世界記

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世界記 ~1~

(コルの村・民家)

現ダンドン王陛下は初代より数えて
15代目にあたられる

伝聞による不確かな昔話によれば
王政が唱えられる以前より
ダンドン一族は近隣の有力者として
広く認知されていたようである

世界記 ~2~

(コルの村・民家)

4代目ダンドン王の時代に
レコムは独立することを許された

当時の陛下の妹君に婿入りした
ヒュルケという男が
名をレコムと改めて開拓の祖となった

むろんダンドン王が無償でこれを
許したわけではない

一定の穀物を収めることや
子女のダンドンへの留学など
レコムからダンドンへ流れる水の量は
少なくはなかった

世界記 ~3~

(ダンドン城3階)

6代目ダンドン王の時代に
レコムとの関係が最大に悪化した

レコムは当時3代目を数え
時分のレコム王は少壮にして絢爛
勇猛にして果敢と今でも謳われる
レコム最大の武帝として有名だ

それと同時に猛将としての一面と
智将としての側面も持ち合わせている
いわば本家を超える存在だった

世界記 ~4~

(ダンドン城3階)

3代目レコム王の功績は
7日7晩をかけても終わりは見えない

猛獣の駆逐と堅牢な城壁の建築
ダンドンまでの街道の整備

それらをたった一人でそれも自ら
陣頭指揮を執りながらの功績である

彼の天賦の才能については
もはや語るまでもない

世界記 ~5~

(レコム城地下2階)

6代目ダンドン王と3代目レコム王が
直接に顔を合わせた場所は
現在のフランプの森とされている

戦争資源を得るために森を切り開き
一面は煙漂う戦場となっていた

埋め立てる前の川を挟んで
両陣営は火花を散らしあっていた

レコム王はその気質をむき出しにし
抜刀して誰よりも前に馬を走らせた
そこへ一閃の矢が放たれたのである

少壮幾時ぞとは言ったものである・・・

世界記 ~6~

(レコム城地下2階)

8代目ダンドン王の時代に
ハルテアは認証された
これは半ば革新的な独立である

暗君と呼ばれた8代目ダンドン王は
長子というただ一点で王座につき
6人の弟たちににらまれることになった

あるとき弟たちの謀議が発動し
ダンドン城に内乱の狼煙がたちこめた

王座を明け渡すか城を血に染めるか!
その結果がハルテア城の開城である

8代目ダンドン王の
唯一にして最大の功績は
ハルテアの独立を認証したことだろう

もっとも過激な内乱を一滴の流血なく
収拾せしめた偉業に関しては誰も
積極的に語ろうとはしなかったが・・・

世界記 ~7~

(ケヤンの街・北の屋敷)

キュレオ城の特徴といえば
女王の存在に他ならない

暗君だった8代目ダンドン王が
ハルテア城の独立を認証したとき
7代目レコム王が独自の判断で
急逝した次男の妻の女傑キュレオに
爵位を付与したことが祖になる

彼女は野心家であり冒険家であり
探検家であり夢想家であった

見た目の上では絶世の美女であったが
本質はレコム武帝をしのぐ男だ、と
亡きキュレオの夫が語ったとおり
諦念を知らない精神力だけで
彼女はキュレオ城を立ち上げた

不毛の大地に水を注ぎいれ緑を生やし
独自の文化を築き上げていった

キュレオのただ一人の娘は
母の背中のみを教科書とした結果
女傑国家が誕生したのである

世界記 ~8~

(ケヤンの街・北の屋敷)

レコムもハルテアもキュレオも
いきさつはまったく異なるにせよ
ダンドンを始祖とする諸派である
ことは歴史も語っており
そしてカズムス城も例外ではない

独立に当たっての強い意志の方向性が
まったくことなることを除けば、だ

世界記 ~9~

(ハルテア城1階)

11代目ダンドン王の時代になると
各地は安定を見せ始めていた

レコムとダンドンは両家の子女らが
嫁ぎ嫁がれる深い仲となり
ハルテアは英傑を数多く生み
キュレオは前衛的な先進国として
独自の発展を遂げていった

それを良しとしない者もいる

王族として生きていた
9代目ダンドン王の孫にあたる
軍略家のカズムスはその一人だった

創成期には野蛮な猛獣も多く
戦うことを求められていた軍人は
栄達への近道とされていた

しかしその時期になると周辺は安定し
国家間の緊張もなくなり
軍人は戦果を得て昇進することも
なくなっていた

世界記 ~10~

(ハルテア城1階)

