ヒロインがヤンデレのギャルゲみんなで作ろうぜ!

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kawauson

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0201m|2月1日 朝

@bg2 file="heya_m" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton
「んー、今日も冷え込んでるな」[lr]
 部屋の中が寒い。[lr]
 毎度の事ながら、布団から出るのには、かなりの精神力を要する。[lr]
「あれだな。最近はインターネットも充分に発達してるんだから、在宅授業にすればいいのにな」[lr]
 そうすれば、布団に包まったままで授業が受けられる。[lr]
 いじめだって起こらないだろうし、不登校も無くなりそうなもんだ。[lr]
 あれ……? これって実はかなりいいアイディアなんじゃないか?[lr]
「なんて、馬鹿なこと考えてる場合じゃないか……」[lr]
 ともかく、今の時代は寒かろうが熱かろうが学校に行かなくてはならない。[lr]
 布団からがんばって這い出た。[lr]
「今日もがんばろー、おー」[pcm]
@return


0201n|2月1日 夜

@bg file="heya_my" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton
「そろそろ寝るか……」[lr]
 色々考えたいこともあるけれど、さすがに寝ないと明日がもたない。[lr]
 目覚ましをセットする。[lr]
 七時間も眠れば充分だろう。[lr]
「寝ないで済めば、もっと色々考えたり、やったりできるんだけどなあ……」[lr]
 寝たり食べたり便所に行ったり。[lr]
 その辺の生理現象で、俺たちは一日の時間の三分の一は使っているんじゃなかろうか。[lr]
 つまりその時間を無くすことができれば、人生の長さが二分の三倍になるということなんだが……。[lr]
「そうもいかないか。損な造りだよな、人間も……」[lr]
 うん、もう眠い。[lr]
 適当に寝て、また明日考えることにしよう……。[pcm]
@fadeoutbgm time=1000
@return


0202m|2月2日 朝

@bg2 file="heya_m" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton
「うわっ!」[lr]
 自分の声で目が覚めた。[lr]
「あれ……何で俺、叫び声なんてあげてるんだ?」[lr]
 そう……確か……ついさっきまで変な夢を見ていて……。[lr]
 思い出そうとしても思い出せない。[lr]
 何の夢を見ていたんだろう。[lr]
「何か、不吉な夢だった気もするんだけどな……」[lr]
 現実世界で日頃充分に嫌な目にあってるんだから、夢くらい楽しいものを見せて欲しいもんだ。[lr]
「頼むぜ、俺の脳みそ。もっと幸せに生きさせてくれよ」[lr]
「わかったぜ、相棒」[lr]
 自分で言って自分で答えてみる。[lr]
 ……。[lr]
「アホらしい……学校行こう……」[pcm]
@return
;@mapMode

[s]



0202n|2月2日 夜

@bg file="heya_my" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton
 さて……そろそろ寝るか。[lr]
「今日は、ちょっといい日だったな」[lr]
 いい日……いい日か。[lr]
 一日を顧みて、いい日だったと言えるなんて珍しいことだと、我ながら思う。[lr]
 今までの人生で、幸福と不幸とどちらが多かったかと聞かれて、幸福が多かったと答える人はどれだけいるんだろう。[lr]
 少なくとも俺は、七対三で不幸の方が多かったと答えてしまう。[lr]
「何ていうか、人間、嫌なことを我慢しながら生きてる感じだよな……」[lr]
 それだけ嫌なことがあるのに、それでも生きようとする。[lr]
 不思議なもんだ。[lr]
「……こんなことうじうじ考えるのは、俺らしくないか」[lr]
 目を閉じると、すぐに意識が遠のいた。[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@return
[s]



0203m|2月3日 朝

@bg2 file="heya_m" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton
 窓から朝日の光りが差し込んでいる。[lr]
 どうやら今日はいい天気のようだ。[lr]
「いい天気だと、何だか元気が出てくるから不思議だな」[lr]
 時計を見ると、いつも起きる時間より一時間早い。[lr]
「こりゃ絶好調の予感だな」[lr]
 携帯で占いのサイトを見る。[lr]
 『最悪の運勢です! 今日は全てにおいて行動を控えましょう』[lr]
「……」[lr]
 やっぱり占いなんてくだらないよな。[lr]
「さー、今日も一日がんばっちゃうぜ」[lr]
 そう、自分の運命は自分で切り開くものなんだ。[lr]
 元から決まっているもののわけがないさ……うん。[pcm]

@return
;@mapMode


0203n|2月3日 夜

@bg file="heya_my" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton
 よくホラー映画を見て怖くて眠れなくなった、なんて話を聞くけど、あれは怖いというよりきっと脳が興奮して、なかなか休む体勢に入らないんだろう。[lr]
 かく言う俺も、夕食後からつい今さっきまでずっとゲームに熱中してたせいで、脳が活性化してしまったらしくベッドに潜り込んでも全く眠くならない。[lr]
 まさか、ライバルを倒して大会で優勝してヒロインとも結ばれてこれでエンディングだと思っていたら、黒幕が現われてむりやり奴隷にされて迷宮に潜らさせられるなんてなあ……。[lr]
 しかもここまで来るだけでも結構な長さだったのに、どうやらこれでようやく半分みたいだ。[lr]
 寝ようと思っても、頭がこれからの展開を勝手に予想したりしてまるで寝付けそうにない。[lr]
 これは明日の朝は厳しそうだな。[lr]
 俺は心に覚悟を決めながら、既にもう何回目かの羊を数える作業を再開するのだった。[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@return


