それは日本であって日本ではない、戦国時代の物語。
この世界では、華麗なる乙女たちが武器を手に取り、戦い続けていた。
戦い続けた8人の乙女達が求めていたもの、それは戦いを終わらせるという伝説を持つ勾玉『榛名』ではなく、
戦の無い、誰もが笑ってすごせるような平穏な日々であった。
徳川イエヤスの手により、終わりを告げた乱世。今、彼女達はやっと手に入れた平和をゆっくりと味わっていた。
この世界では、華麗なる乙女たちが武器を手に取り、戦い続けていた。
戦い続けた8人の乙女達が求めていたもの、それは戦いを終わらせるという伝説を持つ勾玉『榛名』ではなく、
戦の無い、誰もが笑ってすごせるような平穏な日々であった。
徳川イエヤスの手により、終わりを告げた乱世。今、彼女達はやっと手に入れた平和をゆっくりと味わっていた。
「将軍様!将軍様はどこにおられるか!」
イエヤスの手により天下統一がなされて早一年。
徳川幕府を開いたイエヤスは、江戸城に住まいを移し政務に励んでいた……はずだった。
徳川幕府を開いたイエヤスは、江戸城に住まいを移し政務に励んでいた……はずだった。
「オウガイ様、将軍様はその……一人で例の場所へ行かれました」
「また大奥に行かれたのか?貴様、なぜお止めしない!」
「また大奥に行かれたのか?貴様、なぜお止めしない!」
イエヤスの小姓の首根っこを掴み上げ、今にも殺す勢いですごむオウガイ。
その目には嫉妬の炎がメラメラと燃えさかっている。
その目には嫉妬の炎がメラメラと燃えさかっている。
「ははは、イエヤスさまらしいなぁ。昨日はムラサメさんがお相手をしたというのに、もうしたくなっちゃったんですね」
「黙れコタロウ!貴様は一昨日、夜伽のお相手をしたから余裕があるのだ!私など、もう一週間も……グスッ」
「オウガイさん、大丈夫ですよ。大奥と言ってもイエヤスさまがお相手するのは一人だけです。
戻ってきたらきっとオウガイさんのお相手をしてくれますよ」
「黙れコタロウ!貴様は一昨日、夜伽のお相手をしたから余裕があるのだ!私など、もう一週間も……グスッ」
「オウガイさん、大丈夫ですよ。大奥と言ってもイエヤスさまがお相手するのは一人だけです。
戻ってきたらきっとオウガイさんのお相手をしてくれますよ」
がっくりと肩を落とす大柄な武将の肩を慰めるように叩く小柄なコタロウと呼ばれる武将。
目に涙を浮かべ、その武将を見る大柄なオウガイという名の武将。
目に涙を浮かべ、その武将を見る大柄なオウガイという名の武将。
「……本当だろうな?嘘だったらその首、もぎ取ってやるからな」
「はははは、物騒な事を言わないでくださいよ、きっと夜には戻ってきますって。
今夜一晩はオウガイさんが可愛がってもらう番ですよ」
「……ちょっと風呂に入ってくる」
「はははは、物騒な事を言わないでくださいよ、きっと夜には戻ってきますって。
今夜一晩はオウガイさんが可愛がってもらう番ですよ」
「……ちょっと風呂に入ってくる」
コタロウの励ましに元気になったのか、いそいそと風呂に向かうオウガイ。
まだお昼過ぎだと言うのに気が早いなぁと少し呆れるコタロウ。
まだお昼過ぎだと言うのに気が早いなぁと少し呆れるコタロウ。
「まったくオウガイさんは……はぁ~、今頃イエヤスさまはあの人としてるのかな?
あの人はイエヤスさまにとって特別な人だからなぁ……羨ましいな」
あの人はイエヤスさまにとって特別な人だからなぁ……羨ましいな」
コタロウはイエヤスと今頃肌を合わしているであろう人物を思い描き、ため息を吐いた。
「さてっと!いつまでもこうしてはいられない!イエヤスさまの代わりに僕達が政務をこなさなきゃ!
