたいことは?」<br> 沈黙に耐えかねた様子の司会進行役の副大統領は口を開く<br> 答えるものが誰も居ないのは、佐藤の罪悪意識のかけらも無いような軽快な口調で、冗談交じりの話を聞いたためだろうか…気分を毒され、誰も喋らない<br> 椅子に腰を下ろし、姿勢を若干崩しつつ、副大統領は目線を落とす<br> 佐藤の名詞が一枚、資料のうちの一枚のA4のコピー用紙にクリップで留められている<br> 「嵐の前の静けさにならなければ良いが…」<br> 彼の呟きの語尾には、誰かの低い笑い声が重なった<br> 左右をゆっくりと見回してみると、かすかに笑みを浮かべている一人の人物が視界に入る<br> マイケル・W・ウェイン…この空軍長官の役職につく品のいい老紳士は、非常に有能な人物であることは間違いない<br> しかし、空気が読めないのか、それともわざとかき乱そうとしているのか、彼の言動はこういった場の雰囲気を悪化させることが多々ある<br> しかも、その悪化の度合いが非常に高く、声を低くすることもしないため、始末に終えない<br> 逆を言えば、それが無い彼は非常に理想的な人物になるのかもしれないが、そんな妄想の類は何の意味も無いだろう<br> それよりも、その横で涼しげな顔をして、資料をただ眺めているM・モズリー大将にこそ、自分を変える努力をしてほしかった<br> 空軍の参謀総長たる彼が、空軍長官の悪い癖の一つも指摘してやれないというのは、さすがに考え物だろう<br> <br> <a href="menu:254"><font color="#0000FF">254</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/07/15(日) 18:11:34 ID:???<br> 「はぁ……」<br> 空軍長官と参謀総長を交互に見たあと、溜息をつくのはジェームズ・T・コンウェイ海兵隊大将だった<br> 大統領の命令があれば、議会の承認を待たずに従う必要のある彼は、広意義で言えば、一連の混乱の被害者だろう<br> 自分は何も知らないうちに、合衆国首脳部は他国との協議の末、わけの分からない計画を推し進めていった<br> そして、彼は突然、海兵隊派遣の命令を受けた…その挙句、多くの部下を失う<br> しかもそれは、EOLTと公の場で交戦し「名誉の戦死を遂げた」のではなく、事実は完全に隠蔽された後<br> 極秘裏に記録を偽造、揚陸艦の沈没事故、という形で世間に公表される始末であった<br> とにかく、軍部の高官たちは、先に起きた二度の戦闘によって、自信やプライドの類をずたずたにされてしまった<br> それだけならまだしも、多大な被害を被り、その再建を行う程度の余裕しか無いという、絶望的な現状<br> 一部の…特に陸軍に代表される高官たちは、半ば放心状態でここに集まっている<br> <br></dt> <dt><a href="menu:255"><font color="#0000FF">255</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/07/15(日) 18:13:01 ID:???<br> 「それで、あの男はいつごろ到着する?」<br> 国防長官が口を開き、その引き締まった顔に似合わず、どこか優雅さすら感じさせる声を漏らす<br> その声とは裏腹に、憂鬱の虫でも抱えているような雰囲気漂ってくるので、少し不謹慎なたとえが頭に浮かんだが、すぐに振り払った<br> 「ヘリで向かっているそうですが、まあ、後数分でしょう」<br> やたら重たい口調でそう答える副官の表情からは、明らかな不信感が見て取れた<br> 無理も無い――そう思う副大統領は、もう一度目線を落とし、資料に混じっている“あの男”の名詞を見つめる<br> 顔写真の横には漢字で佐藤と刻まれ、その上にはローマ字で読み仮名がふられている<br> しかし、苗字だけで下の名前はどこにも記されていない…そのかわり、国際電話の番号が刻まれている<br> 「担当の事務官か…いい身分だな」<br> 低い笑い声が聞こえてくる…驚いたことに、その声の主は、彼の行動を注視していた大統領その人である<br> 不機嫌が爆発する寸前の彼が、それを誤魔化そうとしての笑みなのだろうが、ここまでくると、不気味に思えた<br> しかし、事実この担当事務官も半ばお飾りに過ぎず、佐藤は自分自身の考えで動き回っている<br> そんなものの為に、国連の予算をつぎ込んでいるのだ――もっとも、マンハッタン事件以来、独断で動かなければ迅速な行動は不可能になっていたが<br> <br> <a href="menu:256"><font color="#0000FF">256</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/07/15(日) 18:14:25 ID:???<br> 「本当に、ろくでもない事ばかり起こるな」<br> 手を目頭に当てつつ、そう呟くのは、ホワイトハウスで300億の資金を捻出するべく、膨大な資料と電話相手と格闘する財務長官であった<br> 最初は怒りに震えていたものの、今では山積みの仕事に血の気が引き、比較的落ち着いている<br> どこか笑える絵ではあったが、同じく国務を預かる副大統領として、彼に同情せずにはいられない<br> 「…あんなものさえ、降って来なければ、な」<br> そうだ――あんな物さえ落ちてこなければ、何も変わりはなかったはずなのだ<br> すべての元凶は、あの宇宙からの来訪者たちであり、誰のせいでもない…かといって、誰かに敵意や憎悪を向けなければやりきれない<br> 前線で戦う兵士たちならば、それはその“宇宙からの来訪者”だろうが、政治家たちはそうも行かない<br> むしろ、できることならば、平和的な共存関係を打ち立てたいと考えている…そういった感情は一切排除する必要がある<br> やはり、必然的にそれらの対象は、同じ人間ということになる<br> 「何も変わらんな…結局のところ」<br> 国防長官の声に、一瞬思考でも読まれたかのような驚きの表情を見せた<br> だが、口を開くことなく彼はまた視線だけを下に落とし、物思いにふけり始めた…<br></dt> <dt><a href="menu:688"><font color="#0000FF"><br> 688</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a><font color="#FF0000" size= "2">New!</font>投稿日:2007/12/02(日) 19:01:25 ID:???</strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></dt> <dt>9時20分 国連、プロジェクト「8920」進行中に失った“人員“の補充と部隊再編を名目とし、被験者収集のための機関立ち上げを検討<br> 同時に、IUEHBHECへの資金を増額、8920の独立が進む<br> 10時15分 米海軍省、ニューヨーク湾に展開中のハリー・S・トールマンの空母打撃群を構成する艦艇から、タイコンテロガ級巡洋艦3隻を抜粋し、EOLT観測の任に当てることを決定<br> 通信設備を整備し、いったん壊滅した通信・情報伝達網を回復させた後、対潜哨戒機、および偵察機と共に広域に展開を開始<br> 午後2時 NATO軍、イギリスとドイツにて駐屯地の基礎設営を完了し、編成を開始、カナダ軍は一足先に東海岸に兵力を配置<br> 7時23分 米海軍の巡洋艦3隻の広域展開が完了し、観測行動へ移行<br> 9時25分 CIS軍内部で新ロシア派とそうでない国家間での足並みがそろわず、ロシア軍による集権体制は整わず<br> 11時11分 米巡洋艦「レイテ・ガルフ(USS Leyte Gulf, CG-55)」が指定海域を航行中、海中で“何か”移動しているのを探知<br> ディッピングソナーの反響音から、海中を航行中のEOLTであると断定、追跡を開始するものの、原因不明の通信障害を受け、他艦艇との連携はとれず<br> 28日午前1時29分 通信回復、他艦艇との連絡を取り、目標の追跡を開始<br> しかし、その航行速度は非常に速く、巡洋艦レイテ・ガルフとの距離は縮まらず、他艦艇との合流はほぼ不可能とされ、単独で追跡を開始<br> 3時51分 ホワイトハウス=クレムリン間のホットラインが復旧<br> 4時 イギリス軍、保有する空母機動部隊のうち、二つをアメリカ合衆国へ派遣することを検討<br> この一部手続きを国連へ委託すると同時に、同じく軍事的な支援にあえぐロシア政府への対応に力を割く<br> 5時13分 追跡中のEOLTが方向転換、巡洋艦レイテ・ガルフとの距離は30kmまでに縮まる<br> 7時 ロシア政府、必要上の解剖は貴重な遺体を破損させる上、これ以上、単純な解剖によって判明することは少ないとの判断から<br> モスクワでの死体解剖作業を一時中断し、そこから抽出した各種試料の分析に移行し、各種機関へと配送<br> 9時41分 巡洋艦レイテ・ガルフ、構造体に接近しすぎた為、これ以上の目標追跡は困難と判断し、限界までの接近を開始するが、再び電波障害により通信途絶<br> <br> 詳細時刻不明・・・米巡洋艦「レイテ・ガルフ」がEOLT(千里眼科であると推定)と交戦、撃沈される</dt> </dl> <p><a href="menu:748"><font color="#0000FF">748</font></a>名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/12/24(月) 13:50:48 ID:???<br> 午後0時15分 EOLTの死体を保持した状態でタイコンテロガ級イージス巡洋艦二隻「サン・ジャシント」と「ノーマンディー」が艦隊に復帰<br> しかし、「レイテ・ガルフ」を失ったことによる動揺は大きく、以後、哨戒作戦は中止されることで海軍省と国防省は同意<br> この際に、政府や軍内部ですら、一部にしか知らされない情報のやり取り、密約等があったとされるが、黙認される<br> 2時35分 ロシア政府、軍内部で進行していた構造体突入作戦の立案について、公のものではないが全面的に容認<br> 各軍組織が行動を開始する<br> 9時 国連一部勢力、米ロ両国の動きを把握しきれず、独自の諜報機関の重要性を示唆<br> 同時に、国連の動きを支えてきた中国を除く常任理事国と日本の各政府の一部は、事実上の諜報機関として動きも兼ねていたこともあり、これを糾弾</p> <p><a id="a749" name="a749"></a></p> <dl> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:749"><font color= "#0000FF">749</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/12/24(月) 13:51:09 ID:???</font></dt> <dt>29日・・・この日、すでにマンハッタン事件によって受けた影響から軍上層部、および超国家的な情報伝達網などが回復<br> ただし、さまざまな情報統制等における利点から、政府末端組織や民間のそれには回復の兆しが見えず<br> 午前1時 「8920」の存在と動きをおぼろげながら把握したロシア政府は、軍の諜報機関を用いて情報収集を開始<br> また、「ボストーク計画」の進行のため、人材の収集を開始する<br> 6時20分 ニューヨーク封鎖部隊の一部が消息を絶つ<br> 一切の原因がつかめないこの事件に対する封鎖部隊司令部の判断は「リスクが大きいため、捜索は行わず」<br> 10時 米軍、構造体周辺の海上封鎖網を設置する方針で政府の承諾を得る<br> 米第一・第二艦隊の約半数の投入を検討するものの、通信・情報伝達網の回復は完全ではなく、構造体落下の影響で大西洋を徘徊する事となっていた一部艦艇の集結も遅れる<br> 午後3時40分 ロシア空軍の(戦略)爆撃機部隊のシベリア方面への集中配備の大半が完了<br> 各部隊司令部の移転や地上の支援部隊の移送に取り掛かる<br> 7時 ロシア軍の重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ("Tyazholiy Avionosnyy Kreyser (TAKR)"Адмирал Кузнецов)」を極東方面へ配備<br> 戦略ロケット軍のミサイル部隊と連携し、戦術・戦略核攻撃の準備を進める<br></dt> </dl>
<p class="MsoNormal" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span lang="en-us" style="font-size:10pt;color:#000000;font-family:Arial;" xml:lang="en-us"><font style="background-color:rgb(0,0,0);" face="MS 明朝" color="#FFFFFF"><span style="font-size:10pt;color:#ffffff;font-family:'MS 明朝';">仮に、ここからが第</span><span lang="en-us" style="font-size:10pt;color:#ffffff;font-family:Arial;" xml:lang="en-us">2</span><span style="font-size:10pt;color:#ffffff;font-family:'MS 明朝';">クール目とします(宣戦布告までで、第</span><span lang="en-us" style="font-size:10pt;color:#ffffff;font-family:Arial;" xml:lang="en-us">1</span><span style="font-size:10pt;color:#ffffff;font-family:'MS 明朝';">クールとすることも出来ますが、宣戦布告から続く戦闘も、第</span><span lang="en-us" style="font-size:10pt;color:#ffffff;font-family:Arial;" xml:lang="en-us">1</span><span style="font-size:10pt;color:#ffffff;font-family:'MS 明朝';">クールに含めます)</span></font></span></p> <p class="MsoNormal" style="margin:0mm 0mm 0pt;"><span style="font-size:10pt;color:#ffffff;font-family:'MS 明朝';">休戦<span style="font-size:10pt;color:#000000;font-family:'MS 明朝';"><font color="#FFFFFF">期間</font></span>に突入し、「国家間の謀略」「政治・軍事分野での動向の激化」など、人間側の動きがメインに書かれています(一部編集者の手で変換ミスが修正されています)</span></p> <hr /><p><span lang="en-us" style="font-size:10pt;color:#000000;font-family:Arial;" xml:lang="en-us"><font color="#FFFFFF"><font color="#0000FF">864</font>名前:<a href="mailto:sage"><font color="#0000FF"><strong>名無し上級大将</strong></font></a><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>[sage] 投稿日: 2007/03/09(金) 05:58:39 ID:???