0204m|2月4日 朝

@bg file="black" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@texton
[playse storage="se-027.ogg"]
@ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=1 e=6a m=5 c=1
@ws
「あなたが落としたのはこの金の伊万里人形ですか、それとも銀の伊万里人形ですか?」[lr]
「いやそんな人形持ってません……てか何やってんだよ伊万里」[lr]
[imar f="不満" pose=1 pos=c c=1]
「こらあ! 今のあたしは泉の妖精なの、なんで冷静にそう突っ込むかなあ」[lr]
「まあ、これが夢だってのはわかってるからな。それなら伊万里に対する態度も自然と普段通りになるってもんだ」[lr]
@ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=9a m=11 t=2
「ううううう……夢の中でもボクはそんな立ち位置なんだね……。ほら、もう朝だよ」[lr]
「ん、そうか。じゃあまた後でな伊万里」[lr]
[imar f="微笑み" pose=1 pos=c t=1]
「うん、またね」[pcm]

@cl
@bgm file="n07.ogg"
@bg file="heya_m" rule="縦ブラインド(左から右へ)"

 ……目覚ましの音とカーテンの隙間から差し込む光が俺の意識を覚醒させる。[lr]
 なんかおかしな夢を見ていたような気がするが、まあすぐ忘れたくらいだからそんなにたいしたものでもなかったんだろう。[lr]
 さて、今日も一日頑張るとしますか。[pcm]

@return
;@mapMode

[s]



0204n|2月4日 夜

@bg file="heya_my" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton
 食べてすぐ寝ると牛になるなんて言葉も今じゃすっかり聞かなくなったが、代わりに最近では寝る直前に食事するのは太る原因になります、なんて健康ダイエット系の情報ばかり取りざたされるようになった気がする。[lr]
 しかし本当に人間腹が一杯になると、もう全身にけだるさで一杯で寝るくらいしか出来なくなるってのは、今の自分を鑑みても間違いない事実だと思う。[lr]
 あー……食べ過ぎた。[lr]
 ちょっとフンパツして作りすぎたのがまずかったなあ。[lr]
 俺は全身を覆う倦怠感と襲ってくる眠気に逆らわず、そのまま身を任せることにした。[lr]
 明日の朝は粗食にしよう……。[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@return



0205m|2月5日 朝

@bg2 file="heya_m" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton
 人間、余りにも予想外な事態に直面すると固まって何も反応できなくなると言うが、今の俺がまさにそれだった。[lr]
 目の前に置かれた時計の針が指している、あり得ない時間。[lr]
 いつもなら伊万里が来てくれるので万が一の時でもここまでは遅れないのだが、そういや今日は伊万里、用事があって先に行くとか言ってたなあ。[lr]
 って、そんな冷静に分析してる場合じゃない![lr]
 俺は慌ててベッドから飛び出し、とにかく必要最低限のことを済ませるためまずは洗面所に向かう。[lr]
 二つ目の目覚ましの導入、真剣に検討するべきかもしれないなあ。[pcm]

@return

;@mapMode

[s]



0205n|2月5日 夜

@bg file="ribing_y" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton
 風呂から上がると、姉さんがソファに正座しながらドライヤーで髪を乾かしていた。[lr]
[hime f="笑顔" pose=1 pos=c c=1]
「~♪」[lr]
 普段は束ねて上げている髪を下ろした姉さんは、上機嫌そうな笑顔で髪の手入れに余念がない。[lr]
「んふふ~♪」[lr]
 毎晩目にしてはいるが、サラサラな髪の毛を下ろした姉さんも幼い印象がなかなかに可愛らしい。[r]
 ただ、本人はその幼い印象がイヤらしく、髪を束ねて少しでも大人っぽく振る舞っているつもりのようだ。[pcm]
「姉さん、それ終わったら次に貸してね」[lr]
[hime f="驚き" pose=1 pos=c c=1]
「あ、稔くん」[lr]
 猫のように目を細めていた姉さんが、俺の言葉に反応する。どうやら、気付いていなかったようだ。[lr]
[hime f="微笑み" pose=1 pos=c c=1]
「次、使うの?」[lr]
 姉さんがドライヤーを指さしながら聞いてくるので、こくんと頷く。[lr]
 すると姉さんは、二秒ほど固まった後、ドライヤーのスイッチを切ってからこっちに向かって手招きをしてくる。[lr]
「……?」[lr]
 一体なんだ?と思いつつ、姉さんの側による。[pcm]
[hime f="笑顔" pose=1 pos=c c=1 size=L]
「んふふ、稔くん、お姉ちゃんがドライヤーをかけてあげよう」[lr]
「え!? いや、いいよ、自分でやるよ」[lr]
「はいはい、早く座りなさーい」[lr]
 姉さんは有無を言わせぬ顔で、俺の着席を促す。いや、床だから着床だろうか? 全く意味の違う言葉になってしまう気もするが。[lr]
 このモードに入った姉さんに何を言っても無駄なので、大人しくその場に座り込む。すると姉さんは、「よしよし」といった風に俺の頭を掴み、[lr]
「稔くんブロー」[lr]
 等と謎の技名を叫びながら俺の頭をワシワシとかき混ぜながら熱風を送り込み始めた。[pcm]
「…………」[lr]
 姉さんの小さな手によるマッサージと、冬の寒い空気を押し出す温風が気持ちいい。[lr]
 そのまま数分間、姉さんは俺の頭をガシガシこねくり回すと、[lr]
[hime f="笑顔" pose=1 pos=c m=6 c=1]
「はい、一丁上がり!」[lr]
 と言って俺を解放した。[lr]
「ありがとう、姉さん」[lr]
 すっかり乾ききった髪の毛を自分の手で少し弄びながら、姉さんに礼を言う。[lr]
「うんうん、どういたしまして」[lr]
 姉さんは満足げにそう言って返す。[pcm]
 それから少し二人でテレビを見て、就寝の時間がやってきた。[pcm]