……って、オウガイさんはお風呂だし、ムラサメさんは今日一日は無理だろうなぁ。
ということは今日は僕一人で政務をしなきゃいけないのか……はぁぁ~」
……って、オウガイさんはお風呂だし、ムラサメさんは今日一日は無理だろうなぁ。
ということは今日は僕一人で政務をしなきゃいけないのか……はぁぁ~」
がっくりと肩を落とし、ため息を吐くコタロウ。
コタロウは頑張ったらご褒美を貰わなきゃと自分を励まし、政務に励む事にした。
コタロウは頑張ったらご褒美を貰わなきゃと自分を励まし、政務に励む事にした。
「こんにちは、ヨシモトさん。その傷はどうされたのですか?」
本丸の奥にあり、許可なく立ち入る事を禁じられている場所……大奥。
天下統一を果たし、徳川幕府の初代将軍になったイエヤスは、その大奥に来ていた。
大奥に入ってすぐに目に付いたのが、顔に何かに引っかかれたような傷を作り涙を零している、
元8人の戦国乙女の一人、今川ヨシモトであった。
天下統一を果たし、徳川幕府の初代将軍になったイエヤスは、その大奥に来ていた。
大奥に入ってすぐに目に付いたのが、顔に何かに引っかかれたような傷を作り涙を零している、
元8人の戦国乙女の一人、今川ヨシモトであった。
「ひっく、こんにちわ、イエヤスさん。この傷は鷹狩で付けられたんですわ。
ノブナガ様が鷹をけしかけてきて……ノブナガ様、酷いですわ」
「鷹狩で、ですか?……ふふふ、ノブナガさんらしいです」
ノブナガ様が鷹をけしかけてきて……ノブナガ様、酷いですわ」
「鷹狩で、ですか?……ふふふ、ノブナガさんらしいです」
ノブナガの名前が出た瞬間、ニッコリとほほ笑むイエヤス。
そんなイエヤスにヨシモトはノブナガの居場所を教える。
そんなイエヤスにヨシモトはノブナガの居場所を教える。
「今日もノブナガ様にお会いに来られたのでしょう?ノブナガ様はお腹が空いたと食べ物を探しに行かれましたわ」
「食べ物、ですか?ヨシモトさん、どうもありがとうございます」
「ノブナガ様に、あまり苛めないでくださいませとおっしゃってくださいな。では、ごきげんよう」
「食べ物、ですか?ヨシモトさん、どうもありがとうございます」
「ノブナガ様に、あまり苛めないでくださいませとおっしゃってくださいな。では、ごきげんよう」
さわやかな笑顔を残し、自室へと向かうヨシモト。
イエヤスはそんなヨシモトに頭を下げ、ノブナガを探しに食堂へと向かう。
イエヤスはそんなヨシモトに頭を下げ、ノブナガを探しに食堂へと向かう。
その食堂には、小柄な少女が目の前のお皿に山のように積まれた饅頭を、むしゃむしゃと口に運んでいた。
「あら?ヒデヨシさん、ノブナガさんを見かけませんでしたか?」
「んぐ?んぐぐぐぐぐぅぅぅぅぅ~~!」
「んぐ?んぐぐぐぐぐぅぅぅぅぅ~~!」
背後から突然声を掛けられて驚いたのか、饅頭を喉に詰まらせた小柄な少女。
何を隠そうこの少女こそ元8人の戦国乙女の一人、豊臣ヒデヨシであった。
慌ててお茶を飲み、饅頭を流し込むヒデヨシ。
そんなヒデヨシの前で、饅頭をパクパクと口に運ぶイエヤス。
何を隠そうこの少女こそ元8人の戦国乙女の一人、豊臣ヒデヨシであった。
慌ててお茶を飲み、饅頭を流し込むヒデヨシ。
そんなヒデヨシの前で、饅頭をパクパクと口に運ぶイエヤス。
「こら!なに勝手に食べてんのさ!せっかく次の食べ比べ、イエヤスに勝とうと秘密の特訓をしてたのに……」
「ごめんなさい、美味しそうだったからつい食べちゃいました。ところでノブナガさんを見かけませんでしたか?」
「ノブナガさま?さっきお饅頭を一個食べた後に、喉が乾いたってお酒を飲みに行ったよ?
シンゲンとケンシンが朝から飲み比べをしてるから、それに混ぜてもらうって言ってたよ」
「シンゲンさんとケンシンさんのところですか?ヒデヨシさん、どうもありがとうございます」
「ごめんなさい、美味しそうだったからつい食べちゃいました。ところでノブナガさんを見かけませんでしたか?」
「ノブナガさま?さっきお饅頭を一個食べた後に、喉が乾いたってお酒を飲みに行ったよ?
