200812 Pioneer

特定非営利活動法人スプリングウォーター 杉山 愼策

今月はスプリングウォーター理事 立命館大学大学院 経営管理研究科教授 杉山 愼策先生のご紹介です。

杉山先生にはセミナーにて講演頂いたり、合宿に参加して頂いたり、WEB上でご執筆頂いたり、いつも共にスプリングウォーターを創って頂いています。幼い頃から現在まで、様々お伺いして参りました!それではインタビューをどうぞ!!

-SW- 改めてお話をお伺いする初の機会で、少し緊張しております。本日は先生のご経歴に沿って様々な角度からインタビューさせて頂きたいと思っております。宜しくお願い致します。

早速ですが、幼い頃どんなお子さんだったのか教えて下さい。

-杉山- めちゃくちゃ体が弱かったです。
子供がかかる病気は一通りやりました。風邪・肺炎・腎臓病など。小学校6年間のうち、休みを通算すると1年くらいは学校を休んでましたね。両親は1年進級を遅らせることを本気で考えていました。

-SW- それは意外です!いつもお元気ですので、幼い頃病気をされていたなんて想像できません。。その頃どんな夢をお持ちでしたか?

-杉山- 小学校の文集には「大学を出てアナウンサーになりたい」と書いています。でも、なぜアナウンサーになりたかったのか?全然思い出せません(笑)。。小学生の頃は本当に目立たない子供でしたね。
年齢が上がるのと比例して体が強くなっていきました。だから、学校の成績も同じです。小学校が最低で中学、高校と上がっていき、大学・大学院の成績は良かったですよ!

-SW- 中学・高校を経て地元の岡山大学に進学されていますが、やはり地元への愛着からですか?

-杉山- 私たちの世代はみんな貧しかった。だから、東京や大阪は選択肢はありませんでした。地元の県立高校から地元の国立大学へ。これしか選択肢が無かったということです。

今でも覚えていますが当時、県立高校の1ヶ月の授業料が1,500円でした。国立大学は1ヶ月 1,000円。驚くことに大学の方が授業料が安かったんです。もちろん今と物価は違いますが。奨学金を頂いていたので、奨学金で十分授業料を支払うことができました。

-SW- 大学では経済学科に入学され、経済学を専攻されていますが専門はどんなテーマだったんですか?

-杉山- 2つ研究テーマがありました。
1つは経済学説史 アダムスミスなどの経済学説の勉強です。
もう1つは計量統計学 統計モデルの研究です。
計量統計学は大学院の研究テーマでもあります。

当時大変貴重だった日立のPCで今EXCELで一瞬で結果を出せるような統計をすごく長い時間をかけて一生懸命やってました。

私の世代はパソコンが苦手な人と得意な人に分かれるのですが、学生の頃から普及し始めたパソコンに触れていたので、私はパソコンは怖くないですね。むしろ得意な方です。それはとても良かったと思います。

-SW- 大学ご卒業後、ロータリー財団奨学生として西ワシントン州立大学 大学院 経済学研究科 博士過程に留学されますが、留学された動機を教えて下さい。

-杉山- 大学に研究者として残りたいという思いを持っていました。大学に残るためには大学院へ行くしかない。当時、まだ母校である岡山大学には経済学の大学院がありませんでした。
1ドル360円の時代でアメリカへも直行便が無く、羽田→ホノルル→本土と乗り継ぎをしなければなりません。海外に今のように自由に行き来できる時代ではありませんでしたけれども大学院へ行くために留学をしました。

結果的に留学期間はかけがえのない時間となりました。留学して、色々な方と出会う中で『ビジネスは面白い!』と心から思えたからです。

-SW- 帰国後、資生堂に入社され社会人としてのスタートを切られるわけですが、資生堂への入社をご決定になられた経緯は?

-杉山- 商社や銀行ではない。メーカーの時代が来る!!
そう思ってました。カテゴリーでNo.1の企業に入りたい。そう思っていたところに資生堂を紹介して頂き入社しました。

-SW- 新人時代に一番大切にされていたことは?

-杉山- 今も変わりませんが一期一会です。
私は地方の国立大学出身者なので、大学の同期はほとんど県内に就職しました。東京での人脈はほとんど無かった。クライアント・関係先・同僚、一つひとつの出会いを大切にしてきました。
人との出会いは自分を豊かにしてくれます。私の人生は人との出会いで豊かになりました!!!

-SW- 私たちも先生との出会いで様々ご指導頂き、本当に感謝しています。これからも宜しくお願いします!長くお勤めになられた資生堂時代に一番印象に残っていらっしゃるお仕事は何ですか?

-杉山- 資生堂ニュージーランドの責任者
29歳の時に資生堂ニュージーランドの責任者になりました。マーケットはニュージーランドとオーストラリア。
この仕事が面白かったのは、全てを体験することができたことですね。メーカーならではの工場の作り方(配管や冷却設備、配線)・商品の作り方(印刷、素材)などもちろん業者の方と一緒ではありましたが、0から完成させるまでを見ることができました。

-SW- その後、マーケティングやM&A、人事と幅広くご活躍ですが、違った分野のお仕事で責任を果たすということはプレッシャーではありませんでしたか?

-杉山- マーケティングは10年携わりました。最後にお世話になった日本ロレアルで人事を担当しましたが、経営の視点からの人事を求められました。ですので、全く違った分野でしたが、これまでの経験を活かすことができました。

-SW- 経営の視点からの人事。具体的にはどのようなことを実施されたのですか?