@cl
@bg file="heya_my" rule="縦ブラインド(左から右へ)"

 姉さんの匂いが少し残った自分の髪の毛を少し撫でながら、俺はベッドへと入っていった。[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@bg file="black.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@return


0206m|2月6日 朝

@bg2 file="ribing.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton
 一日の朝は、まず顔を洗うことから始まる。[lr]
 次に歯を磨いて、その後は朝ご飯の準備だ。[lr]
 朝食のメニューは、まずご飯、そして目玉焼き、ウインナー、あとはインスタントのスープだ。[lr]
 朝の姉さんが非常に嫌う動物性タンパク質が二つも紛れているが、手間と栄養バランスを秤に掛けた場合に、動物性タンパク質を徹底排除するという選択肢はどこにも残っていない。毎朝の事ながら、諦めてもらおう。[lr]
 朝のご飯を作るのも慣れたもので、ちゃっちゃと出来上がる。実際は、そう大して手間の掛かるメニューではないという理由が大きいのだが、朝は忙しいので良いだろう。[lr]
 完成した朝食はまだ熱の残るフライパンの上に載せたまま、今度は姉さんを起こしに二階に戻る。[pcm]

@bg file="genkan.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@bg file="kaidan.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@bg file="heya_w_doa.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"

 俺の部屋の隣、廊下の突き当たりにあるドアの向こうでは、朝に弱いお姫様がすやすやと眠っている。[r]
 そのすやすや具合といったら白雪姫も真っ青で、とにかく起こすのは容易いことではない。[r]
 いや、目はすぐに覚ますのだが、その後の寝ぼけ具合がよろしくないのだ。典型的な低血圧である。[lr]
@playse storage="door_09_knock.ogg"
@ws
@playse storage="DoorOpenB@11.ogg"
 軽くノックをして、返事がないことを確認すると同時にドアを開け放つ。[pcm]

@bg file="heya_w.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=3 e=4a m=5 c=1

 部屋の奥に鎮座する天蓋付きのベッドのなかでは、いつもの通り姉さんが健やかな寝息をたてて、ギリギリまでの貴重な睡眠時間を満喫している。[lr]
 以前は目覚まし時計も備えてあったのだが、もう無駄だという結論に至ってからは使っていないらしい。[r]
 機能を一つ封印された虚しい時計が、姉さんの枕元で黙って突っ立っている。[lr]
「姉さん、起きて。朝だよ」[lr]
 まず声を掛ける。が、当然のように起きない。[lr]
「姉さん!」[lr]
 今度は肩に手をかけ、軽く揺する。[pcm]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=9 e=4a m=10 c=1
「…………にゅ?」[lr]
 姉さんが瞳を閉じたまま、声だけで軽く反応を示す。どうやら、今日は割と素直に起きてくれそうな予感がした。[lr]
「姉さん、姉さん!」[lr]
 肩を揺する力を少しだけ強くしつつ、声を大きくして更に起こしに掛かる。[lr]
[hime f="不安" pose=1 pos=c e=8a c=1]
「……ん~、稔くん?もう朝なの?」[lr]
 予想通り。今朝の姉さんは、とても素直に目を覚ましてくれたようだ。[lr]
「おはよう、姉さん。もう朝なんだよ、残念ながら」[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=6 e=8a m=9 c=1
 姉さんは寝起き特有の不機嫌そうなジト目で、特に俺にピンとを合わせるでもなくぼぅっとした表情で虚を見つめていた。[pcm]
「……起きる」[lr]
 二分ほどそうしてから、姉さんはおもむろにそう言って、ベッドから気怠そうに這いずり出た。[lr]
「はい、姉さんは顔を洗って。朝ご飯の準備はもう出来てるから」[lr]
 姉さんの背中を押しながら、部屋のドアへと向かう。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=1 e=4a m=6 c=1
「はぁ~い」[lr]
@cl
 姉さんは、朝にしては珍しく素早い覚醒を遂げたようで、足取りも確かに廊下を目指してトテトテと歩いていった。[pcm]
 さあ、姉さんが顔を洗っている間に、食卓に朝食を並べてしまおう。[lr]
 幼馴染みが家を尋ねてくる時間を逆算しつつ、キッチンに向かう。[lr]
 今日は余裕のある朝が送れそうだ。[pcm]

@return
;@mapMode

[s]



0206n|2月6日 夜

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[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton
@playse storage="yakiimo.ogg"
@wait time=2000
 石焼き芋を売る車の声が聞こえる。[lr]
 あれ、夜中にこうして回るのって、それなりに騒音のはずなのに、誰も文句言わないんだよな。[lr]
 俺としても、なぜか耳に心地よいし。[lr]
「冬の風物詩って感じだよな……」[lr]
 最後に食べたのはいつだったろうな、焼き芋。[lr]
 今度街で見かけたら、久しぶりに食べてみてもいいかもしれない。[lr]
@fadeoutse time=1000
 いっそ誰か誘って焼き芋屋探しでもするか。[lr]
「というか、考えてたら腹減ってきたな」[lr]
 夜食を食べてから寝ることにした……。[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@return

[jump target="*0207m"]
[s]