<br /> 3時11分 EOLTによるロシア軍への最後の攻撃が終わり、同軍の撤退はほぼ完了する<br /> ロシア全軍の撤退は完了し、東部に逃げた兵力はヤクーツクに、西部、および北部に逃れた残存兵力を西シベリア低地に集結させ、包囲網を再構築する<br /> 3時21分 米軍封鎖部隊もEOLTからの追撃を受けなくなる、すでに最長140km近く後退していたため、すでに構築していた陣地のほぼすべてを放棄<br /> 砲兵陣地すら破棄し、司令部の類も一部はEOLTの活動範囲内に飲まれる、被害が拡大することを防ぐため、ペンシルバニア州の全域に住民避難が行われる<br /> トレントンにある米軍封鎖部隊の総司令本部移転が開始される<br /> この拠点のわずか7km手間にすでにEOLTが迫っており、すでに敗残兵の集合地にすらなっていないという始末であった、移転先候補はトーバー南部<br /> 3時39分 第122自動車化狙撃師団、退却せず前線付近にてEOLTの体組織サンプル確保を開始<br /> 同師団は機甲部隊が消滅したヴィレェイスクの外れにある拠点の周囲を探索、哨戒を行う監視科と探査科を若干数補足<br /> ロシア軍の一部部隊は、この動きを確認し、その支援行動として退路の確保を行う、参加兵力は半壊した2個師団<br /> 55分 死亡、または負傷したEOLTを回収する探査科を確認、これの先を越すため、苦肉の策として部隊を分散、2個中隊一組で行動させる<br /> 4時22分 第2分隊が全滅したトーチカ群と戦車部隊に混じって倒れている、数体のEOLTを確認<br /> 4時30分 接近し、死亡確認を行う、うち数体は負傷しただけであることが判明し、数名の隊員が犠牲になる<br /> 4時35分 うち一体の完全な死亡を確認、損傷が激しいものの、付近の破片等を回収すれば復元も可能として回収作業開始<br /> 40分 第1分隊も死亡したEOLTを発見、損傷が少なく、腐敗なども進行しておらず、非常に良好な状態ではあったが<br /> 探査科の中型種であったため、地形の問題もあり輸送車両での牽引は不可能と断定、サンプルのみを持ち帰ることとする<br /></font></span><span lang="en-us" style="font-size:10pt;color:#000000;font-family:Arial;" xml:lang="en-us"><font color="#FFFFFF"><br /> 865 名前:<a href="mailto:sage"><font color="#0000FF"><strong>名無し上級大将</strong></font></a><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>[sage] 投稿日: 2007/03/09(金) 05:59:19 ID:???<br /> 50分 第2分隊、負傷したEOLTが付近の兵士数名を惨殺、これに応戦する形で制圧射撃を開始、同個体を殺害<br /> 52分 第2分隊に接近するEOLTの一団を補足、同分隊はEOLTの体組織の断片収集を中断し、撤収行動に移る<br /> 5時 第3分隊、EOLTの奇襲攻撃を受け壊滅、残った部隊は師団本部へと後退<br /> 20分 第2分隊の確保したEOLTのサンプルを確保するために、付近で負傷者救援に当たっていたヘリ(ミル Mi-8)4機を派遣<br /> 30分 第1分隊、探査科中型種の組織断片を採集中、猛スピードで接近するEOLTの一団を補足<br /> 偵察小隊にサンプルを預け、残りの部隊はEOLTの足止めを開始<br /> 33分 第2分隊、EOLTと交戦、敵主力は追撃科であり、同部隊はろくな足止めもできずに突破を許してしまい<br /> 数分後にはサンプルを所持した偵察小隊が攻撃を受け全滅、体組織断片の確保に失敗し、師団本部に撤収する<br /> 50分 第2分隊の確保したEOLTの死体をヘリが収容し、離陸、第2分隊は師団本部へと撤収、このとき、同分隊以外の全部隊が師団本部へと到達<br /> 55分 第2分隊がEOLTの奇襲を受ける、ヘリの一機も撃墜されるが、胴体部分を搭載したヘリは攻撃を受けずに無事離陸、ボスペリパへと向かう<br /> 6時 第112自動車化狙撃師団は当初の目的を達成、これ以上現在地にとどまるのは危険と判断し、残りの兵力を合流させ、西シベリア低地へと後退を開始するが<br /> 待ち伏せを行っていたEOLTの奇襲攻撃を受け、その戦力の大半を失う、師団本部を形成する一部部隊のみが生存<br /> 6時40分 退路を確保していた部隊の援護射撃を受けつつ、サンプルを失いながらも、貴重なデータを多数所持した第122自動車化狙撃師団は友軍陣地へと帰還<br /> 7時30分 ヘリ部隊も無事帰還、ボスペリパの第11放射線・化学・生物学防護旅団に持ち帰ったサンプルを受け渡す<br /></font></span><span lang="en-us" style="font-size:10pt;color:#000000;font-family:Arial;" xml:lang="en-us"><font color="#FFFFFF"><br /> 899 名前:<a href="mailto:sage"><font color="#0000FF"><strong>名無し上級大将</strong></font></a><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>[sage] 投稿日: 2007/03/18(日) 06:56:07 ID:???<br /> 7時43分 ドーバー南部への封鎖部隊総司令部の移転が本格的に始動<br /> 米軍封鎖部隊の再編を行うべく、各地に転々とした敗残兵と5割以上の被害を出した部隊同士の統合を行い、最低限の部隊としての能力の回復を図る<br /> 7時50分 25万人近い死者を出したロシア地上軍は、すでにその全兵力が失われたといっても過言ではない有様であったが<br /> 戦車・戦闘車両の多くは歩兵部隊と違い、迅速な撤退行動を行うことができたため、それほど多くを失ってはおらず<br /> その損失は戦車9千両近く(破棄されたものが大半)、装甲戦闘車両が約1万両、なお、戦闘ヘリは悪天候のため余り多くが出撃しておらず、損失は50機前後<br /> しかし、どちらにせよCIS地上軍の総力の半数を占めたロシア地上軍は崩壊、残された機甲部隊の多くも運用が困難なレベルであり<br /> さらに、稼動する車両数も全体の半数以下であるため、それらを一線級の戦力とするために、ロシアとその周辺の軍・工業施設はフル稼働を始める<br /> 8時 米露両国はもちろん、その周辺国(特に欧州方面)諸国は兵器・造兵廠に常識では考えられないような投資と要求を行い<br /> ロシアに代表される一部国ではGDP比にして、一時的ではあるが40%近い予算を軍需方面に回し、兵力の増強を急がせる<br /> 8時13分 ボスペリパにて、さまざまな危険性を考慮し、今の今まですべて安全確保に費やされていた、EOLTの解剖実験が開始される<br /> 8時50分 米軍情報部がロシア軍のEOLTの残滓確保という未確認情報を確認<br /> すぐさま同政府に問いただしを行い、EIEに全権を委託するように要求を突きつけるが、軍の独断だったこともあり、ロシア政府は何らかのデマ情報であると判断・説明<br /> 9時30分 米軍、偵察小隊をEOLTのテリトリーに接近させ、様子を見る<br /> 一部のEOLTは偵察部隊が行動を起こした瞬間、警戒態勢に入り、一定距離まで接近すると、監視科などのEOLTが行動を開始、これ以上は危険であるとし、後退<br /> 10時 米軍封鎖部隊、半ば部隊ごとに自力で各所に防御陣地の構築を開始<br /> 作業効率はお世辞にも高いとはいえなかったが、最低限のそれを作ることができることは可能であり、無いよりはある方がよいという考えで作業を続ける<br /></font></span><span lang="en-us" style="font-size:10pt;color:#000000;font-family:Arial;" xml:lang="en-us"><font color="#FFFFFF"><br /> 900 名前:<a href="mailto:sage"><font color="#0000FF"><strong>名無し上級大将</strong></font></a><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>[sage] 投稿日: 2007/03/18(日) 06:57:04 ID:???<br /> 11時10分 米政府もEOLTの残滓確保を行うことを検討<br /> ロシア軍のうわさを聞きたため、同政府は必要以上の焦りを見せ始め、国連の合意を待たずして計画を練り始める<br /> 12時 ロシア政府も、軍の一部部隊がEOLTの残滓を回収したと未確認情報を確認、これの確認を行う一方<br /> できることならば、自国のみの利益としたいという一部の思惑が交差し始める…<br /> 翌日2時23分 テレビ回線などを通じて、国連による、今までの出来事に関する公式発表を行うべく、協議を開始<br /> うすうす世界の人々は今起こっていることについて気づき始めており、デマ・流言の類を避ける必要があったのが主な要因<br /> 4時44分 ロシア連邦軍参謀本部を経由し、国防省に送られてきた数枚の書類と、それ護送して来た将校が「EOLTの解剖を行った」と語り<br /> 内容が虚報でないことを確認した国防省は、それを政府に公表、旋風をまきこす<br /><br /> 以下、その経過<br /><br /><a><font color="#0000FF">901</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/18(日) 06:58:28 ID:???<br /> ――EOLT解剖についての記録――<br /><br /> …EOLT解剖の執行者であり、責任者である私、キリル・トルプコ大尉が対象についてレポートします<br /> なお、これはまったく未知の生物を解剖した際のレポートであるため、著しくその信憑性に欠け<br /> 必要以上の考察や細かな記録等も要約したものであるということを、あらかじめ注意しておいてください<br /><br /> 「解剖体の詳細」<br /><br /> 解剖体の種別は「探査科」、確認番号4の小型種であり<br /> 体重:298,92kg 前兆;1338mm 全幅:1631mm(腕を広げた場合:2245mm) 全高:3019mm<br /> あの中央シベリア高原に放置されていたにもかかわらず、呼吸などの生態活動は停止しているが、体組織の大半がいまだ“生きており”<br /> さまざまな生体実験への応用が可能だろうと思われる<br /> 死亡(?)原因は不明だが、おそらくは頭部損傷からのショック死だと思われる<br /><br /> 損傷箇所は、先に述べた大口径徹甲弾の直撃によると思われる、頭部の左半分の欠如<br /> 榴弾の炸裂によるものと思われる、左腹部から下半身にかけての皮膚全体への爆風による痣(?)に似た傷とその破片によると思われる切り傷が十数か所<br /> その際に千切れたものと思われる触手が3本、うち1本は根元からで残りは根元から15cmほど離れたところから千切れている<br /> そして、99箇所に銃弾(おそらくは12,7mm弾)が当たったのだと思われる、環状の痕が確認されたが<br /> そのほか、目立った損傷は確認できない<br /><br /> 出血の度合いは不明だが、呼吸器系とは関係ない部位に、張りがなくなっているのが確認された<br /> 生前の姿は不明だが、他の同種の画像と比べると、確かに血色(?)なども悪く、それなりの出血があったのだろう<br /><br /> 腐敗等はまったく見られず、いたって健康体に見えなくもない<br /> また、体が若干動いていることなどから、やはり思考を司る脳が死滅しただけで、ほかの体を動かす脳の部分は生きており<br /> そのため、心臓など内臓の一部の活動、新陳代謝はいまだ行われているのだと思われる<br /><br /><a><font color="#0000FF">902</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/18(日) 07:00:13 ID:???<br /> ① EOLTの構成成分<br /><br /> 解剖の結果、彼らの体組織の主な構成成分は“珪素(炭化・有機珪素塩?)”であることが確認される<br /> これにより、否定されてきた珪素生物の存在を肯定することとなった<br /><br /> しかし、反応速度・バリエーションなど、生物を構成するにはまず向いているとは思えない珪素が主成分でありながら<br /> 炭素生物と劣らぬ反応速度を常温で維持することができる要因はまったく不明であり<br /> 我々の知らない、化学反応・変化によるものなのか、後に記述する未知の元素によるものなのかは不明だが<br /> 私の見る限り、このような原始・分子レベルでの複雑さを持つ生物が自然発生することは考えにくい<br /> EIEや国連の公式発表のように、これはまず間違いなく、何者かの意思によって作り出された生物と見ていいだろう<br /><br /> その他成分は、酸素・窒素・炭素など、炭素生物としての特性を持っている点はこれのためだろう<br /> それと、発見当初より囁かれていた、まったく未知の金属と合金が含まれていることが判明<br /> 体組織からこれらを抽出する試みを行ったが、はたせず<br /><br /> そのほかにも、いくつか未知の元素を見て取ることができるが、それが何の役割を持つものなのかは不明<br /> おそらく、珪素生物が生物として機能するためには必要不可欠なものなのだろう<br /><br /> ② 遺伝構造<br /> 遺伝構造については、不可解な点が多く、解析どころか、どのような遺伝方法なのかすら不明<br /> ここよりも大規模な施設で、さらに長い時間をかける必要があるだろう<br /><br /><a><font color="#0000FF">903</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/18(日) 07:01:50 ID:???