シンゲンとケンシンが朝から飲み比べをしてるから、それに混ぜてもらうって言ってたよ」
「シンゲンさんとケンシンさんのところですか?ヒデヨシさん、どうもありがとうございます」
ヒデヨシにペコリと頭を下げてシンゲンとケンシンの元に向かうイエヤス。
その手にはヒデヨシからくすねた饅頭が二つ握られていた。
その手にはヒデヨシからくすねた饅頭が二つ握られていた。
「ああ!お饅頭が取られちゃってる!イエヤスめぇ~……この饅頭ドロボウ!」
ヒデヨシがそれに気がついたとき、イエヤスはすでに食堂を出て行った後であった。
「ヒック、ケンシン、いい加減負けを認めねぇか?」
「ヒクッ、シンゲンこそ負けを認めるのだ。あまり飲みすぎると身体に毒だぞ?」
「え?ケ、ケンシン……私の体の心配をしてくれたのか?ケンシン……ケンシン~!」
「こ、こら!よさぬかシンゲン!まだ日が高い、夜になるのを待つのだ!」
「ケンシンケンシンケンシン~!」
「こんにちは、シンゲンさん、ケンシンさん。ノブナガさんを見かけませんでしたか?」
「ヒクッ、シンゲンこそ負けを認めるのだ。あまり飲みすぎると身体に毒だぞ?」
「え?ケ、ケンシン……私の体の心配をしてくれたのか?ケンシン……ケンシン~!」
「こ、こら!よさぬかシンゲン!まだ日が高い、夜になるのを待つのだ!」
「ケンシンケンシンケンシン~!」
「こんにちは、シンゲンさん、ケンシンさん。ノブナガさんを見かけませんでしたか?」
巨大な杯を手に、酒の呑み比べをしていたシンゲンとケンシン。
しかし勝負はシンゲンの暴走により引き分けに終わった。
そんな二人の会話に割ってはいるイエヤス。
ケンシンは慌てて乱れた浴衣を直し、シンゲンははだけた胸元を直そうともせずに面倒くさそうにイエヤスを見る。
しかし勝負はシンゲンの暴走により引き分けに終わった。
そんな二人の会話に割ってはいるイエヤス。
ケンシンは慌てて乱れた浴衣を直し、シンゲンははだけた胸元を直そうともせずに面倒くさそうにイエヤスを見る。
「こ、これは将軍殿。今日はいったい何の用でしょうか?……もしや、また戦が始まるのですか?」
「ははははは!ケンシン、イエヤスが大奥に来るってことは、ノブナガ様に用がある時だけじゃねぇか」
「はい、その通りです。ノブナガさん、ここにお酒を飲みに来ていると聞いたのですが、いませんね。
どこに行っちゃったのでしょうか?」
「ははははは!ケンシン、イエヤスが大奥に来るってことは、ノブナガ様に用がある時だけじゃねぇか」
「はい、その通りです。ノブナガさん、ここにお酒を飲みに来ていると聞いたのですが、いませんね。
どこに行っちゃったのでしょうか?」
シンゲンとケンシンの部屋を見回すイエヤス。しかしそこには捜し求めている人物の姿はなかった。
「ノブナガなら酒を一口飲んだ後、暇つぶしをするかと言って、どこかに歩いていきました」
「多分ミツヒデとマサムネの所じゃねぇかな?あの二人、縁側で将棋を指してたから、冷やかしに行ったんじゃねぇかな?」
「縁側のミツヒデさんとマサムネさんの所ですか?どうもありがとうございます。では、失礼しますね」
「多分ミツヒデとマサムネの所じゃねぇかな?あの二人、縁側で将棋を指してたから、冷やかしに行ったんじゃねぇかな?」
「縁側のミツヒデさんとマサムネさんの所ですか?どうもありがとうございます。では、失礼しますね」
頭を下げ、二人の部屋を出て行くイエヤス。
イエヤスが部屋を出たすぐあとに、どたばたと何かが暴れる音がし、すぐに静かになった。
イエヤスが部屋を出たすぐあとに、どたばたと何かが暴れる音がし、すぐに静かになった。
「ミツヒデさん、マサムネさん、こんにちは。ノブナガさんを見かけませんでしたか?」
縁側でウンウンと唸り、将棋盤を睨みつけるミツヒデ。対するマサムネは余裕の表情でお茶をすすっている。
「き、貴様はイエヤス!いったい何しに来た!」
「何しにも何も、ノブナガ様にお会いに来られたのであろう」
「うるさい!そのくらいは分かっているわ!」
「何しにも何も、ノブナガ様にお会いに来られたのであろう」
「うるさい!そのくらいは分かっているわ!」
敵意むき出しのミツヒデに、落ち着いた様子のマサムネ。
ミツヒデはイエヤスから視線を逸らすことなく将棋を指し続けている。
ミツヒデはイエヤスから視線を逸らすことなく将棋を指し続けている。
「ノブナガ様のおられる所は貴様などには教えん!教えてたまるか!」
「ミツヒデさん、イジワルです。イジワルしないで教えてもらえませんか?」
「ミツヒデさん、イジワルです。イジワルしないで教えてもらえませんか?」
イエヤスを睨み続けるミツヒデに頭を下げるイエヤス。そんなイエヤスを鼻で笑うミツヒデ。
「フン!誰が貴様などに教えるか!教えてほしくば……」
「……王手」
「貴様が作り上げた幕府をノブナガ様に……え?お、王手だと?」
「……王手」
「貴様が作り上げた幕府をノブナガ様に……え?お、王手だと?」
冷静なマサムネの王手の声に慌てふためくミツヒデ。
将棋盤を睨みつけ、どうやってこの難局を乗り切るか必死に考え込んでいる。
将棋盤を睨みつけ、どうやってこの難局を乗り切るか必死に考え込んでいる。
「……イエヤス殿。ノブナガ様は、我等の対局をしばしご観覧なされたが、飽きられたのか、部屋に帰って寝ると仰られていた」
「ノブナガさんのお部屋、ですか?ありがとうございます、マサムネさん」
「ノブナガさんのお部屋、ですか?ありがとうございます、マサムネさん」
マサムネに頭を下げ、ノブナガの部屋へと向かうイエヤスの耳に、『参りました』とミツヒデのか細い声が聞こえた。
どうやら二人の対局は、マサムネの勝利に終わったようだ。
どうやら二人の対局は、マサムネの勝利に終わったようだ。
「ノブナガさん、いらっしゃいますか?」
通いなれたノブナガの部屋の襖を開けた瞬間、イエヤスの首元に何か巨大な物が突きつけられた。
「くっくっく……はぁ~っはっはっはぁ!よくもぬけぬけと顔を出せたものじゃなぁ?