0207m|2月7日 朝

@bg2 file="heya_m" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton
 目覚ましが鳴る前に目が覚めた朝ってのは、なんだか得した気分になる。[lr]
 これが夏や秋くらいならベッドからすぐに飛び出して、たまには軽く柔軟体操でもしようかという気分になるんだが、しかしあいにく今は冬。[lr]
 冬の布団の中がどれだけ幸せな空間か、それを存分に噛みしめる喜びを今俺は味わっていた。[lr]
 まあぶっちゃけ、出来ることならこのままここから出ることなく二度寝に突入したい。[lr]
 しかし残念ながら今日は平日。学生は学校に行って勉強するのが本分だ。[lr]
 その甘美な誘惑を何とか振り払って、俺は本分を全うするべくベッドから身を起こした。[lr]
 やれやれ、今日も寒くなりそうだ。[pcm]
@return

;@mapMode

[s]



0207n|2月7日 夜

@bg file="heya_my" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton
「んー、眠いな……」[lr]
 ベッドに寝転がっていると、自然と瞼が落ちてくる。[lr]
 時間も時間だし、今日はそろそろ寝るかな。[lr]
「……小便したいな」[lr]
 気付いたら結構やばい感じだ。[lr]
 こう、下腹が張っているような……。[lr]
「でも、廊下に出ると寒いんだよな」[lr]
 正直、トイレに行く気がしない。[lr]
 かといってこのまま寝て寝小便なんてことになったら、恥ずかしいどころの騒ぎではない。[lr]
「んー……」[lr]
 机の上に置いてある、すでに飲み干したペットボトルに目が行った。[pcm]
 容量は一リットル。[lr]
 多めに出ても問題はないだろう。[lr]
 朝一番で捨てに行けば、姉さんに見られることもない。[lr]
 上手く注ぎ込めるかが、ちょっと怖いところだろうか。[lr]
「なんて、馬鹿なこと考えてないで、さっさとトイレに行くか」[lr]
 よほど切羽詰まった時にでも、試してみることにしよう……。[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@return

[jump target="*0208m"]
[s]



0208m|2月8日 朝

@bg2 file="ribing.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton
 朝。いつも通り目覚まし時計で目を覚まして居間に降りると、そこには奇妙すぎる光景が広がっていた。[lr]
「…………!?」[lr]
[hime f="笑顔" pose=1 pos=c c=1]
「あ、稔くんおはよー」[lr]
 姉さんが俺よりも早く目を覚ましていた。[lr]
「……姉さん!? 馬鹿な!」[lr]
 あまりにもあり得ない光景に、思わず自分の正気を疑ってしまう。[lr]
[hime f="不満" pose=1 pos=c]
「むー、稔くん酷い。お姉ちゃんだってちゃんと起きるもん」[lr]
 頬をつねってみる。痛い。つまり、夢ではない。[pcm]
「…………おかしい、何で姉さんが」[lr]
[hime f="真顔" pose=1 pos=c]
 俺の本気の困惑を見て取ったのか、姉さんは「ん~」と人差し指を顎に当てつつ、[lr]
「昨日の夜、お姉ちゃんすっごく早く寝ちゃったから、さっき起きるまでに十時間くらい寝てたの」[lr]
 そういえば、昨日はやけに早くおやすみを言っていた気がする。[lr]
[hime f="微笑み" pose=1 pos=c c=1]
「えへん、偉いでしょ?」[lr]
「いや、この時間に起きるのは普通だから」[lr]
[ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=9 e=9a m=10 c=1]
「みゅっ」[lr]
 姉さんはなんだか猫みたいな悲鳴をあげて、酸っぱいものでも食べたかのような表情をした。[pcm]
「……あ、顔洗わなきゃ」[lr]
 そんな珍しすぎる姉さんを、まじまじと観察している時間もあまり無い。朝は忙しいのだ。[lr]
「じゃあ姉さん、朝ご飯すぐに作るから待っててね」[lr]
[hime f="悲しみ" pose=1 pos=c e=8a][hime f="真顔" pose=1 pos=c]
 朝ご飯、という単語を聞いた姉さんは一瞬渋い顔をするが、素直にこくんと頷いてソファに座り直した。[pcm]
@cl
@return

;@mapMode

[s]



0208n|2月8日 夜

@bg file="heya_my" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton
 ベッドに転がってファッション雑誌をパラパラと捲る。健全な高校生男子としてお洒落なスポットの1つは覚えておきたいところだ。[lr]
「いつか女の子とデートするかもだし」[lr]
 もっとも、そんな予定はないのだけれど、備えあれば憂い無しと言うやつだ。[lr]
「えーと、なになに……今、若者に一番人気のスポットはクラブ『B―SHOCK』か」[lr]
──中でもDJタイノとMCアライのサウンドは、至高にして究極のラップが鼓膜の上でシャッキリポンするほど。[r]
 時々、通な常連から「お前はクビだ。出てけー!」などとディスられることもあるが、シーンの最前線に立つ勇気があるならこのクラブが非常にお勧めだ。[r]
 愛しのあの娘と一緒に来れば、ガイアが君にもっと輝けと囁き出すだろう──[pcm]
「……うーん」[lr]
 どうやらお洒落ピープルへの道は険しいようだ。[lr]
 雑誌を床に投げて寝ることにした。[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@return

[jump target="*0209m"]
[s]