<br /> ③ 体組織の構造<br /><br /> 「皮膚および皮下組織」<br /><br /> 体組織の構造について、まずは皮膚と皮下組織から見ていくこととする<br /> 皮膚の表面は、湿り気を帯びている一部の部位を除けば、乾燥し光沢のある爬虫類の皮のような突起がある<br /> そして、感覚毛が映えており、その長さは10cm程度、毛とは言っても生きているため、人間のそれとは違い、どちらかといえば触手に近い<br /> 硬いが、強く押してみると弾力があり、ハンマーなどでたたいてみてもダメージを受けた様子はない<br /> さらには、解剖用メスを突き立てても傷ひとつ付かず、のこぎりや斧の類を用いても、切れるどころか、裂ける事すらなかった<br /><br /> 強度実験として、解剖体に銃弾を撃ち込んで見るテストを行った<br /> 使用する銃はAK-74uで、5人の兵士による一斉射撃を、弾装内の弾薬を使い切るまで行ってみたが<br /> 皮膚と皮下組織はその衝撃を吸収し、運動エネルギーが完全に消滅した、銃弾が力なく床に散らばる結果となった<br /><br /> この後、野戦工兵から拝借させてもらった工作用の機器のいくつかを使い、胸部皮膚を切断することにし<br /> 数百kgから数tの圧力を皮膚の柔らかい部分にかけてみた、内部組織が損傷するかと危惧したが<br /> 切開が成功し、皮下組織の断面とその下の組織が姿を現したとき、損傷は見られなかった<br /><br /> そして、予想通り内臓の一部が活動を続けていることが一目でわかった<br /> 心臓と思しき器官が活動しているためか血管は脈打ち、筋肉はつつくと反応し、収縮することすらした、驚くべき生命力である<br /><br /> 皮下組織の構造は不明な点が多く、地球上のそれと似ているようで根本的な何かが違う、といったものを感じた<br /> 筋肉組織の密度は非常に高いが、一方で間に体液を流し込んで、やわらかく、密度を低くすることができる構造のようである<br /> これは、密度が高すぎるため、受け流せるような些細な衝撃でダメージを受けるのを防ぐ目的だと思われる<br /> 筋力の高さは言うまでもなく、人間の五体を引き裂くことはおろか、戦車の砲身を捻じ曲げることまでしてしまう腕と<br /> 自分の身長の何倍もの高さまで、体を宙に浮かせることができる足腰のばねのような筋肉は、人間のそれと比較にできないほどである<br /><br /> なお、この高い筋力をあれだけの筋肉の量で引き出すメカニズムは不明<br /><br /><a><font color="#0000FF">904</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/18(日) 07:02:41 ID:???<br /> 「骨組織」<br /><br /> そのまま切開を続け、じかに内蔵を確認しようともしたが、反射的に筋肉が収縮することもあり、肋骨に到達するのがやっとだった<br /> 骨組織について調べることにしたが、強度が高く、やはり鋭利な工具の先端から加えられる数tの圧力にすら悠々と耐え、わずかに傷が付く程度だった<br /> 骨は、ようやくの思いで削り取った試料を分析した結果、未知の金属と珪素から構成される合金であることが分かり<br /> モース硬度13の炭化珪素とほぼ同じ硬さであり、弾力などはそれと比べ物にものだった<br /> その強度は地球上の生物ではありえないものであり、予想されていた装甲車の装甲板並み以上である<br /><br /> この後、腹部の切開による内臓の解剖も試みたが、必要以上に貴重なサンプルを傷つけるのは得策とは言えないため、断念<br /><br /> 「触手」<br /><br /> 触手の構造の調査を始めたが、これも異常な強度を持っており、もはや皮膚の比ではなく、工作機器を使っても多少つぶれて痕が残る程度<br /> さらに、先端部分はモース硬度15以上のHk9600という、驚異的な硬度を持つ金属で、質量もかなりのものだった<br /> これだけの強度があれば装甲車や戦車の装甲を貫通することも容易であるだろう事が簡単に計算できる<br /> 死後硬直によって縮まった触手には、筋肉組織が触手それ自体や根元の部分に高い密度で凝縮されており<br /> それの急激な伸縮によって、相当なスピードで触手を鞭のように振り回すことや、突き立てることができるはずで、瞬間速度は時速1000km以上になると推定される<br /><br /> …大まかには以上のような内容であり<br /> このレポートが今後の対EOLTの各分野における及ぼした影響は非常に大きなものになるだろうと予想される<br /><br /><a><font color="#0000FF">925</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/23(金) 14:37:53 ID:???<br /> 5時 米軍部隊がEOLT残滓回収のための部隊編成を開始<br /> 予備役である第1軍所属の第158歩兵旅団を召集し、その任に当てることを検討するが、これは国連の目を欺くためのダミーであり<br /> 同師団の召集を議会で検討する間、大統領の命令で第1海兵師団所属の第11海兵連隊を緊急招集、作戦の立案を開始<br /> 6時 正午にて、国連が全世界に向けて公式発表を行うことを決定、このことをひとまず発表<br /> いち早く、公表される以上の情報を手に入れ、独占しようという思惑を持つマスメディアは、国連本部や米露両政府の政治中枢に多数の記者等を派遣<br /> そのような理由から、これから正午までの間、一部交通機関はパンク状態となる<br /> 7時13分 ロシア軍、EOLT捕獲と意思疎通のための特殊機関立ち上げを本格的に始動<br /> 計画名「ボストーク」、予算・資金の融通を開始、なお、国連その他機関に悟られることはもちろん<br /> EOLTに感づかれることを防ぐ目的で同計画は、わずかな人間にしか知らされずに進行、マンハッタン島事件の混乱もあり、情報の漏洩はありえないだろうとされる<br /> 7時24分 米海兵隊、秘密裏にカリフォルニア州からニュージャージー州へと移動を開始<br /> すでに州の多くの住民は避難を完了しており、同部隊は半ば公然と陣地設営を開始、ただし、EOLTに悟られるような行動は極力避けるように作戦を進行<br /> 8時 プロジェクト「8920」実行部隊編成の第1段階が終了、国防総省直轄の部隊としてノースカロライナ州フォートフラッグに本部を設置<br /> 米政府と軍が様々な手段を講じたため、完全な幽霊部隊となっており、部隊名等は一切定められなかった<br /> 8時22分 米海兵隊、残滓回収のための動きを進めるが<br /> 前線の観測班の報告によれば、数体の千里眼科がその行動を“眺めて“いる姿が確認されており、大統領も作戦の実行を躊躇しだす<br /> しかし、単にEOLT全体としての行動ではなく、一部千里眼科が興味を示して眺めているだけとの見方が強く、作戦の中止はされず<br /> 9時11分 残滓回収作戦を「シェパード」と呼称、ただこの呼び名は国防総省と軍上層部の一部の人間のみが使ったものであり、広くは用いられず<br /><br /> 9時33分 「シェパード」実行部隊の元に3機のヘリと数人のフランス人を含んだ見慣れない服装の軍人が送られてくる<br /><br /> ――ジャケットとベレー帽には「8920」という刺繍が施されているが・・・――<br /><br /><a><font color="#0000FF">934</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/24(土) 14:54:33 ID:???<br /> 10時 海兵隊によるEOLT残滓回収作戦が開始される<br /> ボルティモアに一旦集結した実行部隊は、4個中隊を編制しヘリに分乗させ、目的地であるトレントン郊外へと向かう<br /> 残りは機動車両や大型トラック等で回収部隊の後退を支援するべくフィラデルフィア郊外に待機<br /> 10時39分 回収部隊が目的地のトレントン郊外に到着<br /> 同地は戦車大隊が航空支援の下、EOLT探査科の群れと交戦した地域であり、EOLTの死体がある可能性が高いとされ<br /> そういった理由から、回収地点に定められたのだが、上空からは一切確認できず<br /> 10時47分 ヘリで飛行すれば、EOLTを刺激することになることは承知のうえでヘリボーンを行い、周辺の探索を開始<br /> 50分 A中隊が監視科と遭遇、1名が殺害されるもそれ以上の攻撃は受けず<br /> 11時23分 B・C中隊もEOLTと遭遇、基本的に監視科と騒ぎを聞きつけて寄り集まってきた探査科であり<br /> 監視科がわずかに確認されただけで、追跡・追撃科などの自衛用個体は出現していないことから<br /> EOLT側に回収部隊を攻撃しようという意思はないことが見て取れる<br /> 11時41分 これまで全力で死体の探索を続けるが、血痕(?)が残されているだけで、死体は確認できず<br /> 11時55分 わずかに肉片がビルの壁に付着した死体が置かれていた跡を発見<br /> この際、血痕からの血液(?)サンプルと付着している肉片だけでも改修すべきとし、回収を開始<br /> その直後、監視科数体が周りを取り囲み、センサーのついた触手を這いずり回らせる行動をとり始めるが、やはり妨害はせず<br /> 12時 …国連による公式発表開始、瞬間視聴率全世界平均89,9%<br /> その内容はEOLTがいまだこちらの電波放送を傍受していることから、内容・量ともに貧弱なものであり<br /> 好戦的な内容や、EOLT側が警戒するような内容の発言をすべてカットされていたなど<br /> 経過報告の延長線上のものでしかなかったが<br /> 隠蔽され続けてきた非常に貴重な情報が数多く公表されたため<br /> 多くの人々が待ちわびていたものであることには変わりなかった<br /> 12時7分22秒 国連による公式発表が終了、平均視聴率79,6%<br /> 最後に、マスコミによるデマ・流言の類があることが予測されるので、警戒するようにとの呼びかけが行われ、記者会見へ移行<br /><br /><a><font color="#0000FF">935</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/03/24(土) 14:55:27 ID:???<br /><br /> ・・・国連からの公式発表が始まるころ、「シェパード」実行部隊は血痕と、こびりついた肉片からサンプルを確保<br /> それを持ち帰るべく、ヘリ部隊に回収を要請するが、応答せず<br /> 残滓回収部隊に同行していた見慣れない服装の軍人と、白衣姿の人間数人のみが送られてくる<br /> そして不穏な動きを見せ始めるが・・・<br /><br /><a><font color="#0000FF">947</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:08:29 ID:???<br /> ・・・EOLTと戦う上で最も気をつけること?<br /> 気をつけることも何も、言える事といえばひとつしかないな<br /><br /> EOLTと真っ向から戦うことなど、無謀なこと以外の何でもないということだよ<br /> まして接近戦を挑めば、EOLTに勇敢にも挑戦した人間の五対は離れ離れになって宙を舞うだろう<br /><br /> そう、25m以内の距離でEOLTと生身で対峙する事は、ほんの数秒後の“死”を意味する<br /> 5秒以上、抗えることができれば幸運といっても良い<br /><br /> ではどうするか、<br /> 思いつくものといえば、遠距離から火力と物量で接近する前に押し潰してしまうか<br /> 待ち伏せなどを使った奇襲攻撃で敵を十字砲火の中心におびき寄せ、圧倒的な火線で回避を許さないこと<br /> おそらく、このどれかだろう<br /><br /><a><font color="#0000FF">948</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:09:52 ID:???<br /><br /> だが、そのどれもまず不可能だ<br /> 遠距離から火力と物量で圧倒するも何も、圧倒できる物量と火力を確保することはまず無理だ<br /> 時速100km以上で疾走し、2、30mm程度の砲では皮膚を破ることもできない防御力を持つ怪物が数百体でまとまって行動するんだ<br /> 重砲弾や戦車砲弾で、機関銃のそれと同じほど濃密な弾幕を張れれば別だが<br /><br /> 次に奇襲や不意討ちから包囲殲滅を行う戦法、これもだめだ<br /> そもそも、奇襲をかけるということ自体が不可能に近い、わかるか?<br /> よく知られているところでは、千里眼科はすべてを見通せる目で、ハンバーガーのカロリーから兵士の血中ヘモグロビン濃度まで何でもお見通し<br /> そして、その神のような目の射程は数十km、もっと大雑把な情報ならば数百km彼方からでも把握できる<br /> そしてそれは何らかの方法で前線にいるすべてのEOLTの知覚とリンクしているらしいことがわかっている<br /> これだけで、もう戦術レベルで先手を取る見込みはないと思うだろう?<br /><br /> そして、もっと規模の小さなレベルでの不意討ちなども無理だ<br /> 千里眼科も、さすがにすべてを把握しているわけではないようであることは、分かっている<br /> 現に映像を分析する過程で、事故に遭うEOLTがいることも事実だ<br /> しかし、戦闘において、EOLTが“ドジ”を踏むところは報告されていない<br /> 特に探査科においては、その優れた感覚器官で、地雷や壁の後ろに隠れた兵士、そういったものを見逃すことはまずない<br /> 仮に、見逃してうっかり罠にかかり、人間の兵士に銃口を向けられたとしよう<br /> それがどうしたかということだ、物陰に潜ませていられる兵力などせいぜい分隊程度、EOLTの前にはほぼ無力だ<br /> 罠に掛けられ焦ったEOLTは全力で反撃を行うだろう、場合によっては2秒で全滅だ<br /><br /><a><font color="#0000FF">949</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:10:40 ID:???<br /><br /> EOLTを撃破できる事といえば<br /> 偶然に近い形で運よく、対戦車火器や戦車砲弾がEOLTに命中するか<br /> 近くで炸裂した砲爆弾の破片と爆風で致命傷を負ったり、急所に当たって即死したりする場合ぐらい<br /> 奇跡的に歩兵部隊の重火器で撃破できることもあるだろうが、まずあり得ない<br /><br /> まあ、死なない程度に頑張ってくれ、勝とうとか相手を殺そうとか、考えないほうがいい<br /><br /> 無理だろうから<br /><br /> ―――正午の国連公式発表後にて<br /> BBCの問に答えるEIE本部職員<br /> 時刻、誰が誰に聞いたものかは不明―――<br /><br /><a><font color="#0000FF">950</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color="#800080"><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:11:15 ID:???<br /><br /></font></span>12時9分 「シェパード」実行部隊をプロジェクト「8920」実働部隊を支援するための捨て駒として使うことを決定<br /> 海兵隊に直接、大統領からの通達があり「今しがたそちらに向かわせた隊の指揮官に全権を委託」するように命令<br /> 偵察機の撮影した映像を分析した結果、トレントン郊外に数体、電脳科を確認<br /> それらと接触する必要が出てきたために、急遽このような処置がとられることとなった<br /> 採取したサンプルを受領し、ヘリの1機は帰等<br /> 15分 各中隊を再配置し、目標が活動しているとの報告があった地下鉄駅周辺へと前進を開始<br /> 22分 監視科および、興味を示した探査科の群れが同部隊を包囲<br /> 交戦が開始されればものの数分で全滅することは目に見えており、発砲を厳禁<br /> なお、EOLTが銃器で武装した人類側の兵士がこれだけに規模でテリトリーに侵入しているにもかかわらず、攻撃を仕掛けようとしないのは数少ない例であるが<br /> 先の戦闘が発生する前では可能なことであったため、やはり、相当人類に対する警戒が薄れているものだと思われる<br /> 24分 航空支援・兼・口封じのために、バージニア州ノーフォークに寄航中である空母「ハリー・S・トールマン」の艦載機を爆装させ、トレントンに向かわせる<br /> だが、マンハッタン島事件の影響で、同艦との連絡はヘリに伝令を送ることによって行われる<br /><br /><a><font color="#0000FF">951</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:11:57 ID:???