今日こそはその首、置いていくか?なぁイエヤスよ!」
今日こそはその首、置いていくか?なぁイエヤスよ!」
『天下布武』と書かれた、幾多の戦を共に駆け抜けた大剣を、イエヤスの首筋に押し当て凄むノブナガ。
その鋭い視線はイエヤスを突き刺し、少しでも力を入れると、イエヤスの首が飛んでしまいそうだ。
その鋭い視線はイエヤスを突き刺し、少しでも力を入れると、イエヤスの首が飛んでしまいそうだ。
「ノブナガさん、お久しぶりです、4日ぶりですね。……とても寂しかったです」
イエヤスの寂しそうな表情に拍子抜けをしたのか、大剣を下ろすノブナガ。
「ふん!寂しければ会いに来るがよかろう。手下の我儘、少しは聞いてやらんでもないぞ?」
咥えた煙管を一息吸い込み、白い煙を吐き出すノブナガ。イエヤスはそのノブナガの言葉に目を輝かせ頷く。
「ノブナガさん……では早速我儘です。新作、出来ちゃいました」
「ほぉ?つまらぬ新作を持ってきおうものなら、その首置いていってもらうぞ?」
「ほぉ?つまらぬ新作を持ってきおうものなら、その首置いていってもらうぞ?」
イエヤスの言葉にニヤリと笑みを見せるノブナガ。
イエヤスはそんなノブナガにほほ笑んで見せ、手にした錫杖から、新作の張形を取り出す。
イエヤスはそんなノブナガにほほ笑んで見せ、手にした錫杖から、新作の張形を取り出す。
「で、どこが新作じゃ?申してみよ」
少し頬を赤く染めたノブナガが、イエヤスに問いかける。
真新しい張形を見た瞬間、ノブナガは唾を飲み込んでしまったようだ。
真新しい張形を見た瞬間、ノブナガは唾を飲み込んでしまったようだ。
「では説明しますね?この張形は、たくさんのイボイボがついています。
このイボイボが動かすとお腹の中の気持ちいいところに当たっちゃいます」
このイボイボが動かすとお腹の中の気持ちいいところに当たっちゃいます」
手にした双頭の張形、しかし以前の物と比べ、表面に数多くの突起がある。
そんな歪な張形を手に、ニコリと笑みを浮かべるイエヤス。
ノブナガはゴクリと唾を飲み込み、その首に掛けられた勾玉……伝説と言われた勾玉、榛名をイエヤスに見せ付ける。
そんな歪な張形を手に、ニコリと笑みを浮かべるイエヤス。
ノブナガはゴクリと唾を飲み込み、その首に掛けられた勾玉……伝説と言われた勾玉、榛名をイエヤスに見せ付ける。
「くっくっく……では早速新作の性能を確かめるとするか?今日こそは榛名で貴様を堕として見せるわ!」
「はい、ノブナガさんとなら、どこへでも堕ちちゃいます」
「はい、ノブナガさんとなら、どこへでも堕ちちゃいます」
ニコリと微笑み、ノブナガの腕に抱きつくイエヤス。
ノブナガは、そんなイエヤスを引きつれ、自室奥にある防音が整っている特別あつらえの寝室へと連れ込んだ。
ノブナガは、そんなイエヤスを引きつれ、自室奥にある防音が整っている特別あつらえの寝室へと連れ込んだ。
こうして大奥ではいつもの日常が繰り返された。
長きに渡った戦乱の世も、今は昔の話。世はまさに、天下泰平の世である。
榛名の力 完
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