0209m|2月9日 朝

@bg2 file="heya_m" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton
 朝起きると携帯に迷惑メールが20件も入ってた。[lr]
「うわ、こないだメルアド変えたばっかなのに……」[lr]
 37文字も使って、あれだけ複雑なアドレスにしたのに2週間ともたなかったのは悲しすぎる。[lr]
 ぺしぺしとキーを操作して要らないメールを削除する。朝っぱらから気が滅入る作業だった。[lr]
「って、長岡からメール来てるや」[lr]
 迷惑メールに紛れて長岡のメールが1件入ってた。件名に『おっぱいおっぱい』しか書いてないから、スパムと間違えて消すところだった。[lr]
「なんて紛らわしい」[lr]
 ちなみに受信時刻は午前3時。もちろん布団でぐっすり寝ていた頃である。[pcm]
「……夜中の3時に、何やってるんだアイツ」[lr]
 少し気になったので、メールを開けてみた。[lr]
『おい、稔。今すぐ、俺が建てたこのスレ(http://vipch.ne.jp/oppai/oppai/11289873/l50)を開いて『おっぱい』と書き込んで1000まで行かせるんだ。[r]
 つべこべ言わずに早くしろ。あと10分以内に1000行けば、女神様が生おっぱい動画をUPしてく──』[lr]
 迷惑メールだった。[lr]
「削除っと」[lr]
 ついでに長岡のメルアドを受信拒否にしようかと思った冬の朝だった。[pcm]
@return

;@mapMode

[s]



0209n|2月9日 夜

@bg file="heya_my" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton
 どうも夕飯時に格闘技の番組を見たせいか、無性に身体を鍛えたくなってきた。[lr]
 やっぱり男である以上、強い雄(オス)に憧れてしまうのは仕方のないことだろう。[lr]
「よし、そうと決まったら早速トレーニングだ」[lr]
 とは言ったものの、いったい何から始めるべきだろう。[lr]
 やはり定番はロードワークや筋トレなんだろうか?[lr]
「この寒い中、走りに行くのはなあ……」[lr]
 かといって筋トレは普段身体を動かしてないだけに、後で筋肉痛が辛そうだ。[lr]
「なんかこう、疲れないトレーニングってないもんかな」[pcm]
 ……そういえば、どっかの地下格闘技場のチャンピオンは超リアルなシャドートレーニングで巨大カマキリと戦ってたっけ。[lr]
「よし。やってみっか」[lr]
 目をつぶり、自分の中で強敵だと思える相手を想像してみる。[pcm]

@bg file="black.jpg"

 ……[lr]
 …………[lr]
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=4 e=8a m=7]
 ………………何故か思い付いた相手は伊万里だった。[pcm]
「なんでさ?」[lr]
 どうやら自分の中で、伊万里のポジションはカマキリと同レベルらしい。[lr]
 なんて不憫なやつなんだ……[lr]
 思い浮かべてしまったのは仕方がないので、デコピン一発で伊万里を打ち倒すことにする。[lr]
@playse storage="ClapA@16.ogg"
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=4 e=7a m=6 s=1]
; ぺしっ。[lr]
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=9a m=11 t=2]
「ひどいよ、みのりーん!」[lr]
 だー、と滝のような涙を流しながら吹っ飛ぶ伊万里。[lr]
@cl
 許せ伊万里よ。たとえ幼なじみでも倒さねばならぬ時があるのだ……[pcm]

@bg file="heya_my"

「って、アホか俺は」[lr]
 虚しくなってきたので寝ることにした。[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@return

[jump target="*0210m"]
[s]



0210m|2月10日 朝

@bg2 file="heya_m" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton

@return

;@mapMode

[s]



0210n|2月10日 夜

@bg file="ribing_y" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton
 夕飯の後片付けも終わり、洗濯物にアイロンをかけ終えると、途端に暇になった。[lr]
 暇潰しにテレビをつけてみたが、いまいち面白くない。さっさと寝てしまうのもいいんだが、それは何だか勿体無い気がする。[lr]
「あー……暇だ……」[lr]
 口に出したところで暇が潰れるわけでもない。[lr]
「誰か暇してる奴いないかな……」[lr]
 ケータイの電話帳を眺めながら呟いてみる。スタンド使いはスタンド使い同士で引かれあうのだから、暇人が暇人同士で引かれあってもいいはずだ。[lr]
 我ながら阿呆な理屈だが、暇を無駄に過ごすよりは良いだろう。[pcm]
 さて、問題は誰に電話するかなんだが──[lr]

[nowait]
[r]
[link target="*dokuo"]1.毒男に電話する[endlink][r]
[link target="*joruju"]2.長岡に電話する[endlink][r]
[link target="*imari"]3.伊万里にかける[endlink]
[endnowait]
[s]