<br /> 39分 ロシア軍がボスペリパにて解剖を行ったEOLTの死体をモスクワへ一旦移送する決定を発表するが<br /> 同地でより詳細な解剖等の作業を行った後、重要な情報は隠蔽し、残りの情報と体組織のサンプルをEIE本部へ移送するという意図があってのこと<br /> 59分 地下鉄駅周辺に到着、海兵隊の各中隊は周辺の警戒として分散配置<br /> 一個小隊を実働部隊に同行させ、地下鉄駅へと前進、途中すぐにでも同部隊を回収できるようにヘリ2機が上空待機<br /> 1時13分 地下鉄駅正面入り口に到達、内部へ侵入、途中複数の追撃科と思われる固体を確認<br /> 1時30分 半数を地上に残し地下鉄構内に侵入、構内は壁や天井が崩れ、横穴や竪穴が複数開けられており、内部には複数のEOLTが入り込んでいるのが確認される<br /> 1時51分 構造体から伸びてきたと思われる横坑を確認、進入に成功<br /> 2時 内部で動き回る探査科のほかに、青白い光に照らされている(一見、それ自体が発光しているように見えるが)電脳科を確認、接近<br /> 以下の記録は同部隊がまとめた報告書の中身であるため、実際とは多少食い違う部分があることが予想される<br /><br /><a><font color="#0000FF">953</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:14:20 ID:???<br /> 27分 駅構内から脱出、同時に被験者1名が心臓発作で死亡し、もう1名も異常行動の末に、拳銃で自殺<br /> 30分 駅から出て、近くの建物の屋上へと移動しようとするが、その途中にさらにもう1名の被験者も発狂<br /> 携帯していた自動小銃で海兵隊員1名を射殺、その直後に近寄ってきていたEOLTを攻撃しようとしたところを、付近の隊員が射殺<br /> 32分 さらにもう1名が発狂、携帯していたコンバットナイフを抜き取って自らの胸に突き立てる<br /> 近くにいた研究員が阻止しようとしたが、目があった瞬間、数秒間見つめ続けるような状態が続き、研究員が失神<br /> 直後に発狂している被験者は、手榴弾のピンを抜き取り数m離れた所で自爆<br /> 海兵隊員2名と研究員1名が死亡、爆音を聞いた他の海兵隊員やEOLTが警戒態勢に入り、緊迫した空気が流れ始める<br /> 35分 発狂した被験者と目を合わせ失神した研究員の意識が回復、同時に頭を壁に打ち付け始める<br /> これを止めようとした実働部隊員を拳銃で射殺、それを見ていたEOLT監視科を銃撃しようとしたが、予測され同固体に惨殺される<br /> それを目撃した海兵隊員はEOLTの攻撃と誤認し、銃撃を開始<br /> 制止もむなしく、A中隊がEOLTとの交戦に突入、B・C・D各中隊もEOLTに包囲され始める<br /><br /><a><font color="#0000FF">954</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/03(火) 16:15:02 ID:???<br /> 36分 実働部隊はヘリの待つ屋上へ到達<br /> 同行していた海兵隊員を足止めに向かわせ、ヘリに乗り込むが、最後の被験者が異常行動を示す<br /> 離陸途中、拳銃で研究員1名を殺害し、ヘリパイロットへ銃口を向けるが、即座に突き落とされ遺体は2機目のヘリのローターに粉砕される<br /> 2機のヘリは離陸、被験者全員と多くの研究員を失ったが、わずかだが、貴重なデータを持ち帰ることには成功<br /> 同時にEOLTによる一斉攻撃が始まり、海兵隊の各中隊は分断され混戦状態に突入<br /> しかし、度重なる救援要請にもかかわらず、支援部隊はおろか、救援のヘリすら来ず<br /> 40分 A中隊、駅前にて消滅、残りの各中隊も兵力の大半を失い始める<br /> ヘリの帰等を支援する目的で、爆装した4機のF-15が地下鉄駅周辺に到着、気化爆弾を投下し、生き残った海兵隊員もろとも駅と残滓回収地点を爆撃<br /> 支援よりは、サンプル回収とEOLTとのコンタクトの痕跡と海兵隊員への口封じが主な目的<br /> 3時13分 ヘリはF-15に護衛されつつ、付近の公園に着陸し、積荷と乗員全員をあらかじめ待機させておいたトラックに乗り換えさせ<br /> フォートフラッグへと向かう、支援部隊等の「シェパード」参加兵力も後退を開始<br /><br /><a><font color="#0000FF">229</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/24(火) 18:05:24 ID:???<br /> 4時 EOLT残滓回収作戦「シェパード」、および「プロジェクト8920」実働部隊の行動を隠蔽すべく、さまざまな工作活動が開始され<br /> シェパード参加部隊には厳重な口封じと、一部関係者を“事故死”させることで済ませ、死亡した海兵隊は、輸送機の墜落で処理されたが<br /> ロシア軍情報部は憶測の域を出ないものであるが、すでにこの動きを察知していたため、あまり意味のある工作とはいえなないだろう<br /> 6時13分 ロシア軍、EOLTの死体を予定より早くモスクワへ移送させることを決定<br /> 一連の戦闘によって、その戦力を著しく損耗し、地上軍にいたっては、部隊の7~8割を失ったロシア軍が、死体を確保し続けることが難しいと踏んだ政府の指示である<br /> どちらにせよ、死体の移送が完了し、モスクワのEIE推進支部において、より詳細な解剖が行われれば、遺伝情報等の謎も解明されるものと思われる<br /> 6時30分 議会の一部の人間に、「シェパード」実行の事実が漏洩する、政府は彼らを免職させる、ないし脅迫と多額の現金で口止めを行う事を決定、CIA、行動開始<br /> 7時 EOLTの死体をヘリに積載し、モスクワへと向かう、護衛は最低限のもので、独立作戦支援任務師団「オドン」2個チーム30名のみ<br /> 7時44分 アメリカ国防省、プロジェクト「8920」の実働部隊は編成したものの、本部設置は間に合っておらず、フランスで本部設置を急ぐ<br /> IUEITA本部は、前作戦においての記録を米軍より受領、極秘裏に調査を開始する<br /> 8時 米ロ両国の決議によりEOLTの個体数調査、および亜種の種数特定を開始、ロシア陸軍のヘリと米空軍の無人偵察機が行動開始準備<br /><br /><a><font color="#0000FF">230</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/24(火) 18:06:05 ID:???<br /> 9時 国連、多国籍軍編成を開始、すでにロシアは東欧諸国をはじめとした旧共産圏と、中国政府からの軍事支援と兵力の融通が行われており、急ぐ必要は無いが<br /> アメリカ合衆国は、わずかな国連軍の支援を受けた以外、ほぼ単独でEOLTとの戦闘を続けており<br /> すでに兵力的に見れば、すでに全滅に等しい被害をこうむったことを見かねての、ようやくの行動である<br /> 北大西洋条約機構に加盟する政府に対し、参加を呼びかけたところ、イギリスに代表される13カ国が兵力派遣に同意、具体案検討開始<br /> 10時 米国、世論調査を開始、EOLTへの国民感情を調査・集計する<br /> 11時20分 ロシア連邦政府、欧州中距離核戦力削減交渉を一方的に破棄することを決定、各国へ通達すると同時に<br /> 国連へ「核兵器をのぞく、戦略兵器所有の自由化と、軍事力削減条約の大半を破棄する」ことを要求する<br /> 後者に対しては、議論と審議が必要とされたが、前者については、米国を除けば、声を大きく反対するものはなく<br /> 逆に一部国家は全面的な支持を表明、戦略兵器の増強に自国も加わることを検討し始める<br /> 11時30分 NATOでも、軍備補強計画の前進を急がせることを検討、このことには米国も支持を表明する<br /> 42分 中東一部国家が、ロシアへの軍事支援を検討中との情報をCIAが手に入れる<br /> 米国は、「一兵でも多くの兵力をそろえることが、目前の脅威に対抗するために必要」であると考える一方、増長するロシアへの懸念も隠せずにいた<br /><br /> ――両大国の溝が深まることにより、人類側の団結は乱れ、さまざまな思惑が交差し始める、その一方<br /> EOLTは人類社会や人そのものの脆さ、愚かさ、そういったものに強い興味と関心を持ち始め、行動する――<br /><br /><a><font color="#0000FF">302</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名</font><font color="#0000FF">無し上級大将</font><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/28(土) 16:28:37 ID:???<br /> 24日 ・・・比較的、平凡な日々が戻ってきたように、多くの人間が感じていた<br /> だが、それは所詮、次の戦いの前置きでしかなかったのだ…しかし、それに気づくことが出来た人間は、そう多くなかっただろう<br /> 0時7分 NATO、軍備補強計画の前進を行うことで、各国が合意、ただし、これは本格的な協議を国内で行っておらず、国家の首脳部だけの独断の決定という色合いが強く<br /> 若干の批判はあったものの、非常時であり、更には情報の多くがEOLTに筒抜けである今、決定を躊躇する時間は無いというのが現状であった<br /> 0時30分 CIS軍、兵力増強を開始、同時にロシア陸軍再編計画を立案、検討開始<br /> 1時 国連において、ひとつの提案がなされる、それは、誰もが思いつくであろう、単純で純粋な考えからくるものだった<br /> 「人類の保有する軍事力を統合し、未曾有の脅威に対抗するための共同戦線を張る」というものである<br /> しかし、あまりに規模が大きなものであるため、検討は一応行われるが、「大規模多国籍軍の編制」で片付けられてしまう<br /> 2時 「大規模多国籍軍(Large-scale multinational force)」の編制を開始、NATO軍、欧州方面における大規模な駐屯地の設営を開始<br /> 3時 「大規模多国籍軍」をアメリカ・ロシアの両国へ派遣する際に、アメリカへはイギリス経由、ロシアへは直接、部隊を向かわせることで、部隊の編成・配備を開始<br /> ロシアへの軍事支援を行っている東欧諸国からなるCIS軍には、国連から「東欧諸国連合軍(East-European-countries Allied Forces)」略称「EECAF」の呼称が与えられる<br /> 同軍は、中東諸国へ参戦を呼びかけつつ、大規模機甲部隊に続き、航空部隊を大量にロシア軍基地へ向かわせ始める<br /> EECAFとロシア軍の装備は互換性が非常に高く、また、ソ連時代の名残もあり、連携についてはまったく問題が無く、部隊の統合はスムーズに行われている<br /><br /><a><font color="#0000FF">303</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/04/28(土) 16:29:08 ID:???<br /> 7時20分 国連内で現れ始めた、「人類軍の統一」を訴える動きをひとつにまとめるため<br /> 「対EOLT世界規模軍事力統合計画(plan to carry out military strength integration of the global scale for EOLT)」略称CMSIGSEの立案を検討<br /> ただし、あくまで“立案”検討の領域であり、実行は非常に困難とされ、当面はNATO軍とEECA軍のみで手が回らない状況が続くことが予想される<br /> 8時30分 アンケートの集計が完了、ほぼ全世界の国営放送にて、この結果が発表される<br /> アメリカ国民の大部分が好戦的な意見を示す一方、いまだ和平を望むものも少数派とは言えず、世論は混沌としている<br /> 9時15分 ネット上での規制をさらに強化、EOLTに関する情報や思想を制限、数万に上るウェブ・サイトが削除される<br /> 11時 「高ESP能力保持者によるEOLTの意図理解計画(The intention understanding plan of EOLT by the human being with high ESP capability)」略称IUEHBHECについて<br /> 秘匿名称を与えられ、極秘裏に進行してきた本計画だが、予算や規模における問題が徐々に浮上し始める<br /> これにより、プロジェクト「8920」は非人道的な実験などに活動を限定し、IUEHBHEC計画を本格的に始動する事を検討<br /> ただし、これがEOLTに知れれば、何らかの対策を採ってくる可能性が高く、公にするには難しすぎるとの意見が強い<br /> しかし、その一方で、多くの被験者を軍内部から選出、実験部隊の編成を行っているプロジェクト8920は、本部設置と同時に次の作戦の準備を整え始める・・・</p> <dl><dt><a><font color="#0000FF">430</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font></a></strong>投稿日:2007/05/06(日) 17:28:39 ID:???<br /> 午後7時 国連にて、国連本部新設計画が立案される<br /> ニューヨーク市がEOLTの巣窟となり、同時に国連本部も壊滅、多くの職員を失い、マンハッタン事件以来、ホットラインのみによって会合が行われてきたが<br /> それももはや限界と言うのが現状であり、国連本部を新設することが急務となってきた<br /> これにより国家間の連携が進めば、国連の承認をないがしろに進行している、大規模多国籍軍編制計画などを統合した<br /> かつてない規模の国連軍を編制、人類の統一戦線を構築できることを期待した行動であり、それさえなければ、このことは見逃されていたと言うのが加盟国の見方<br /> 10時20分 国連本部新設計画が満場一致で採択され、本格検討が開始される、候補先には韓国が浮上したが、すぐに潰されてしまい、議論は難航<br /> 25日 この日より米軍内部で「EOLTに勝つことが出来ないのではないか」と言う恐怖と不安に駆られ、上官への反抗、脱走などの行為が多発<br /> 午前9時40分 プロジェクト「8920」本部の設置が終了、実働部隊増強と被験者確保を急ぐ<br /> 12時 国連にプロジェクト「8920」本部がひとつの案を提出、「被験者確保のための専門機関」設置というものである<br /> 午後2時 上記の案をアメリカ国防総省が出し、大統領の承認を得たものであるとして国連に提出することで検討<br /> 3時30分 ロシア、「ボストーク」計画を本格始動、本格とはいっても極秘裏に進行している計画であり、表立った動きはほとんど無し<br /> ただし、マンハッタン島事件以来、情報漏洩の危険性は極度に低下しているため、予算や人材等の融通においてはある程度大胆な動きを見せる<br /> その代表例としては、EIE所属の日本人数名をスカウト、同計画への参加を求めたことが挙げられる<br /><br /> 詳細時刻不明・・・プロジェクト「8920」からの発案について、ホワイトハウスで本格検討<br /> 閣議出席者は合衆国大統領以下、政治関係者と軍関係者数名、EIE職員3名とIUEITA職員2名、なお後者2つの組織の人間はプロジェクト「8920」関係者</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 449</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/07(月) 04:04:13 ID:???