自衛権
急迫不正の侵害を排除するために、武力をもって必要な行為を行う国際法上の権利。<国内法上の正当防衛権に近似…?

国連憲章における自衛権


国連憲章第51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

上記のとおり、国連憲章においても自国を防衛するための自衛権は、国連安全保障理事会が何らかのアクション・措置を発動するまでの間に限り保障されていると言える。

自衛権行使の要件

1837年に米カ国境で発生したキャロライン号事件に関連して、米国のウェブスター国務長官(当時)が示した要件を元に、現在では以下のような要件が提示されている。

①軍事的反撃が必要であるかどうか。(必要性の原則)
②その反撃は相手の攻撃とつりあっているかどうか(均衡性の原則)
③その反撃が即座のものであるかどうか。

上記三要件を充足する「危難に対する反撃行為」については、それに伴って相手国に損害が発生してもその違法性が阻却される、というロジックは国内法での正当防衛概念と非常によく似通っている。

ところで、19世紀以来の国際慣習法の下では、危難に先んじて武力を相手国に行使する所謂先制的自衛権の行使も正当化されると考えられてきた。しかしながら国連憲章第51条の文言からは「すでに危難が発生した」状況下での、その危難に対する反撃の容認が読み取れる。

従って現在では先制的自衛権の行使は認められないと考えるのが適切であろう。

北朝鮮へのあてはめ


まず、北朝鮮と西側世界(主に米国)との対立は何時から、どのようにして深刻化したのだろうか。
その発端は冷戦末期のエネルギー危機により、北朝鮮がソ連から発電用の原子炉を供与された事による。これに合わせて北朝鮮は原子力の平和利用を目的とする核拡散防止条約(NPT)に加入したが、ここでNPT加入国に義務づけられている、IAEAによる査察の受入れ保障措置協定を締結しなかった。この協定の締結と引換えに北朝鮮は①米国が先生核攻撃を行わないこと②朝鮮半島の非核化を求めたが、このような強硬な姿勢が、「原子力を核兵器に転用しようと目論んでいるのではないか」という疑念を米国に覚えさせることに繋がっている。ここで興味深いのは上述の①である。
周知の通り北朝鮮は朝鮮戦争時、国土の多くを米国を筆頭とする連合国軍により焦土とされている。この記憶のせいか、必要以上に米国による核攻撃およびそれに伴う政権の解体を恐れているように思えるのである。

客観的に見て冷戦の出口が見えている時期に、米国が北朝鮮を核攻撃し、韓国による朝鮮半島の統一をアシストする事は考えにくい。しかしながら北朝鮮の強力な後ろ盾であったソ連の勢いが明白に失われつつあった当時、時の金日成政権が上記のような謂わば「誤想危機」を覚えることは必ずしも理解不能であるとは言い難い。

すると、少なくとも当時の北朝鮮の主観から見れば、現在の危難に関する上述の三要件は概ね充たされている。従って自衛権の発動可否という視点にのみ立てば、仮に米国による核攻撃があれば、それに対する反撃行為は自衛権の範疇に含まれると言え、そのような事態に向けての核兵器の開発(に伴う技術のイノベーション)も自衛権行使の前段階として認められうるのではないだろうか。

もちろん北朝鮮の行動を制約するのは自衛権の範囲のみではない。その他の国と締結した「条約」を始めとする国際法に反する行為は避けられるべきものであることは明らかである。

引き続き、北朝鮮の行動に縛りを入れる可能性のある主要な国際法とその法源性に付き考察を行っていく。

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最終更新:2007年04月17日 10:13