dokuo|

[cm]
@playse storage="tm2_phone006.ogg"
@wait time=1200
@stopse
 ぷるるるる──ピッ[lr]
「おう? 稔か? お前から電話してくるなんて珍しいじゃねえか」[lr]
 毒男はワンコールで電話に出た。思った通り暇なんだろう。[lr]
「……お前、俺が暇してるとか失礼なこと思ってないだろうな」[lr]
 さすが悪友。付き合いが長いだけあって察しがいい。[lr]
「うん。そう思って電話した」[lr]
「お前なー、そこは普通否定するところだろうが」[lr]
「いや、お前相手におべっか使ってどーするんだよ。というか、暇なんだろ。部屋の隅っこで寒さに震えながら神様に『スタイルは並みだけど男に都合が良くて、絶対に自分を貶さない彼女が欲しいです』とかお祈りするくらいに」[pcm]
「ははっ! そんな昨日までの俺は、ここにはもういないぜ!」[lr]
 ……本気でやってたのかよ。[lr]
 思わずツッコみたくなったが、毒男がいい調子で話しているので割り込めない。[lr]
「実を言うとだな。今、部屋に彼女が来てるんだ」[lr]
「へー、そうなんだ」[lr]
「そうなんだよー。スタイルもいいし顔も可愛いし、言うことなしだぜ。しかもクラスの人気者でな……まあ、正直言うともう一人いい感じの女の子がいたんだけど、暗い感じだったし、俺、ロングの女の子苦手なんでさ。今の彼女にしたわけ」[pcm]
「ふぅん。そりゃ良かったね」[lr]
「でさ、これから、その……彼女と大人のにゃんにゃんの時間なんだ。つーわけで、悪いが手が離せないんだわ、これが」[lr]
「ほほう」[lr]
「じゃあな。悪いが切るぜ」[lr]
「ああ、待て毒男」[lr]
 通話を切ろうとした毒男を呼び止める。毒男は不機嫌そうな声を出した。[lr]
「……なんだよ。忙しいって言ってんだろ」[lr]
「忙しいのは分かったけどさ……一つだけ、お前に伝えとかないといけない事がある」[lr]
「は? なんだそりゃ?」[pcm]
「そのゲームだが、公式HPで修正パッチ当てないとヒロインとのHシーンすっ飛ばしてBADEND行っちゃうんだってさ。ネットで評判になってるよ」[lr]
「な、なんだって──────ッ!!!?」[lr]
 ケータイの向こうで毒男が椅子から転げ落ちる音が聞こえた。[lr]
「うわああっ!? 本当だっ! 何で俺の彼女、ノコギリで首掻っ切られてんだよっ!?」[lr]
 カチャカチャと毒男がキーボードを叩く音が聞こえてくる。きっとゲームを止めてネットのブラウザでも立ち上げているのだろう。[pcm]
「ああくそ、公式に繋がらんっ! って、なんだよおい。修正パッチが三ギガってあり得ねえだろおおおおお!?」[lr]
「あと、そのパッチ、展開すると五ギガになるらしいぞ」[lr]
「なんだそりゃ!? 確実に俺のハードディスクがオーバーフローするじゃねえかっ!?」[lr]
 もう夜も更けてきたというのにご近所迷惑極まりない叫び声を上げる毒男。[lr]
 忙しそうなので、俺は電話を切って寝ることにした。[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@return


joruju|

[cm]
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@ws
 ぷるるるるる──[lr]
 ぷるるるるる──[lr]
 ぷるるるるる──ピッ[lr]
「おっぱい!(挨拶) どうした稔。こんな時間にかけてくるなんて珍しいな。何か急用か? それともおっぱい情報かっ?」[lr]
 長岡は三コールほどしたところで電話に出た。本当にこいつは呆れるほどおっぱいが好きだよな。[lr]
「いや、暇だったんで話し相手が欲しくてさ。忙しかったなら遠慮しておくよ」[lr]
「そんなことないよ。というか、今さっき終わったところだしな」[lr]
 心なしか長岡の息が荒い。何か運動でもしていたのだろうか。[pcm]
「終わった……って、何やってたのさ?」[lr]
「感謝の腕振り一万回」[lr]
「…………は?」[lr]
 思わず聞き返してしまう。長岡は、おそらくケータイの向こうで神妙な顔つきをしているのだろう。長岡は厳かに語り始めた。[lr]
「去年の冬の事だ……俺は己の肉体と精神に限界を感じ、悩んでいた。ある人に『おっぱいで人の命を救うなんておこがましいことだ』と言われてな……」[lr]
「……いったいどんな状況だそれは」[lr]
 思わずツッコむが長岡は聞いてない。完全に自分語りモードだ。[pcm]
「悩みに悩み抜いた結果、俺がたどり着いた結果は──おっぱいへの感謝だったんだ。自分自身を育ててくれたおっぱいへの限りなく大きな恩。自分なりに少しでも返そうと思い立ったのが……一日一万回、感謝の腕振り!!」[lr]
 ……何なんだろう。この絶妙に感動できない『そのとき歴史が動いた』は。[lr]
「気を整え、おっぱいを拝み、おっぱいに祈り、左腕を振り上げて、気合とともに勢いよく下ろす。一連の動作を一回こなすのに当初は五~六秒。一万回を振り終えるまでに初日は十二時間以上を費やした。振り終えれば倒れる様に寝る。起きてまた腕振りを繰り返す日々。一年が過ぎた頃……俺は異変に気付いた。一万回振り終えても夜が明けていないんだ!」[lr]
「………………マジかよ」[pcm]
「今では感謝の腕振り一万回も一時間で済むようになってな。かわりに祈る時間が増えたよ」[lr]
「一つ言わせてくれ長岡。お前は馬鹿だ。正真正銘のおっぱい馬鹿だ」[lr]
「よせよ。そんな賛辞、聞き飽きたぜ」[lr]
 照れる長岡と適当に話をして電話を切った。[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@return