<br /><br /> 「―こちらヴェクター、“積荷“を運んできた、どうぞ―」<br /> 「―こちら管制塔、着陸の許可はまだ出来ない、もうしばらく上空で待機しろ―」<br /> 「―了解―」<br /> 乗員席で交わされる会話の音量は高く、積荷こと乗客たちの耳でも容易に聞き取ることが出来た<br /> 乗員の会話を反芻した一人が愉快そうに声を上げる<br /> 「積荷呼ばわりか、嫌われてるんですかね、私たち」<br /> 「嫌われていない方がおかしいんじゃなくって?…私たちの都合でわざわざここまでのことをしてもらっているんだもの」<br /> 皮肉を言い、どこか毒のある笑い声をこだまさせる女の白衣の胸には、IUEITA職員であることを現すプレート、襟元にはP8920の刺繍<br /> 「別に私の案ではなくて、其方の方の発案じゃないですか」<br /> 反対側の座席で足を組み、めがねの位置を直しているスーツ姿の男にも同じ刺繍が施され、EIE職員であることを表すプレートが付いていた<br /> 「あら、あなただって、この案には賛成なんでしょう?」<br /> 「こちらだって得をしますからね、被験者集めの特殊機関、EIEの方でもいずれ需要が出てくるはずですから」<br /> 「だったらいいじゃない、EIEとIUEITAの同意があって出された案となれば、プロジェクト8920の発案とするより、向こうも首を縦に振りやすいわ」<br /> ここまで喋ってみて、何かに気が付いたように白衣の女は表情をこわばらせる<br /> 「しかし、安っぽい判断基準よねぇ…」<br /> 自分の目を見て話していないことから、この嫌味が、独り言の類であることは分かっていたが、スーツ姿の男は低くうなずいた<br /> 「…まったくです」<br /> 会話が途切れると同時に、ローターが空気を切り裂く音が、何の障害もなしに聴覚神経を刺激しだしたので<br /> 両者ともに、胸のポケットの中からイヤホンを引っ張り出して、それを耳に詰め込み、センの代わりにして虚空を眺め始めた…</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 600</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/13(日) 03:32:52 ID:??? <br /> ――ホワイトハウスの中、大統領の執務室では、急な来客に備えるために数少ないEOLTに関する資料に、必死で目を通す政治家たちが居た<br /> 内容が理解できるものも出来ないものも、少なすぎる情報から出来る限りのことを読み取ろうとしていたようだった<br /> 「…ああ、最後の15ページに載ってる写真、これって焼き増しできないか?ちょうどよさそう…」<br /> 「そんなことはいい、この資料は何を意味していて、この報告書は何を伝えたいんだね、補佐官!」<br /> 「私に言われても…国務省の報道官が国連公式発表の際に書いた原稿、あれより詳しい内容が」<br /> 「詳しい資料が載っているせいで、余計に混乱するということもあるでしょう」<br /> 「副大統領、君は口を開く前に、ここに来る連中への質問内容をまとめていてくれ」<br /> 「はあ…」<br /> 大統領の執務室から、隣の部屋へ移動してPCの電源を入れた頃に、大統領は資料を投げ出し、コーヒーの代わりを要求しつつ、愚痴をこぼし始める<br /> 「まったく…我々素人にこういった予備知識を求める時点でおかしいと思うが?」<br /> 「しかたありません、そうでないとここにくる人間の話を理解できませんから…」<br /> 「そもそも補佐官、一体彼らは何の目的手ここまでやってくるのだ、彼らの出してきた案の採択だけならば、こちらの方で…」<br /> 「いろいろと計画の進行状況についてでも話してくれるのでしょう…ほら、そのためにこの資料を取り寄せたのですし」<br /> 補佐官は意味有りげに資料を胸の高さまで持ち上げながら、軽くそれを揺らしている<br /> そのことが木に触ったらしく、大統領の顔が多少ゆがむが、代わりのコーヒーが運ばれてくると興味は其方に移ってしまったようだった<br /></dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 601</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/13(日) 03:34:34 ID:???<br /><br /> 「まったく、大学の講義でもあるまいし…奴らときたら、今までほぼ独断で活動を進めていながら、今になってこちらの都合も考えずに…」<br /> 「マンハッタン島事件の時以来、ろくに打ち合わせも出来ないような状況ですし、しかたありませんよ」<br /> 「まったく…」<br /> コーヒーをすする彼の左手には、資料が握られていなかった<br /> それは思考の放棄に他ならないことではあったが、思考を続けても彼を含む、ここの人間たちには何も理解できなかっただろう<br /> そういったことを考えながら、大統領補佐官は、ついさっき話題に上がっていた“客人”たちの所在を確認しようと、携帯をいじり始める<br /> 大統領はコーヒーの香りをかぐために、カップを顔に近づけ、鼻の周りで動かしている<br /> ほんのひと時ではあったが、執務室に訪れていた沈黙はひとつの叫び声で破られた<br /> 「大統領!いま、その客人の乗ったチヌークが上を飛んでいるそうです!」<br /> 音高くドアを叩きつけるように開いた副大統領に驚いた彼の唯一の上司は、コーヒーを資料の上にこぼしてしまった責任を彼に擦り付け、喋り出した<br /> 「よし、早く着陸許可を出せ…庭が汚れようがかまわん、野次馬をどけるためにここの警備を使え」<br /> 「了解しました、大統領」<br /> 補佐官が執務室の外に居る人間を連れて前庭に走っていき、それを見た副大統領も腰を上げ、歩き始める<br /> 「ようやくか…」<br /> 客人に対する備えのほかに、大統領補佐官と副大統領が迎えに出て行ったこともあり、大統領は自分の手でコーヒーをぬぐった…</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 602</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/13(日) 03:37:59 ID:??? <br /><br /> …ヘリの中、白衣姿の女と、メガネを掛けたスーツ姿の男は、イヤホンを使って何かに聞き入りつつ、のぞき窓から見える、眼科の光景に注視する<br /> 急にあわただしく人々が動き回り始め、ホワイトハウス前の人だかりが押しのけられていく、それがヘリ着陸の準備であることは、一目で理解できた<br /> それを見たスーツ姿の男はメガネの位置を直しつつ、微笑を浮かべる<br /> 「いやぁ、ようやく降りる準備が出来たみたいですね…衛星通信が使えなからですかね?」<br /> 「…」<br /> 「…ところで、何を聞いているんですか、それ」<br /> 「国防総省の盗聴…結構面白い会話が聞けるのよ」<br /> 「それは向こうの専売特許だと思うんですが…あ、ちなみにどんな会話ですか?」<br /> 「私たちの一人歩きが怖くて仕方ないらしいわ…ロシアのこともあるし、そうとう気がたってるみたいよ」<br /> 「ありゃ、この次はモスクワの方に用事があったんですけど、ちょっと不味いですね」<br /> 「あなたが心配してるようなことにならないために、今まで散々根回しをしてきたのよ、どうせ何も出来ないわ」<br /> 白衣姿の女は、含み笑いを浮かべつつ、ポケットにイヤホンをしまう<br /> その愉快そうな表情からみてとるに、おそらくはそれ以外の何らかの情報を手に入れたことは疑いようが無かった<br /> だが、スーツ姿の男はそのことを追及しようとはせずに、再び窓の外を眺め始める<br /> 「…遅いですね、もう降りても良いんじゃないですか?」<br /> 「パイロットに催促しなさいよ」<br /> 「パイロットの発音、知らないんですよねぇ…私」<br /> 「英語で言えば自分に向けたものだと思うのが普通じゃなくって?」<br /> 「それもそうですね…でも面倒なのでやめます」<br /> 「英語は話せる?」<br /> 愉快そうな笑みを浮かべつつ、小ばかにしたような口調で話しかける<br /> その最中、ポケットの中に入れられた手は、何かを撫で回すようにして動いていた<br /> 「失礼ですね、話せますとも」<br /> 「ならいいけど、大統領の前で単語間違えないでね」<br /> 「なお失礼ですね、これでも昔は外務省に居たんですよ?…第一、今は立派な国際公務員です」</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 603</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/13(日) 03:38:59 ID:??? <br /><br /> しゃべれない方がおかしい――<br /> そう否定する彼の目線は、白衣姿の女が、そのポケットの中で弄くっている物体に向けられていた<br /> M1911――護身用だろうが、腰のホルスターに官給品のベレッタが差し込まれているところを見ると、おそらくは私物だろう<br /> 「それ、どこで買ったんですか?」<br /> 「さあねぇ…元はと言えば私のものじゃないし」<br /> 「まあ、どうでもいいんですがね、そんなことは…あ、地面につきましたね」<br /> チヌークの足が地面に付くと同時に、パイロットが怒声をあげる<br /> 「おい!のんびり座ってねぇでさっさと降りろ!大統領を待たせてるんだぞ!!」<br /> 「さっさとって言われましてもねぇ…初めて言われましたよ、降りろなんて」<br /> ネクタイを直しつつ反論するスーツ姿の男に、白衣の女も同調する<br /> 「そもそも、大統領を待たせているのではなく、またされていたのは私たちよ?」<br /> 「それ以前に、われわれが大統領を待たせて、どんな問題があるでしょうかね…状況的には、われわれの方が立場は上ですし」<br /> 「これだから上下関係がすべてだと思ってる軍人って好きになれないはぁ…」<br /> 何か言いたげヘリのパイロットを横目に、二人の話は進んでいく<br /> 「まったくです…こんな馬鹿はほうっておいきましょう」<br /> 「ええ、じゃあ行きましょうか、佐藤クン」<br /> 佐藤と呼ばれたスーツ姿の男は、一人で先にヘリの外へ出て行く白衣姿の女の後姿から視線をずらし、同行している職員に指示を出す<br /> 「はいはい…ああ、相原君、プロジェクターの操作とかは全部任せますので、こっちのしゃべるタイミングに合わせて下さいね」<br /> 秘書スーツに身を包み、ノートパソコンを抱いている女性は、ゆっくりと腰を上げつつ声を出す<br /> 「…分かりました」<br /> 無表情に、脈動感に欠ける台詞をはく彼女の胸にも、EIE職員であることをあらわすプレート、襟にはP8920の刺繍が施されていた…<u><font color="#0000FF">55</font></u>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:29:49 ID:???<br /> ヘリの外では、数人のシークレット・サービスが周りを取り囲み、副大統領とホワイトハウスの職員が、乗客の前に立っていた<br /> 風に巻き上げられた埃から目を守るために、手で半分覆われたその顔には、どこか意外そうな表情が浮かべられていた、そして当然の呟きがもれる<br /> 「全員日本人?…EIEもIUEITAも日本人技術者が多いとは聞いていたが、彼らで全員なのか?」<br /> 「そのはずです…少し以外ですが、仕事で問題を起こすこともないと思いますので、心配することもないかと――」<br /> ヘリから降りてきた5人の日本人のうち、2人が白衣姿で残りはすべてスーツ姿、前者がIUEITA、後者がEIEの職員であった<br /> そして、メガネで日の光を反射させているスーツ姿の男、佐藤は、出迎えの人間の話を見て、かすかに笑みを浮かべる<br /> 「いやぁ、やっぱり嫌われてますねぇ…仕事がうまく出来なければ、ジャップとでも罵って来そうだ」<br /> 「つまらない選民主義に染まった馬鹿は扱いにくいものよ…機能的に言えば、皮膚が黄色い方が、アルビノよりすぐれているのだけど…ねェ?」<br /> ポケットに入れたてを片方だけ引きずり出し、風で乱れた髪をいじりながら返答する<br /> 「そうですね…特に後者には全面的に同意します」<br /> 「後者?…前者の方はどうなの?」<br /> 「前者の方ですか…逆に固定概念や偏見の類しか持ち合わせていない人の場合、手のひらの上で転がしやすいですから、扱いにくいことはないですよ?」<br /> 「私はそっちの方の仕事はあまりしないから」<br /></dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 56</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:30:39 ID:??? <br /> 「…お話を邪魔して悪いのですが、後ろが詰まっていますので、出来るだけ早く降りてください」<br /> 一言だけ侘びををいい、再び歩き始める二人の目に入り込んできたのは、まず目の前に立つ副大統領以下数名だったが<br /> その視線はすぐに、ホワイトハウスの窓から覗く、金髪の女のほうに移っていた<br /> それが明らかに二人方をむいて手を振ってきていることに気が付いた白衣の女は、佐藤の方を向き直る――ちょうど手を振り替えしたところだった<br /> 「…あら、あの娘は?」<br /> 「俗に言う、にぱーっと笑うと言うやつです」<br /> 「そうじゃなくて、どういう立場の人間で、あなたとどういう関係か」<br /> 「大統領補佐官の娘です。…まあ、つまらない関係ですが、日本で色々とありましてね」<br /> 顔に笑みを浮かべながら、皮肉っぽい口調で佐藤への問いかけを行う白衣の女の口調に対して、佐藤の返事のそれは至って冷淡なものだった<br /> そのことに興味をそそられた彼女は挑発的な口調で、更に切り込みを掛ける<br /> 「あの娘、ずいぶんとうれしそうに手を振ってるけど?」<br /> 「お土産でも欲しがってるんじゃないですか?」<br /> 今一度、深く追求しようかと思ったようだが、その思惑は外部からの攻撃で阻止された<br /> 「失礼だが、君たちがEIE、およびIUEITA職員だな?…例のプロジェクトの関係者の?」<br /> 副大統領の口調は感動に欠けるものだったが、妙な威圧感があった</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 57</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:31:24 ID:??? <br /> しかし、ここへ来た客人たちは、そんなものにプレッシャーを感じるタイプの人間ではなかった<br /> 「そうよ、早いところ大統領の執務室へ案内して頂戴」<br /> 「こちらも忙しいので、出来るだけ急いでくださいよ、何事も…」<br /> 「ではこちらへMr,サトー…ああ、失礼だが、君は?