-杉山- 変革です。
ロレアルでは新卒採用を行っていませんでした。会社を継続させ、成長させるには会社を愛する人を作ることが必要です。もちろん、中途採用者も会社を愛する人はたくさんいらっしゃいますが、やはり生え抜きのサラブレッドにはかなわない。そう考え新卒採用をスタートしました。10年ほど前に入社した新卒入社第一号の皆さんは、今中核として活躍していらっしゃいます。

-SW- 人材は人財という漢字を用いることもあります。「人が大事」と答える経営者は多いです。ただ、実際には言葉のみで本当の意味では社員を大切にはしていない経営者も少なくないようです。企業で人が成長するために経営者は何を大切にすべきとお考えですか?

-杉山- 原理原則は変わりません。非常にシンプルです。『社員を信じること』
私は性善説で生きてます。10回に1回くらい裏切られたり、だまされたりしますが。
社員を信じて、機会を与えて、評価する。
もちろん、ベースには明確なルールが必要です。明確なルールの上で競い合う。そうすれば自然と次のリーダーが生まれます。


会社の経営は例えるならばオーケストラだと思います。
社長はマエストロ(指揮者)です。本物のマエストロはバイオリンやピアノ出身者が多いです。でも、決して自分が指揮をしている最中にオーケストラでバイオリンやピアノを奏でたりはしない。ハーモニーが崩れることを知っているからです。
マエストロの指揮を見て楽器を奏でる。そうすることで素晴らしいハーモニーが生まれるのと同じように、会社を経営するのも社長のリーダーシップにより、社員が一丸となって、ビジネスを遣り上げていくことで素晴らしい企業となります。

-SW- 『経営者はマエストロ』 非常に分かりやすい例えですね!ベンチャーの社長には音が鳴らないトランペットを代わりに吹いたり、音の小さいビオラを奏でている経営者も少なくないようですが・・

-杉山- それではハーモニーは生まれませんよね。確かに、どうしても吹かなくてはならないこともあるかもしれません。でも、社員を信じていなくて、機会も与えない。そんな経営者は最低です。

ベンチャーから次のステージへ上がるためには同時に経営者の成長が不可欠です。もちろん経験したことがないから難しいことではあると思いますが、これができないベンチャー経営者は多い。
でも、根本は「社員を信じているかどうか」に尽きます。
会社が大きくなればなるほど人を信じるか?です。

-SW- 「信じている」と仰る経営者は多いです。けれど、社員の方のお話を聞いていると、実は社員は「信頼を一切感じていない」などという裸の王様のような社長も意外と多いです。どうすれば社員や部下に「信頼」が伝わるのでしょうか?

-杉山- 自分が心底「社員を信じる」と決めることです。ただそれだけですよ。
私は部下にとってはとても厳しい上司だったと思います。でも、部下を信じていました。だから、信じているからこそ厳しいということを部下も感じ取ってくれていました。人間は、相手から信頼されているか否かを敏感に感じ取ります。自分を信頼してくれていない人のために何かをしようなんて思わないですよね?

-SW- そうですね。その通りだと思います。自分が信頼するから相手からも信頼される。人間のベースが経営にとっても大事なことということですね。非常に共感できるお言葉です。

-SW- 少しテーマが変わりますが、現在おかやま観光特使や津山市の行政アドバイザーを務めていらっしゃいますが、どのような思いからですか?

-杉山- 田舎は東京と比べると経済も生活も大変です。育ててもらったふるさとに対する恩返しができればとの思いから私の経験を活かせることができないか?と常に考えています。

今は、津山市に数十億の売上規模の企業を数社産み出したいと思っています。そのために、地域ブランドをナショナルブランドにすることが必要だと思います。これまでマーケティングやブランディングに携わってきた経験が少しでもお役に立てばと思っています。企業ができれば、税制も雇用も創出できます。

-SW- 私も地方出身者ですのでその思いはとてもわかります。地方が元気になれる国になって欲しいです。では、岡山のいいところをアピールして頂けますか?

-杉山- とにかく自然に恵まれていますね。台風は来ない。地震も少ない。お米も果物もおいしいです。

-SW- ここからはスプリングウォーター理事の杉山先生にお伺いします。スプリングウォーターのこれまでの活動を振り返っていかがですか?

-杉山- 限られた資源のなかでみんなでよく頑張ってきたと思います。
セミナーや勉強会、TRIGGERなど自分たちで必死に形にしてきました。TRIGGERを創ったから『タダコピ』も生まれました。

一方で、最大の問題点はずっと同じですね。資金面の安定です。
日本のNPO法人は約8割が赤字です。寄付の風土が無いことも大きく関係していると思います。日本は本当の意味で豊かさを達成していないということかもしれませんね。今年はこの資金面を安定させる基盤をどうにか作り出したいですね。

-SW- スプリングウォーターが存続するためにも、是非少しずつでも創っていきたいと思います。最後に、学生さんや若手社会人に対してメッセージをお願いします。

-杉山- いい意味でスプリングウォーターを利用して欲しいです。このようなネットワークは他にはありません。唯一のものだと思います。セミナーや勉強会、プロジェクトの運営を通して皆さんにどんどんスキルアップして欲しいですね。

編集後記

改めてゆっくりとお話を聞かせて頂く機会は初めてだったので、知らない側面をたくさん見せて頂きました。

経営者として「社員を信じること」が原則。
質問に対して明確に即答されたお姿から、本当に社員を愛していらっしゃる経営者でいらしたんだろうと感じました。スプリングウォーターも「お互いを信じること」そして、役割を果たすこと。が大事だと改めて気づかせて頂きました。

ニュージーランドでのご経験は是非、セミナーなど別の機会に先生を囲んでお話を伺いたいと思います!

事務局 三上 早苗




















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最終更新:2008年12月04日 10:26
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