imari|

[cm]
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@ws
 ぷるるるるる──[lr]
 ぷるるるるる──[lr]
 ぷるるるるる──[lr]
 ぷるるるるる──[lr]
「おっかしいなぁ……伊万里の奴、もう寝てるのかな?」[lr]
 何度かコールしているのだが一向に電話に出ない。[lr]
 ……まあ、伊万里にも伊万里の事情があるのだろうし、あんまり電話を鳴らし続けるのも悪いだろう。[lr]
 そう思って電話を切ろうとした矢先に、伊万里が出た。[lr]
「あ、もしもし──」[lr]
「はぁ……はぁ……み、みのりん……? な、なにか、よ、用なのかな?」[lr]
 なんだかいつもの伊万里と様子が違ってた。ちょっと息が荒く、震えているような感じだった。具合でも悪いのだろうか。[pcm]
「伊万里、お前ちょっと大丈夫か? 呼吸が速いし……体調悪いんじゃないか?」[lr]
 最近は晴れ間が続いているけど冷えこみは厳しい。きっと伊万里のことだから、腹を出したまま昼寝とかして体調を崩したのかもしれない。[lr]
「だ、大丈夫だよ……ボク、悪いところなんて無いし……け、健康そのものだし……はふぅ……」[lr]
 これはますますもって重症のようだ。早めに話を切り上げて寝かしつけてやるしかない。そうすると、やはりあの手しかないだろう。[lr]
「そうか、それならいいんだ。俺はてっきり──」[lr]
「ん? てっきり、何?」[pcm]
「てっきり、伊万里が俺のことを想いながらベッドの上でいかがわしい独り遊びに興じていたのではないかと」[lr]
 と言い切ってケータイから耳を離す。一拍遅れて聞こえてくる伊万里の悲鳴。[lr]
「ば、ばかああああああッ! なんでそんなこと知っ──じゃなくて、ああもうばかばかばかあああああああっ」[lr]
 ぐしゃ、という音が聞こえて電話が切れた。[lr]
 恥ずかしさのあまり、ケータイを壁にでも投げつけたのだろう。[lr]
「まったく乱暴だな、あいつは」[lr]
 幼馴染のこの手の冗談に対する免疫力の無さに苦笑しながら、俺もそろそろ休むことにした。[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@return



0211m|2月11日 朝

@bg2 file="heya_m" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton
 目を覚ますと、時計は九時過ぎを指していた。[lr]
 日曜だからといって、少し寝すぎたかもしれない。[lr]
 休日は惰眠を貪りまくっている姉さんも、そろそろ空腹を訴えて起きてくる頃合だろう。姉猫を飢えさせるのは非常に危険だ。[lr]
「そろそろ起きるか……」[lr]
 二度寝の誘惑を振り払いながら、洗面所に向かった。[lr]
 いつものように顔を洗い、いつものように歯を磨いて、居間に向かう。[pcm]

@bg2 file="ribing.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"

 居間では、[lr]
[hime f="不満" pose=1 pos=c]
「……………………」[lr]
 珍しく早起きした姉さんが、ちょっと不機嫌そうな顔でテレビを見ていた。[lr]
「あ、ごめん。すぐ作るから待ってて」[lr]
 ちらり、と姉さんがこちらを見たが、すぐ画面の方に視線を戻してしまった。[lr]
 ……どうやら、自分が早起きしたのに俺が寝坊して、朝ご飯が出来ていないことにご立腹の様子。[lr]
 こんな姉にウィンナーを出すのは燃え盛るてんぷら油に水を投げ込むようなものだ。あまり甘やかしたくないのだが仕方がない。[pcm]
「姉さん、今朝はホットケーキでいいかな?」[lr]
[hime f="笑顔" pose=1 pos=c]
「……うんっ!」[lr]
 即答一秒。甘いものでご機嫌を取る作戦は成功のようだ。[lr]
 もちろん、栄養のバランス面から夜はタンパク質たっぷりの肉料理にするんだけどね。[lr]
 キッチンに入り、棚の奥から買い置きしておいたホットケーキミックスを取り出す。卵が多い方がふんわりするので奮発して卵は三個。ミルクは気持ち少なめだ。[lr]
@playse storage="rain.ogg"
 油を引いて熱したフライパンに、しっかり混ぜた生地をおたま一杯分、綺麗な円になるように流してゆく。[lr]
[hime f="笑顔" pose=1 pos=c c=1]
「~♪ けーき、けーき、ほっとけーき~」[pcm]
 生地の焼ける香ばしい匂いに釣られたのか、テレビを見ている姉さんの機嫌も直ってきたみたいだ。[r]
@fadeoutse time=1000
 珍妙な歌を口ずさんでいるところを聞くに、よっぽどお腹が空いていたのだろう。[lr]
 ……そんなにお腹空いてるなら自分で作ればいいのに、とは言わないでおこう。[lr]
 適度な大きさのものが五枚ほど焼けたところで皿に重ね、四角に切ったバターをてっぺんに乗せた。[r]
 これだけでも大丈夫だが、今日はメイプルシロップをたっぷりかけておく。さすがの姉さんも、これなら文句ないだろう。[lr]
 ナイフと二人分のフォークを一緒のお盆に載せて、姉さんのもとに持っていった。[pcm]
「はい。遅くなってごめんね」[lr]
 口の小さい姉さんが食べやすいように切って分ける。たっぷりのメイプルシロップに浸ったホットケーキを、姉さんは満足げな表情で頬張っていた。[lr]
 のんびりとした日曜日の朝食。テレビからはワイドショーとニュースを足して割ったような番組が流れていた。[lr]
『次のニュースです。本日未明、○○県夜見市自然公園でホームレスの男性が何者かに頭を強く殴られ全治一ヶ月の重傷を――』[lr]
 自然公園といえば、うちの学校の裏手側にある場所だ。家からもそんなに遠くはない。[lr]
「こんな近いところで事件なんて、ほんと最近は物騒だなぁ」[lr]
[hime f="真顔" pose=1 pos=c m=8]
「……デンジャーすぎる。日本はどうなってしまうのか」[lr]
 もふもふとケーキをかじりながら姉さんが真面目な顔で言った。[pcm]
「姉さん、口の周りシロップでべとべとにして言うセリフじゃないよ、それ」[lr]
 キッチンから持ってきた濡れタオルで、お行儀の悪い姉の口元を拭いてあげる。[lr]
[hime f="笑顔" pose=1 pos=c c=1]
「ん~」[lr]
 子供のように幸せそうな顔をする姉さん。[lr]
 世間は物騒だが、我が家の食卓はいつもどおりだった。[pcm]
@cl
@return