――」<br /> 外部とのやり取りで表へ顔を出すことが多かった佐藤は、一部の限られた人間にだけではあったが、多少顔が知れていた<br /> しかし、その隣に居る女性は、彼も始めてみる顔だった、資料に載っていたのも見たことが無い<br /> 「IUEITA推進本部所属一等技術員・兼・IUEHBHEC特派技術顧問の櫻井よ、よろしく」<br /> 握手を求めてくることを期待していたのだろうか<br /> 白衣のポケットに手を入れたまま、微笑みかけてくる彼女に、若干の不快感を示しつつも、目的地への先導を始める<br /> 職員数名が、この二人にホワイトハウスの現状を説明しようとするが、それを部下と秘書に話すように指示をし、無駄話を再開する<br /> 「なんだかのどが渇きましたねぇ…ああ、コーヒーかなんか飲みたい気分です」<br /> 「ウォトカならここにあるわよ?」<br /> 「ブランデーの方がいいですね…おまけに、それは余計にのどが渇きます」<br /> 「じゃあ好きにして頂戴」<br /> 差し出したウォトカを内ポケットに戻し、きびすを直して道を進んでいく<br /> それに対して佐藤は、何かを探すように辺りを見回した後、近くを歩いている職員に対して質問する<br /> 「ええと…すみません、自販機はどこにありますか?」<br /> 「…」<br /> 明らかにその質問に気づき、意味も理解したはずだが、彼の返答は無い<br /> 「無いんですか?」<br /> 「…」<br /> それは、この沈黙が、否定を意味するものであると言う、極少の可能性を考慮した発言であったが、やはり返答は無い<br /> その沈黙の意味について確信した佐藤は、別段気を落とした様子でもなく、にこやかに独り言をもらす<br /> 「…嫌われてるなぁ」</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /><br /> 58</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:33:43 ID:??? <br /><br /> ・・・大統領執務室の内部はすっかりと片付けられ、プロジェクターなども、すでに配置されていた<br /> そこに入ってきた人間は、もう少し散らかった部屋を想像していたのか、少し意外そうな顔をしていたものの<br /> 大統領執務室に侵入することに対しては、なんら感慨は抱いていないといった様子に見えた<br /> 特に佐藤のはいた台詞は極めつけとも言えたらしく、大統領以下、数名の人間は明らかに表情をゆがめた<br /> 「すみません、缶コーヒーを買いたいんですけど、自販機ってどこですかね?」<br /> 「黙れ、貴様の約分を果たすまではここから返さんぞ」<br /> 怒声と思えないことも無いような力のこもった声で威嚇するのだが、やはり効果はない<br /> 「約分といっても、別にここにきたのはこちらの意見を聞いてもらうためだけで、色々と説明してあげるのはサービスですから…」<br /> 「佐藤クン、あまり正直なことは言わずに、接待だとでも思ってやりなさいよ」<br /> 「まあ、そのつもりですがね…あ、そんなことより、送っておいた資料に書いておきましたよね、どれだけに規模の組織で、どれだけの――」<br /> 「組織の規模については問題ない、後は貴様らで好きにしろ…ただ予算が問題だ、なにせ最低でも100億ドルとくる」<br /> 「ああ、それですがね…そこに書いてあるのはあくまで組織立ち上げのための資金なんで、それとは別に活動資金を300億ドルほど…」<br /> 「もう一度言え」<br /> 「そこにかいてあるのは――」<br /> 揚げ足を取るような回答に対する怒りを抑えつつ、大統領は再び質問しなおす<br /> 「何ドルといった」</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 59</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:34:56 ID:??? <br /> 若干胸をそらせつつ、視線を上に向けて佐藤は答える<br /> 「300億ドルほどお願いします…あ、キャッシュで頼みますよ」<br /> 「…」<br /> あまりに反応が遅いので、付け足しを行う<br /> 「アメリカ人と違って、私は日本人ですからね…これでも出来るだけ少ない額にするよう、苦労して工面したんですよ?」<br /> 「嫌味か?」<br /> 「はぁ?」<br /> 「それは私…いや、我々に対する嫌味か?」<br /> 一瞬戸惑った佐藤だったが、再度問いかけを受けたことにより、またいつもの態度に戻った<br /> 「それも若干」<br /> 普通は大統領相手にはけないような台詞を、笑顔で言ってのけたことに、一部の人間は驚きを隠せないといった様子だった<br /> 「貴様一体その資金を――っ!!」<br /> 「人類のためです…ただでさえ、その軍事力の大半を失おうとしている合衆国が、いまさら軍備増強などに努めても遅い」<br /> 静止を払いのけ、佐藤は大統領相手に説教を続ける<br /> 「では、軍事力に関しては国連へ支援を仰ぐしかない、あなたたちは、その見返りとして、蓄えてきた莫大な資金と技術力を惜しむことなく放出すべきであるはず」<br /> 胸をそらせ、かすかに見下すような表情をしていることに、幾人かが気づいたが、会話をさえぎる暇は無かった<br /> 「まあ、全世界に資金・技術提供するのには無理がある…そこで我々ですよ、あなたたちが我々に資金提供をし、それによって得た成果を人類公共のものとする」<br /> 笑みを浮かべながら、再び発言を続ける<br /> 「当然、その資金を無駄にしないために、こちらも努力します…で、その努力の妨害をして欲しくないので、多少の独断行動は――」</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 60</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:36:04 ID:??? <br /> 予算審議の面で、この執務室に呼ばれていた財務長官は、当然のように激発し、口を挟む<br /> 「独断行動だと?…それは今、貴様らがやっている事だろう!」<br /> 「かまわん、許可する」<br /> 「大統領!」<br /> 「構わんと言っている!こうなる事が分かって、先の提案を受け入れたのだろうが!!」<br /> 大統領の静止が、正しいことを言っているはずの彼にとっては、よほど不当なものに思えたのだろう、再び反論を試みる<br /> 「しかし、アメリカ合衆国は――」<br /> 声を荒げての反論だったが、大統領のそれは更に大きかった<br /> 「いまさら遅い!これまで彼らが独立した行動が出来るようにしてきたのは、我々と国連だ!!」<br /> 「…っ!!」<br /> しばらく沈黙が続いた、佐藤は笑顔で、櫻井はつまらなそうに、その二人の秘書と部下は冷ややかにこのやり取りを見守っていた<br /> 「お話が終わったようだけど、本題に移っていいかしら?」<br /> 茶番を見るのに飽きたといった様子だったので、財務長官は更に不機嫌そうな顔をした<br /> 「そうですね…相原君、お願いします」<br /> 「…はい」<br /> 照明が消えると同時にプロジェクターが起動し、部屋を照らす<br /> 「じゃあ、始めましょうかね…何について、どこから話し始めましょうか?――」<br /> 笑顔で言う佐藤のメガネは、プロジェクターの光を反射して光っていた</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /><br /> 61</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:38:23 ID:??? <br /><br /> 一瞬静まり返った室内だったが、佐藤の方から切り出した<br /> 「漠然としたものでかまいませんよ?…資料を回しておいたので、具体的な質問が来ると思っていたんですが――」<br /> 微笑みかけてくる佐藤に、少し戸惑いながら大統領が口を開く<br /> 「…一番気になっているところだ、EOLTとは一体…何者なんだ?」<br /> 「なるほど…確かに漠然としたものだ…」<br /> プロジェクターから、火星にて確認された構造体が映し出される<br /> 「EOLTはその名のとおり、地球外起源の生物です…しかし、その生態は、とても自然発生したものには思えません」<br /> 「ここで言う自然発生というのは、野生の生物ではありえないと言う意味で、何らかの科学文明を持っている存在と言うことも意味しますが、その反面――」<br /> 画像が月で確認された構造体と、そこから出現する物体に変わる<br /> 「こうした構造の生物が、科学文明を持ち、人類のようにそれを扱いやすくするために進化した生物だとは、とても思えないと言う矛盾も示しています」<br /> 次に現れたのは、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された写真であった<br /> 「そのことから我々は、この生命体が“何らかの科学文明が意図的に誕生させたもの”であると言う仮説を立てました」<br /> 再び画像は構造体のそれに変わった、今度は地球のものである<br /> 「そして、ここでNASAが構造体を確認した初期より持っていた仮説“構造体が資源の最終・精製用のプラントである”というものが浮かび上がってきました」<br /> 「つまり、EOLTとそれを運んできた構造体は、人類以外の科学文明が、資源最終の目的で送り込んできたユニットであることが想像されたわけです」<br /> 何人かの人間が口を挟もうとするが、それより先に佐藤は話し出す<br /> 「しかし、その資源採集の目的が依然として不明のままです、純粋に資源を採集し、持ち帰ることが目的なら簡単ですが…」</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 62</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:39:12 ID:???</dt> <dt>画像が何かの論文の切り抜きに変わった<br /> 「フォン・ノイマン型の資源採集用ユニットで、自分を複製するために資源採集機能が付いている場合、資源採集以外の目的があることになります」<br /> 「これが人類など、自己以外の生命体ないし科学文明を発見したいという、彼らの生みの親の願望ならいいのですが、彼らは攻撃をしてきています」<br /> 「ただ単に興味を持っただけで、いることが分かれば後はどうでもいいのか、攻撃されたから反撃しているだけなのかは分かりません」<br /> 画像が映像に取って代わられた<br /> …それはニューヨーク市の戦闘で、ちょうど中型の探査科が勢いよく米兵の群れに突っ込み、装甲車両を殴り飛ばし、遅れてきた触手で歩兵を細切れにしたところだった<br /> 「ですが、このたとえが正確かは分かりませんが、明らかに戦闘については素人であることは間違いなさそうです」<br /> 「用兵の仕方も、マンハッタン事件以後にとってつけた様に使われ始めたもので、それ以前はまるっきりでたらめでした」<br /> 映像がヘリから撮影されたものに変わり、大統領以下、客人以外の全員がその映像を注視する<br /> しかし、どこが用兵の仕方がでたらめなのか、それを見る人間には判断付かないようである<br /> 「もっとも、圧倒的な戦闘能力の差と、こちら側の混乱等があり、EOLTは一方的に勝利しましたが…」<br /> 次に映し出されたのは、二種類のEOLT…追跡・追撃科を遠距離から撮影したものを、画像処理したものらしい<br /> 「最初の戦闘の後、やはり、とってつけたような自衛用個体が出現し始めたこともあり、おそらく、人類との戦争以外の目的で着たことは間違いないはずです」<br /> また静止画像から動画へと変わり、観客の目を引く…どうやら、シベリア戦線のものらしい雪原での戦闘が写される<br /> 「ただ、最大の問題は、“今もそうであるか“ということで…つまり、人類との戦争に勝つことが目的へと変わり、これから本格侵攻が始まるとも限らない」<br /> プロジェクターから映し出される画像が、「7号資料」と書かれた画像に摩り替わり、回答が終了したことを告げる<br /> 「まあ、そんなところです。地球生物とその文明の生殺与奪の権利を持っていることも間違いなさそうですね…えー、次の質問は?」</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 63</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:40:57 ID:??? <br /> 次の質問者は副大統領だった…重みのある声を上げ、佐藤に問いただす<br /> 「やつらの生態についてはどの程度判明している?…たとえば、どの程度の休息が必要なのかといったことや、生殖の過程などだが…」<br /> 「ああ、それでなんですけどね…休息――つまり睡眠を行っていることは確認されていないし、生殖活動を行う機能が備わっていないことも分かってます」<br /> 画像はロシアで解剖されたEOLTの写真に変わる…画像には、「10号資料」の文字が書かれていた<br /> 「そして、何らかの方法で、体外から食物を取り込む機能も確認されていません」<br /> 「食物を摂取しないというのか!?…しかし、それで一体、どうやって活動を続けて――!」<br /> 「食物を摂取しないというのは、自力でそれを行うことができない、という意味です…たぶん、構造体内で供給されるのでしょう」<br /> 「その姿は確認されているのか?」<br /> 「いいえ、まったく確認されていません、ですから完全な仮説です」<br /> 画像がエネルギー補給のサイクルを表す図に変わる――ラテン語で書かれているため、一部の人間は読むことができなかったが<br /> 「同じように、新陳代謝も行っていない…これはまだ健勝段階の情報ですが、いずれその成果をロシア政府が公表するでしょう」<br /> 観客の数人が目を細める、ロシア政府が好評どころか、いまだ検証中の情報をどうやって知りえたのか…<br /> 「あー…何かまず事を言いましたか――?」<br /> かすかに佐藤が笑みを浮かべる…明らかに普段のそれとは異質なものだった、どこか不気味な――</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /><br /> 64</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:41:42 ID:??? <br /></dt> <dt><br /> 「――そうか、いや、なんでもない…次の質問だが、やつらは資源採集用のユニットだといったな?―もしそうだとすれば、資源採集に向けての動きがあるはずだが?」