カズムスはある計画を考えた

内乱によって成立したハルテアが
世界統一を企てているという
風説を流したのである

それがダンドン王の耳に入ると
盟友たるレコム城もそれに呼応し
レコムから派生したキュレオ城も
緊張感を高めざるを得なかった

次にカズムスが立てた計画は
ダンドン城の破壊工作である

未遂に終わったものも多くあったが
隠密の侵入という事態はますます
緊張感を高めることとなった

だが濡れ衣を着せられて沈黙している
ハルテアではないことは
多くの英傑達が物語っている

世界記 ~11~

(漁村トトリ・民家)

戦乱による栄達を企てたカズムスの
数々の謀略はダンドンの肝を冷やし
ハルテア 対 諸派三国という構造すら
作り上げていた

だが奸臣一人によって崩壊するほど
王達の才覚は軟弱ではなかった

ハルテアが放った内部調査員に
カズムスは引っかかってしまったのだ

調査員に破壊工作を依頼した結果
芋づる式に悪事が白日のもとにさらされ
カズムスを頂点とする軍閥一派は
国家反逆者として追われる身となった

だがそこに不幸が訪れる
時の11代ダンドン王の娘が
彼らに拉致されてしまったのだ

世界記 ~12~

(カズムス城3階)

軍略家カズムスは時のダンドン王の
娘を拉致して人質とし
身の安全を諸国に要求した

カズムスの部下はほとんどが軍人で
それも親衛隊を除いた精鋭であった

なおかつ王女という人質は
彼の存在を本質以上に大きくしていた

反逆者の要求を最初に呑んだのは
レコムだった

時の9代目レコム王の娘が
ダンドン王に嫁いで授かった宝珠が
カズムスに拉致された王女だった

ダンドンは娘を人質に
レコムは孫を人質にされたのだ

さらに王女の年齢は14歳で
ほかならぬ緊張感が走ったことは
言うまでもなかった・・・

世界記 ~13~

(カズムス城3階)

軍略家カズムスは各地を転々とし
追走する諸国の軍と戦いながら
徐々に規模を削られていった

しかし彼は諦めなかった
権力という至宝は彼を暗黒面に
引き込むだけの力があったのだろう

14歳の王女を連れたまま
カズムス一行は霊峰エルアルドを
越えてしまったのだ

数々の追撃部隊を各地は送り込んだが
どれもむなしい結果に終わっていった

カズムス最大の功績は
群をなしてもエルアルドを攻略できる
という実証を残したことだろう

諸国は協議に協議を重ねた結果
いたいけな王女の生命を守るため
カズムスに爵位を与えることになった

こうしてカズムス城は誕生する

そして名代となった王女が18歳を
迎えたとき、カズムスは謀殺された

一説によると密偵の働きであるとか
王女に寝台の上で絞め殺されたとか
精神を病んで自殺したとか
うわさの数が増えれば増えるほど
信憑性は反比例して薄まっていった

一番の関心事は彼らの部下らまでもが
一夜にして消えてしまったことにある

これはのちに王女の授かった子女らが
魔法の才能に恵まれていたことと
大いに関係があるのかもしれない

真実がカズムスとともに闇に
引きずり込まれてしまった今では
我々は下種な夢想をするほかに
好奇心を満たす手段はない・・・

世界記 ~14~

(フロマ・民家)

現在では諸国は安定している

女性同士で息の合った
キュレオとカズムスは共同して
エルアルドの街道敷設に苦心した

ハルテアは航海技術を幾度も刷新し
レコムとダンドンは国土を広げながら
果てるともしれない拡充を続けている

私は良い時代に生まれたと思う
さまざまな波乱と勃興を数多く
耳聞にし、肌で感じたのだから

惜しむらくはただ一点のみ

これから広がっていく世界を
天上という遠巻きからしか
眺められないことだろう・・・
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最終更新:2012年07月05日 14:31