;@mapMode

[s]



0211n|2月11日 夜

@bg file="heya_my" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton


@fadeoutbgm time=1000
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0212m|2月12日 朝

@bg2 file="heya_m" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton


;@mapMode
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[s]



0212n|2月12日 夜

@bg file="heya_my" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton


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0213m|2月13日 朝

@bg2 file="kousyaura.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
@bgm file="n07.ogg"
@texton
「なあ、稔。ちょっといいか?」[lr]
 通学路の途中でいつになく真面目な顔をした悪友に呼び止められ、言われるままに俺は校舎裏に来ていた。[lr]
「悪いな。こんなとこに呼び出したりしてさ……」[lr]
「なんだよ、用って」[lr]
 すぐに済む用事だと言っていたが、毒男が切り出してくる様子はない。[r]
 せっかく普通に起きて、丁度いい時間に家を出たと言うのに、また遅刻してググレカスに嫌味を言われるのは遠慮したいところだ。[lr]
「実はさ……俺、好きな奴ができたんだ……」[lr]
「へぇ」[lr]
 ……そういえば、毒男は面倒臭がりの割に恋多き男なんだっけ。[pcm]
 まあ、その毒男の多き恋のうち、一つでも実ったという話は未だかつて聞いたことが無いのだけど。[lr]
「で、それが俺に何の関係があるんだ?」[lr]
 勝手に毒男が、どこかの誰かに熱を上げるのは構わないが、どうして自分に報告をするのだろう。しかも、朝のこの忙しい時間に。[lr]
「いや、実はな……その……好きになった相手ってのが……お前も良く知ってる人でさ……」[lr]
「ほほう」[lr]
 ちょっと興味がわいたので、自分の知り合いで毒男が惚れそうな人を思い浮かべてみる。[pcm]
「……もしかして、委員長か?」[lr]
 我がクラスの委員長は、優しい人柄と真面目な性格でクラスの中で男子連中の人気が高いのだが、毒男は首を振って否定した。[lr]
「違う」[lr]
「じゃ、じゃあ……みずきか?」[lr]
「違う」[lr]
「ええと……それじゃあ、先輩?」[lr]
「違う」[lr]
「……うちの姉さんだったら、止めた方がいいと思うぞ」[lr]
「違うって」[lr]
「……………………もしかして、伊万里、とか?」[lr]
「それはない。絶対無い」[lr]
 思いつく限り、知り合いの女性の名前を挙げてみるが、その中に毒男の想い人はいないらしい。[pcm]
「じゃあ誰なんだよ?」[lr]
 さすがにこれ以上は時間の無駄だ。痺れを切らして聞いた俺に、毒男は――恥ずかしそうに横を向きながら――俺の方を指差した。[lr]
「……………………?」[lr]
 思わず振り返る。俺の後ろにあったのは、葉の落ちてなおどっしりとした存在感を醸し出すクヌギの木だけだ。[lr]
「毒男……お前、昨日の帰りとかに交通事故とかに遭って、一命は取りとめたものの世界が豚の内臓にしか見えなくて、そこのクヌギだけまともな女の子に見えるとか、そういうことは無いよな?」[lr]
 というか俺はこのクヌギの木とお知り合いだったことは一度も無いのだが。[pcm]
 それとも、あまりにモテ無さ過ぎて少々痛々しい夢でも見始めてしまったのだろうか。[r]
 出来れば、俺は悪友といえど友人である毒男のためにイエローな救急車を呼びたくないんだけど。[lr]
 しかし、毒男の指は俺の方を指差したままで動かない。[lr]
@fadeoutbgm time=1000
 ……って、あれ?[lr]
 俺の方を指差したまま?[lr]
@bgm file="botu2.ogg"
 なんだか、とても恐ろしいことに気づいてしまった気がするんだけど――[lr]
「………………ぽっ」[lr]
 頬を染めるな馬鹿。[pcm]
 俺は後ずさりしながら、搾り出すように言った。いつでも駆け出して逃げられるように、腿の筋肉を強張らせる。[lr]
「毒男……お前が、今感じている感情は精神的疾患のそのものだ。しずめる方法なんて俺は知らない。俺に近寄るなっ!!」[lr]
「そんなつれない事言うなよ……俺、なけなしの勇気出して言ってるんだぜ?」[lr]
 にじり寄る毒男。[lr]
 奴は、このクソ寒いのに制服とワイシャツのボタンを全部はだけて、ニタリという擬音がぴったりの笑みを浮かべた。[lr]
「やらないか」[lr]
「嫌だあああああああアッ――――――!」[pcm]

@fadeoutbgm time=1000
@bg2 file="bg088.jpg"
@bgm file="n07.ogg"

「という夢を見たせいでな……今朝はものすごく眠い」[lr]
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=5 e=6a m=4 s=1]
「さ……さすがにコメントしづらい夢を見たね、みのりんは……」[lr]
 伊万里と登校するいつもの通学路はとても平和だった。[pcm]
@cl
@return


0213n|2月13日 夜

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[cm]
@bgm file="n01.ogg"
@texton


@fadeoutbgm time=1000
@return


0214m|2月14日 朝

@bg2 file="heya_m" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
[cm]
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@texton

@return
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