<br /> 「ええ、知ってのとおり、根を地中に張り巡らせ、主縦坑にあたる根の先端部分を、地球の核に向けて放ちました」<br /> 一部観測データのグラフを添付したその想像図が映し出される<br /> 「そこで問題なのが、“根“を地球の核にむけてはなった以外、目立った資源採集に向けての行動を示していたいと言うことです」<br /> 構造体から延びる横坑の伸び方を、時間を早回しにして再生する<br /> 「たしかに、坑道を張り巡らしてはいますが、採掘作業を行っているらしい情報は一切入っていない…理由は幾つか考えました」<br /> 「一つ目は、目的となる資源があるところまで、その勢力圏、ないし根が伸びていないということ…これでEOLTが勢力圏を少しずつ伸ばしてきている理由が説明できます」<br /> 「二つ目は、人類という脅威が目前にある今、資源の採集どころではないと判断しているためです…これが正しければ、自衛用個体の件も説明できます」<br /> 「三つ目は、そもそも資源採集という目的そのものがないのか…」<br /> 一息つく佐藤を見た後、行く認可の観客は顔を机に落とし、考え込む</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 65</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/20(日) 05:42:48 ID:??? <br /> しかし、それ以上に思いつめた表情を見せている人物が、発言者である佐藤本人であることに気付く人間はそう多くはなかった<br /><br /> ――あるいはこの仮説のうち、そのどれも違うのかもしれない…私たちが思いもよらない何か…そう、人間には考えもつかない何かが――<br /> ――とにかく、物事を判断するには、あまりに時間も情報も少なすぎる…いずれ嫌でも気付く時が来るはずだ…そのときまで――<br /><br /> 彼はそう思いつつ、口元に手を当てて考え込んでいた…<br /> 桜井は彼を見て、意味ありげにかすかな笑みを浮かべ、ポケットの中のガバメントを弄り回し始める・・・<br /><u><font color="#0000FF"><br /> 239</font></u>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/05/23(水) 04:45:16 ID:???</dt> <dt>――そのときまでに、出来るだけの事を済ませておくべきだろう…やれるときにやっておかなければ――<br /><br /> 考え込む佐藤をよそに、政治家たちは噂話でもするかのように、仲間内で議論を始める<br /> 大統領たちの会話にすら気を取られずに考え込む…櫻井はこの光景を見て、どこか奇妙な感覚を覚えずにはいられなかった<br /><br /> ――間に合わなくなるかもしれない…これを長引かせるべきではないだろう――<br /><br /> 国家の枠組みを超えて、権限と権力を獲得してしまい、国連の混乱に乗じてEIEとIUEITAに組織的な自由を与え<br /> プロジェクト8920にいたっては、ほぼ独断で行動し、その成果を報告する義務すら怠っている<br /> それはこの――つい数日前まで、国家公務員である意外、なんの政治的な権力も持っていなかった男によるものだ<br /> もしかしたら、彼が今後の人類の命運を分けるような行動をとるかもしれない…櫻井はそう考えていた<br /> 肝心の彼――佐藤は、いまだ結論を出せずに居る…<br /><br /> ――もしかしたら、勝つことは出来ずとも、人類が当面の目的を達成できるかもしれない…問題なのは、3つのうちどれになるか――<br /><br /> ・・・佐藤は腕をポケットに戻し、それを見た相原がプロジェクターを再び起動する<br /><br /> 「それじゃあ、次は何を話せば?」<br /></dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 764</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:41:30 ID:??? <br /> ・・・会議(?)の終結は意外にも早かった<br /> 大統領以下数名の出席者が国防省に呼び出されたためで、連絡が入ってからほんの数分でほぼ全員が引き払ってしまった…<br /> 会話から察するに、どうやら海兵隊予備役の全面召集において、何らかの問題が発生したらしい<br /> 置いてきぼりを食らわされた来客の面々は、大統領執務室内に留まる目的を失ったため、荷物をまとめると、早々にその部屋を後にしていった<br /> ただ、その来客の面々にまったく動揺が無いのは職業病か、ただ単純に性格の問題なのか、それとも…<br /> 「いやいや、ここまでの扱いを受けるとは思いませんでした」<br /> 佐藤は、やはりうれしそうに微笑を浮かべながら喋る…その微笑が何を意味するのかはわからないが、同じく悪意の類はまったく感じられない<br /> 「…わかりきっていたことでは?」<br /> 隣でノートパソコンを持ち、無表情のままたたずんでいる秘書スーツを着た女性が、何か不自然なものでも見るかのような表情で声を出す<br /> 見下しているような態度といえなくも無いが、悪意のこもったものではなく、何か別なものを感じさせた<br /> しかし、上司に対しての口の聞き方として問題があることは事実なので、向かい合う位置にいた半白の頭をした男が静止に入る<br /> 「…相原君」<br /> 「そもそも、歓迎される立場にはいませんし」<br /> 「相原君!」<br /> 多少声を荒げ始めたその半白の頭の男に対して、佐藤が見かねたように反応する<br /> 「あぁ、いいです、いいです…別にかまいません」<br /> 「は、はぁ…」 <br />  <br /><br /><a><font color="#0000FF">765</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:44:05 ID:???</dt> <dt>佐藤の反応にしっくり来ないものを感じながらも、姿勢を正して引き下がる<br /> その反応の仕方と動きからは、元は軍に在籍していたであろうことをほかの一部の目撃者たちは感じ取った――おそらくは日本国自衛隊(JSDF)<br /> 脇の下には、ほんの僅かだが膨らみがあり、何かが垂れ下がっているように見えた…拳銃の類だろう<br /> 「ところで、この部屋は盗聴されてますかね?」<br /> 「問題ありません」<br /> ポケットに手を入れたまま前かがみになって部屋を見回す佐藤への返答は冷淡なものだったが、本人にそれを気にしている様子は無かった<br /> 「では国際電話で海上幕僚長に連絡を取って下さい」<br /> 「吉川さんですか…用件は?」<br /> 「直接話しますから繋がったら変わってください」<br /><br /><br /><a><font color="#0000FF">766</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:45:34 ID:??? <br /><br /> 国際電話――マンハッタン事件以来、通信衛星がほぼ制御不能に陥り、国際電話の類は一時的に使用不能に陥ったが、回線が破壊されたわけでもなく<br /> 海底ケーブルに頼るほか無くなっていたものの、通話不能ということにはなっていないため、現在でも利用は継続されている<br /> もっとも、料金等に変わりは無く、安否確認のために合衆国とロシアへの通信が一時的に増えた以外、通話量に変化は無いが<br /> 「どちら様ですか…」<br /> 電話の向こうの声を中継する相原の声は、相変わらず冷静というよりも、感情の起伏云々をつかさどる脳の部位に<br /> 何らかの障害を持っているのではないかと思わせるほど、無感動な…少なくとも、ただ単に職業病ともいえないものであることは感じさせた<br /> 「えーと…佐藤です」<br /> 「わかりました」<br /> 電話にその言葉を伝えた直後に会話が途切れ、相原が沈黙しているところから、相手の急激な反応の変化が見て取れた<br /> 数瞬の後、電話の向こうから応答があり、本人が出るようにとの指示を受け、佐藤が眼鏡の位置を直しつつ、交代する<br /> 「どうも…」<br /> 佐藤は相変わらず笑顔でいるものの、電話に向かって第一声を発した瞬間、表情が微妙な変化を見せたことには、誰も気がつかなかっただろう<br /> 「―佐藤君…久しぶりだな―」<br /> 「ええ、5年ぶりですねぇ…随分と昇進なさったようで、あの時の彼方はまだ三佐だった」<br /> 「―いや、結局は君の立場のほうが上だ、凡人の限界というかな…それで、用件は何だ?―」<br /> 「DDH…ヘリコプター搭載護衛艦を一隻、貸して貰いたいんですが」</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /><br /> 767</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:46:25 ID:???</dt> <dt>「―DDH?ただでさえ希少価値の高い船だ、そう簡単には動かせんぞ―」<br /> 声を大きくする海上幕僚長に対し、佐藤はいたって冷淡に対応する<br /> 「総理には話をつけてありますし、今までにも日本人技術・研究者の派遣はありました。EOLTの調査・監視のための自衛隊派遣もそれほど反発を受けないでしょう」<br /> 「―国民感情の点は問題ない、報道規制を行っているのだしな…ただ、米国政府は?」<br /> 佐藤は何かを思い浮かべるような表情をした後、また笑顔になり電話に向かう<br /> 「それなら問題ありませんね、そちらは護衛艦を動かしてくれるだけで十分です。後は人を殺そうが何をしようが、私の仕事ですから」<br /> 軽い笑い声を上げながらの発言とは思えなかったが、電話の向こうの反応も、その点については言及しようとしなかった<br /> 「…壊さんでくれよ」<br /> 「ああ、その点は大丈夫です。今度は壊さないように使いますから」<br /> 笑顔でそういったせりふをはいているところを、第三者が見れば、子供が玩具の貸し借りでもしているかのように思っただろう<br /> 事実、佐藤からしてみれば、その程度のものなのかもしれないが――それにしてはあまりに高級なものだ<br /> 「お前のことだ、相手は人間だろう?」<br /> 「人聞きが悪いですねぇ、人類のため…EOLTに勝つために、人間と戦うんです」<br /> EOLTに勝つ――この“勝つ”という言葉にはいったいどのような意味があったのか、それを聞くものにはほとんど理解できなかった<br /> EIEもIUEITAもプロジェクト8920も、すべて一貫性があるように見えてないものだ<br /> いったい、誰が何のためにどのような行動を起こしているのか、把握が困難なほどに状況は混沌としている<br /> 佐藤の行動についても例外ではなく、一見すると前途の組織のために動いているようだが<br /> すでに一人歩きをし始めている同組織の主導権を手に入れつつある佐藤が、ほぼ自由意志で動いていることから考えれば、何らかの思惑があると見ても間違いないだろう</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /><br /> 768</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:47:33 ID:???</dt> <dt>「―…まあいい、検討してみる。用意が出来次第、こちらから連絡しよう―」<br /> もっとも、その思惑が表面化し佐藤が完全に独自の行動を開始するには、相当な時間の経過と状況の変化が不可欠だろうと思われた<br /> 「よろしくお願いしますよ」<br /> 現に、今のところ彼は、EIE本部所属の職員であり、プロジェクト8920に関わっているという他は、特別な人間という訳ではなく<br /> 政府の意思や政治の動向、そういったものに左右される哀れな技術・研究者、そのうちの一人でしかない<br /> 「―ああ―」<br /> 立場的には合衆国大統領より上であっても、政治家たちがその気になれば彼程度の存在は簡単につぶせてしまうはずだろう<br /> 少なくともそう思って間違いないはずだ、まだ始まってから数日…問題なのは、この戦いが長引いてしまったとき、どうなってしまうのか<br /> 彼は明らかにその時の為の布石をまいている…戦いが長引き、何か行動を起こさなければならなくなったときの為の布石を…<br /> 「それじゃまた」<br /> 携帯を閉じる音を聞いたときに、その通話を隣で眺めていた櫻井は、自分が人差し指の第二間接にあたる部分の手袋をかみ締めているのに気づいて、あわてて姿勢を正す<br /> ――考えすぎなのかもしれないが、自分もいずれ同じことをするはずだ…でも何のために、なぜ私が…?<br /> そう考えていくとある疑問に落ち着く、彼はなぜ、何のために、何をしようとしている?…なぜ彼でないといけない?<br /> まだ人類救済のための特殊機関だとかの類は立ち上がっていない、あったとしても、計画の段階であるはずだ、彼が関わっているはずもない<br /> 仮に知っていたとしても、なぜ布石を撒く必要がある?彼がそんなことをする必要は無いはずなのに…――<br /> 釈然としない思いを抱えつつも、櫻井は思考を中断する、無駄な時間と解釈したためだろうか、それとも彼女なりの結論を見出したからだろうか…<br /> それを不審そうな顔で眺める相原はいったん佐藤を振り返るが、何も考えていないように、執務室の壁にかけてあるカレンダーに見入っている<br /> どこまでが正しい評価で、どこからが過大評価なのか検討もつかない男だが、彼女にはむしろ過小評価している可能性すら感じさせた<br /> どちらにせよ、この戦いが本格化するまで、その本性を垣間見ることも無理そうではあったが</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /><br /> 769</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:49:20 ID:???</dt> <dt>「…これからどうしますか?」<br /> 「そうですねぇ…まあ、しばらく時間をつぶしてから国防総省にいきますか…他にやることも無いですし、モスクワへ飛ぶには時間も無い」<br /> 「そうね…どうせお呼びがかかるでしょうし」<br /> 相原の問いに対する佐藤の返答は、特に考えていなかったと言わんばかりの曖昧なものだったが、櫻井の同意もあるので<br /> 他にこれからの行動を左右する人物もいなくなり、相原はヘリの手配を始める<br /> 「きっと今頃血が上って腫れ上がった頭を抱えているはずです…懸賞が出るわけでもないのに難解なパズルを解く思いのはずですから」<br /> ヘリの爆音に振り向きつつ、ネクタイの位置を直す佐藤から笑顔が消える<br /> 「あ、よく考えたら当分の間は日本に帰れませんねぇ…」<br /> 「ゴールデンタイムを当分見逃すことになりますね」<br /> 珍しく、佐藤の独り言に対して同意をしてきた相原だが、表情に変化は無い<br /> 「そうですねぇ…ネットに転がっているアニメは画質が悪くて、とてもとても」<br /> 「誰もアニメとは言っていませんが…」<br /> 普通なら笑い声のひとつでも上がりそうなものだが、やはり表情一つ変えない…<br /> 慣れている人間でなければ、逆に険悪な雰囲気になってしまうところだが、やはりそれを気にする人間はこのメンバーにいないらしい<br /> 今までのやり取りを眺めていたホワイトハウスの職員は、「なぜこんな連中が…」という疑問に駆られながらも、声に出せずにいた<br /><br /><a><font color="#0000FF">771</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/06/16(土) 07:52:43 ID:??? <br /> 27日 ・・・この日、世界経済は大恐慌時を上回る不況に陥ったことが判明、マンハッタン事件後の貿易の破綻等が主な原因とされる<br /> 午前1時 米軍、大統領以下政治関係者との会合を進め、海兵隊予備役総数40,000名の全面召集し、第4海兵遠征軍編制を開始することを決定<br /> 来るべきEOLTの南下、ないし北上進攻の阻止、およびニューヨーク市の封鎖を目的とした任務に当たらせるためではあるが<br /> 一部、ロシア軍の構造体突入作戦に対抗し、構造体への侵攻、つまりニューヨーク市を構成する島々への着上陸を目的とした配備との見方もある<br /> 5時50分 ロシアにおけるEOLT個体数調査の集計が完了、若干の個体数増加以外、総数に変化はほとんど無いものの<br /> 各科が占める割合が10~15%と大きく変化し、大型種の減少に伴い、小・中型種が増加していることが判明<br /> また、複数の亜種が出現していることも確認された、その種数は計7種<br /> うちの2種は触手が生えている位置が、小型種でありながら中型と同じなどの変化が合ったが、その他は大きな構造の変化は無く、色や突起物腕の長さなどに変化程度<br /><br /> なお、突然空中で爆発するという、不可解な事故によって陸軍のヘリ2機が失われているものの、調査等は行えず、詳細は不明…</dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 252</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/07/15(日) 18:10:19 ID:???</dt> <dt>・・・なんとも言えない、重たい雰囲気に包まれる国防総省の一室では、合衆国の政治・軍部の首脳が一堂に会していた<br /> 中央の席には大統領と副大統領、国防長官が座しているが、いずれも…特に大統領は不満そのものといった表情をしている<br /> それも仕方が無いことだろう、ここ数日は容認しがたい事実の連続――彼からしてみれば――だったのだ<br /> この決定に同意してはいるものの、アメリカ合衆国の頂点に君臨してきた彼に、現在の扱いは到底耐えられるものではない<br /> いくら国連の後ろ盾が在ろうと、いかに先進国の合意の下に下された決断であろうと、それはアメリカ合衆国大統領にとって問題無いと言うだけだ<br /> 国益…果ては人類の存亡という使命感を背負う政治家としてではなく、彼個人にとってすれば、あまりに理不尽なものだ<br /> もっとも、彼も大統領まで上り詰めたほどの人物であり、この程度のことで不機嫌をばら撒くような人物ではない<br /> 会議の行き詰まりと、それに伴って佐藤以下数名の手助けが必要であるということ<br /> そして、連絡を取ろうとした矢先、この状況を予想していた佐藤本人から「今そちらに向かっている」という、挑発的内容の連絡が入り、それを増長してしまったためだ<br /> もう、これ以上の刺激を受ければ、冷静な判断能力が失われるどころか、その権限を暴発させかねない――先の海兵隊の件もある<br /> 彼を取り巻く首脳部の人間たちは、ここへ来る人間が、その“刺激”を与えないことを祈るばかりだった…<br /><br /></dt> </dl><p><a id="a253" name="a253"></a></p> <dl><dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">253</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/07/15(日) 18:10:55 ID:???<br /></font><br /> 「……ええ…何か、言いたいことは?」<br /> 沈黙に耐えかねた様子の司会進行役の副大統領は口を開く<br /> 答えるものが誰も居ないのは、佐藤の罪悪意識のかけらも無いような軽快な口調で、冗談交じりの話を聞いたためだろうか…気分を毒され、誰も喋らない<br /> 椅子に腰を下ろし、姿勢を若干崩しつつ、副大統領は目線を落とす<br /> 佐藤の名詞が一枚、資料のうちの一枚のA4のコピー用紙にクリップで留められている<br /> 「嵐の前の静けさにならなければ良いが…」<br /> 彼の呟きの語尾には、誰かの低い笑い声が重なった<br /> 左右をゆっくりと見回してみると、かすかに笑みを浮かべている一人の人物が視界に入る<br /> マイケル・W・ウェイン…この空軍長官の役職につく品のいい老紳士は、非常に有能な人物であることは間違いない<br /> しかし、空気が読めないのか、それともわざとかき乱そうとしているのか、彼の言動はこういった場の雰囲気を悪化させることが多々ある<br /> しかも、その悪化の度合いが非常に高く、声を低くすることもしないため、始末に終えない<br /> 逆を言えば、それが無い彼は非常に理想的な人物になるのかもしれないが、そんな妄想の類は何の意味も無いだろう<br /> それよりも、その横で涼しげな顔をして、資料をただ眺めているM・モズリー大将にこそ、自分を変える努力をしてほしかった<br /> 空軍の参謀総長たる彼が、空軍長官の悪い癖の一つも指摘してやれないというのは、さすがに考え物だろう<br /><br /><a><font color="#0000FF">254</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/07/15(日) 18:11:34 ID:???<br /> 「はぁ……」<br /> 空軍長官と参謀総長を交互に見たあと、溜息をつくのはジェームズ・T・コンウェイ海兵隊大将だった<br /> 大統領の命令があれば、議会の承認を待たずに従う必要のある彼は、広意義で言えば、一連の混乱の被害者だろう<br /> 自分は何も知らないうちに、合衆国首脳部は他国との協議の末、わけの分からない計画を推し進めていった<br /> そして、彼は突然、海兵隊派遣の命令を受けた…その挙句、多くの部下を失う<br /> しかもそれは、EOLTと公の場で交戦し「名誉の戦死を遂げた」のではなく、事実は完全に隠蔽された後<br /> 極秘裏に記録を偽造、揚陸艦の沈没事故、という形で世間に公表される始末であった<br /> とにかく、軍部の高官たちは、先に起きた二度の戦闘によって、自信やプライドの類をずたずたにされてしまった<br /> それだけならまだしも、多大な被害を被り、その再建を行う程度の余裕しか無いという、絶望的な現状<br /> 一部の…特に陸軍に代表される高官たちは、半ば放心状態でここに集まっている<br /><br /></dt> <dt><a><font color="#0000FF">255</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/07/15(日) 18:13:01 ID:???<br /> 「それで、あの男はいつごろ到着する?」<br /> 国防長官が口を開き、その引き締まった顔に似合わず、どこか優雅さすら感じさせる声を漏らす<br /> その声とは裏腹に、憂鬱の虫でも抱えているような雰囲気漂ってくるので、少し不謹慎なたとえが頭に浮かんだが、すぐに振り払った<br /> 「ヘリで向かっているそうですが、まあ、後数分でしょう」<br /> やたら重たい口調でそう答える副官の表情からは、明らかな不信感が見て取れた<br /> 無理も無い――そう思う副大統領は、もう一度目線を落とし、資料に混じっている“あの男”の名詞を見つめる<br /> 顔写真の横には漢字で佐藤と刻まれ、その上にはローマ字で読み仮名がふられている<br /> しかし、苗字だけで下の名前はどこにも記されていない…そのかわり、国際電話の番号が刻まれている<br /> 「担当の事務官か…いい身分だな」<br /> 低い笑い声が聞こえてくる…驚いたことに、その声の主は、彼の行動を注視していた大統領その人である<br /> 不機嫌が爆発する寸前の彼が、それを誤魔化そうとしての笑みなのだろうが、ここまでくると、不気味に思えた<br /> しかし、事実この担当事務官も半ばお飾りに過ぎず、佐藤は自分自身の考えで動き回っている<br /> そんなものの為に、国連の予算をつぎ込んでいるのだ――もっとも、マンハッタン事件以来、独断で動かなければ迅速な行動は不可能になっていたが<br /><br /><a><font color="#0000FF">256</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/07/15(日) 18:14:25 ID:???<br /> 「本当に、ろくでもない事ばかり起こるな」<br /> 手を目頭に当てつつ、そう呟くのは、ホワイトハウスで300億の資金を捻出するべく、膨大な資料と電話相手と格闘する財務長官であった<br /> 最初は怒りに震えていたものの、今では山積みの仕事に血の気が引き、比較的落ち着いている<br /> どこか笑える絵ではあったが、同じく国務を預かる副大統領として、彼に同情せずにはいられない<br /> 「…あんなものさえ、降って来なければ、な」<br /> そうだ――あんな物さえ落ちてこなければ、何も変わりはなかったはずなのだ<br /> すべての元凶は、あの宇宙からの来訪者たちであり、誰のせいでもない…かといって、誰かに敵意や憎悪を向けなければやりきれない<br /> 前線で戦う兵士たちならば、それはその“宇宙からの来訪者”だろうが、政治家たちはそうも行かない<br /> むしろ、できることならば、平和的な共存関係を打ち立てたいと考えている…そういった感情は一切排除する必要がある<br /> やはり、必然的にそれらの対象は、同じ人間ということになる<br /> 「何も変わらんな…結局のところ」<br /> 国防長官の声に、一瞬思考でも読まれたかのような驚きの表情を見せた<br /> だが、口を開くことなく彼はまた視線だけを下に落とし、物思いにふけり始めた…<br /></dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /> 688</font></a>名前:<a href="mailto:sage"><strong><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></strong></a><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/12/02(日) 19:01:25 ID:???</dt> <dt>9時20分 国連、プロジェクト「8920」進行中に失った“人員“の補充と部隊再編を名目とし、被験者収集のための機関立ち上げを検討<br /> 同時に、IUEHBHECへの資金を増額、8920の独立が進む<br /> 10時15分 米海軍省、ニューヨーク湾に展開中のハリー・S・トールマンの空母打撃群を構成する艦艇から、タイコンテロガ級巡洋艦3隻を抜粋し、EOLT観測の任に当てることを決定<br /> 通信設備を整備し、いったん壊滅した通信・情報伝達網を回復させた後、対潜哨戒機、および偵察機と共に広域に展開を開始<br /> 午後2時 NATO軍、イギリスとドイツにて駐屯地の基礎設営を完了し、編成を開始、カナダ軍は一足先に東海岸に兵力を配置<br /> 7時23分 米海軍の巡洋艦3隻の広域展開が完了し、観測行動へ移行<br /> 9時25分 CIS軍内部で新ロシア派とそうでない国家間での足並みがそろわず、ロシア軍による集権体制は整わず<br /> 11時11分 米巡洋艦「レイテ・ガルフ(USS Leyte Gulf, CG-55)」が指定海域を航行中、海中で“何か”移動しているのを探知<br /> ディッピングソナーの反響音から、海中を航行中のEOLTであると断定、追跡を開始するものの、原因不明の通信障害を受け、他艦艇との連携はとれず<br /> 28日午前1時29分 通信回復、他艦艇との連絡を取り、目標の追跡を開始<br /> しかし、その航行速度は非常に速く、巡洋艦レイテ・ガルフとの距離は縮まらず、他艦艇との合流はほぼ不可能とされ、単独で追跡を開始<br /> 3時51分 ホワイトハウス=クレムリン間のホットラインが復旧<br /> 4時 イギリス軍、保有する空母機動部隊のうち、二つをアメリカ合衆国へ派遣することを検討<br /> この一部手続きを国連へ委託すると同時に、同じく軍事的な支援にあえぐロシア政府への対応に力を割く<br /> 5時13分 追跡中のEOLTが方向転換、巡洋艦レイテ・ガルフとの距離は30kmまでに縮まる<br /> 7時 ロシア政府、必要上の解剖は貴重な遺体を破損させる上、これ以上、単純な解剖によって判明することは少ないとの判断から<br /> モスクワでの死体解剖作業を一時中断し、そこから抽出した各種試料の分析に移行し、各種機関へと配送<br /> 9時41分 巡洋艦レイテ・ガルフ、構造体に接近しすぎた為、これ以上の目標追跡は困難と判断し、限界までの接近を開始するが、再び電波障害により通信途絶<br /><br /> 詳細時刻不明・・・米巡洋艦「レイテ・ガルフ」がEOLT(千里眼科であると推定)と交戦、撃沈される</dt> </dl><p><a><font color="#0000FF">748</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/12/24(月) 13:50:48 ID:???<br /> 午後0時15分 EOLTの死体を保持した状態でタイコンテロガ級イージス巡洋艦二隻「サン・ジャシント」と「ノーマンディー」が艦隊に復帰<br /> しかし、「レイテ・ガルフ」を失ったことによる動揺は大きく、以後、哨戒作戦は中止されることで海軍省と国防省は同意<br /> この際に、政府や軍内部ですら、一部にしか知らされない情報のやり取り、密約等があったとされるが、黙認される<br /> 2時35分 ロシア政府、軍内部で進行していた構造体突入作戦の立案について、公のものではないが全面的に容認<br /> 各軍組織が行動を開始する<br /> 9時 国連一部勢力、米ロ両国の動きを把握しきれず、独自の諜報機関の重要性を示唆<br /> 同時に、国連の動きを支えてきた中国を除く常任理事国と日本の各政府の一部は、事実上の諜報機関として動きも兼ねていたこともあり、これを糾弾</p> <p><a id="a749" name="a749"></a></p> <dl><dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">749</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2007/12/24(月) 13:51:09 ID:???</font></dt> <dt>29日・・・この日、すでにマンハッタン事件によって受けた影響から軍上層部、および超国家的な情報伝達網などが回復<br /> ただし、さまざまな情報統制等における利点から、政府末端組織や民間のそれには回復の兆しが見えず<br /> 午前1時 「8920」の存在と動きをおぼろげながら把握したロシア政府は、軍の諜報機関を用いて情報収集を開始<br /> また、「ボストーク計画」の進行のため、人材の収集を開始する<br /> 6時20分 ニューヨーク封鎖部隊の一部が消息を絶つ<br /> 一切の原因がつかめないこの事件に対する封鎖部隊司令部の判断は「リスクが大きいため、捜索は行わず」<br /> 10時 米軍、構造体周辺の海上封鎖網を設置する方針で政府の承諾を得る<br /> 米第一・第二艦隊の約半数の投入を検討するものの、通信・情報伝達網の回復は完全ではなく、構造体落下の影響で大西洋を徘徊する事となっていた一部艦艇の集結も遅れる<br /> 午後3時40分 ロシア空軍の(戦略)爆撃機部隊のシベリア方面への集中配備の大半が完了<br /> 各部隊司令部の移転や地上の支援部隊の移送に取り掛かる<br /> 7時 ロシア軍の重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ(&quot;Tyazholiy Avionosnyy Kreyser (TAKR)&quot;Адмирал Кузнецов)」を極東方面へ配備<br /> 戦略ロケット軍のミサイル部隊と連携し、戦術・戦略核攻撃の準備を進める<br /><br /><br /></dt> </dl>

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